第108話 エルシドとのデート 二
それにしても、エルシドは本当に感情表現が豊かになったな。初めて出会った頃は、おかたい印象が強かったんだがな。
今でも、エルシドは俺たち以外の人間にはあまり愛想が良くないままだ。エルシドの態度で、俺に心を開いてくれていることは確信している。
エルシドの笑顔を見ることが出来る男は、エルシドの家族と俺くらいだろうな。そう考えると、やっぱりうれしいな。
俺は別に、独占欲は強くない方だと思っているが、俺にだけ心を開いてくれるエルシドのような女の子は、やっぱり独特の魅力があるな。
他の3人は、明るくて社交的だから、わりと多くの人と仲良くなってしまうが、エルシドには、俺しかいない、俺を必要としてくれている、そんな感覚を強く持つことが出来る。
もちろん、あの3人も、俺のことを深く愛してくれているのは間違いないのだが。
そんなことを考えて、俺はますます幸せな気持ちになり、歩きながら、つい、にやけてしまった。
鍛錬を終え、その日の夕食は、予定通り俺の部屋でエルシドと二人で食べおえて、お茶を飲みながらデートプランを話しあった。
聖騎士の名門の、中流貴族に生まれ育ったエルシドは、社交ダンス、オペラ・絵画・音楽鑑賞、乗馬、チェスに似たボードゲームなど、上品な趣味を持っている。
俺は、それらのことはほとんどやったことはないが、新しい世界が広がるかもしれないという期待と、なにより、エルシドの笑顔が見たいから、基本的に、エルシドにデートプランを決めてもらった。
正直な話、俺にとっては、なにをするかということは割とどうでもよくて、愛する人と一緒に時間をすごせることが、一番うれしいのだ。まあ、こんなことはわざわざエルシドには言わないけど。
デートプランを決めた俺たちは、明日に備えて、早めに眠ることにした。
一緒にベッドに入り、優しく抱き合って、眠りに落ちるのを待つ。ああ、エルシドの柔らかくて豊満な体の感触が、とても心地よいな。
優しさに包まれて眠るような、子供の時に眠る感覚のような、とても幸せな気持ちで俺は眠りに落ちた。