第107話 エルシドとのデート
そんな期待をしつつ、その日は眠った。翌日、いつも通り、エルフィー、ヨイチ、エルシド、シースの4人と一緒に朝食を食べ終え、稽古場に向かおうとしたところを、エルシドに引き留められた。
真剣な表情のエルシドは、言おうかどうか迷っていた様子だったが、意を決したように口を開いた。
「昇さん。お忙しいのは分かっているのですが、そのぅ、近日中に私とデートしていただけませんか?」
エルシドはすごく寂しそうな顔をしている。……そうか、俺はエルシドに、いや、おそらくみんなにも、寂しい思いをさせてしまっていたんだな。
そういえば、あの時のじゃんけんで、ヨイチに負けてとても悲しそうな顔をしていたが、シースに勝った時は、シースに気を使いながらも、すごくうれしそうな顔をしていたな。それだけ、俺とのデートを楽しみにしてくれていたのだろう。
彼女たちを守るために、強くなりたいと思い、鍛錬に集中するあまり、肝心の彼女たちに寂しい思いをさせてしまうなんて、これでは本末転倒じゃないか。
いわゆる、私と仕事どっちが大事なの現象、とでもいおうか。つい、彼女たちと触れ合う時間が減ってしまっていた。
俺にとって、一番大事なのは、間違いなく彼女たちだ! これからは、もっと彼女たちと過ごす時間を増やすことにしよう。
「ごめん、エルシド。君には寂しい思いをさせてしまっていたようだね。君たちを守りたいと思う気持ちが強すぎて、つい鍛錬に時間を使いすぎていたようだ。これからは、君とすごす時間を増やそうと思う。もちろん、デートはすぐにでもするよ。明日なんてどうだい?」
寂しそうなエルシドの顔は、とてもかわいらしい笑顔に変わり、返事をくれた。
「本当ですか? 私、すごくうれしいです! 明日は、もちろん大丈夫です。楽しみにしていますね」
「そんなに喜んでもらって、俺もとてもうれしいよ。明日の計画をたてたいから、夕食はふたりきりで食べよう。それじゃあ、また昼食の時に話そう」
エルシドと別れた後、数回エルシドの方を振り返ると、そのつど、エルシドが満面の笑顔で手を振ってくれた。
そのかわいらしい笑顔を見るたび、俺は幸せな気持ちになると同時に、エルシドのためにも強くなりたいと思ってしまうのだ。