第106話
「なるほど。確かに、僕の国には優秀な戦士が多い。
今日中にでも、通信魔道具を使って、父や兄に聞いてみるよ。
僕の国で話し合って、数日以内には結論を出してくれるはずだ。
それまで待っていてくれ」
「ありがとう。よろしくお願いするよ」
俺は、イールに礼を言って、部屋を後にした。
通信魔道具はとても貴重なものらしく、ローラリン帝国領内でも、トップスリーには間違いなく入るほどのイールの王国でも、二桁にいかない程度しか所有していないそうで、王族の中でも、限られた一部のものしか持っていないそうだ。
その日の五日後、イールが俺の部屋に入ってきた。
「あの件だが、先ほど連絡があった。
僕の兄と、兄の腹心の四剣士、それと3万の兵士を派兵してくれるそうだ。
僕が言うのもなんだが、兄はとても強く、統率力もある、優秀な人だ。
兄の腹心の四剣士も、それぞれが僕と同じくらいの戦闘力を持っている。
彼らが出兵することが決まった今、ジャラカンダ国はすでに奪還されたようなものだよ」
イールがそこまで言うなんて、お兄さんのことをとても尊敬しているんだろうな。
だが、なぜだろう? なんだか、嫌な予感がするな。とはいえ、何の確証もないから、わざわざイールに言って、彼を不安にさせる必要もないか。
まあ、イールがあんなに信用している、お兄さんたちなら大丈夫だろう。ジャラカンダのことは、彼らに任せることにして、俺は自分を鍛えることに集中しよう。
俺とイールは、皇帝にそのことを報告に行った後、ホクサイに絵を教えてもらった。
イールは芸術的な素養が高く、ホクサイもびっくりするほど、浮世絵が上手くなっていて、俺とは比べ物にならないほどだ。
もともと、西方世界の絵は画家並みに上手いイールは、ホクサイと気が合うようで、お互いが良い影響を与えあって、絵のレベルを高めあっている。
そのおかげで、ホクサイはもともとの画風に加え、西方世界に特徴的な画風、さらにはその二つを融合させた画風を、自分のものにしつつあるようだ。
イール主導の芸術ビジネスも、少しずつ彼女たちの認知度が上がり、もうすぐ軌道にのりそうとのことだ。
上手くいけば、彼女たちにお金を払うのはもちろんだが、俺にも多少お金が入り、みんなの分も含めて上等な装備品を買ったり、みんなと一緒に住む家を買ったりできるかもしれないな。