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第103話  カナーサ王国  九


「ぐぅぅ。こうなれば、仕方がない! この技で、お前たちも道連れにしてくれる!」


 瀕死の奴の身体から、信じられないほどの魔力があふれ出している。おそらく、生命力そのものを魔力に変換しているのだろう。奴は、死を覚悟し、なにかしらの危険な技を使うつもりのようだ。


「ブラック……」

拡散する巨大な矢(クラスター・ショット)!」


 奴がなにかするよりも、わずかに俺の攻撃が速かった。奴に向けて放った巨大な一本の矢は、奴から数十センチの距離で炸裂して、無数の小さい矢が奴の全身を貫いた。


挟みつぶす光の両手(ライトハンド・サンド)!」


 おそらく、すでに死んだであろう奴の身体を、巨大な光の両手で挟み込んで握りつぶし、消滅させた。魔族はこうでもしないと、安心できないからな。


 それにしても、恐ろしい奴だった。お前は、一人でよく戦ったよ。俺一人では、完全に負けていただろう。


 お前の敗因は、一人だったことだ。確かに、お前たち魔族は、一体でとてつもない強さを持っている。


 俺たち人間は、一人一人の強さでは遠く及ばないだろう。だが、俺たち人間は、ともに協力し合える存在なんだ! それこそが人間の強さだ!


 俺は、愛する女の子たちがそばにいてくれさえすれば、どんな強大な敵にも負ける気がしない! いや、彼女たちを守るためにも、負けるわけにはいかないんだ!



 なんとか奴を倒し、安堵したことでどっと疲れが出たらしく、腰を下ろすと、ムサシやダイさんやトウキャさん、それにネコビト兵たちも駆け寄ってきた。


 どうやら、敵軍の一般兵との戦いも、カナーサ側の勝利で終わったようだ。


 俺たちは笑顔をかわし、カナーサの街に戻った。俺たちはカナーサの民に歓迎されたが、疲れが強いため、その日はトウキャさんの家ですぐに寝ることにした。


 眠るときに、奴が最後に使おうとした技のことが少し気になった。ブラック、なんだったのだろう? まさか、ブラックホールではないだろうしな。


 まあ、仮に技の名前がブラックホールだったとしても、俺の世界の、あのブラックホールとは全くの別物だろう。いくら魔法とはいっても、あのブラックホールを作り出すというのは、さすがにありえないだろう。


 まあ、考えても仕方ないか。俺はそれ以上考えることをやめて、女の子たちの柔らかい体の感触に包まれながら、眠りに落ちた。


 翌日、トウキャさんに呼ばれ、先日のお礼にと、カナーサの民の、歌やダンス、演劇や楽器の演奏などでもてなされた。


 ネコビトは、見た目が人間に近いものから猫に近いものまで、かなり幅があるが、猫自体を好きな俺にとっては、大抵みんなかわいらしく見えた。


 その日はもてなされがら体を休め、次の日にローラリンの街に帰ってきた。


 来た時と同じようにムサシと体を縛り、ダイさんが魔法で作った土の塔の頂上部分に、地面から伸縮可能オーラ糸付矢(バンジー・アロー)を打ち込み、オーラのひもを縮ませ、上昇速度が速くなった時に、伸縮可能オーラ糸付矢(バンジー・アロー)を解除することで、空高く上がり、そこからハングライダーのような発明品を使ったので、数時間で戻ってくることが出来た。


 トウキャさんからは、お礼ということで数百個の魔石と、進化石を貰った。とりあえず、進化石だけ持って帰ってきて、魔石は後日、ネコビトが届けてくれるらしい。


 それと、トウキャさんには姉がいるという話を聞いた。なんでも、そのお姉さんは、トウキャさんより圧倒的に強く、拳聖の異名を持つほどで、カナーサ王国の歴史上でも、一番の実力なのではないかと、噂されるほどらしい。


 そのお姉さんは、数年前に世界中をめぐる旅に出たそうで、今はどこにいるか分からないらしく、もし俺があうことがあれば、よろしく言っておいてくれと頼まれた。


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