第101話 カナーサ王国 七
「縮ませるオーラの糸!」
「なにぃ! 矢が減速しただと!?」
俺は、伸縮可能オーラ糸付矢をわずかに縮ませ、少しだけ減速させた。
縦方向に進む矢と、横方向に進む魔法弾の衝突を避けるには、そのわずかな速度の変化で十分だった。魔法弾に当たることもなく、矢は無事に地面に刺さった。
「強く縮ませるオーラ糸!」
俺は、全ての魔力を込めて、伸縮可能オーラ糸付矢を最高速で縮ませた。
上昇していた泡ごと、どんどん下降していき、みるみるうちに地面に近づいてきた。
「くそっ! そうはさせん! 俺もフルパワーだ!」
奴はさらに力を込め、魔力を高めている。そのまま数十秒、俺と奴は全力で魔力を込めあっていたが、なんとか俺の魔力が勝り、無事に地面に降り立つことが出来た。
奴は、これ以上反重力の泡に魔力を使うのは無駄だと判断らしく、反重力の泡を解除して、泡は消滅した。
奴は相当魔力を消耗しているように見える。勝負をかけるなら今しかない。俺は奴に突進した。
奴は魔法弾を大量に撃ってくるが、かなり速度が落ちていたため、簡単にかわし、接近できた。
奴とパンチの打ち合いになる。奴のパンチは簡単にかわし、初めて奴に俺のパンチがまともに当たった。それも一発や二発ではない。
やはり、奴はかなり消耗しているようだ。俺が優勢に接近戦をはこんでいる、その時だった。
俺の視界に黒い霧が入った。と、同時に、俺の身体は尋常じゃなく重たくなり、まともに動けなくなってしまった。くそっ、やられた!
俺が気づいたときには、既に俺は重力を強める霧に囲まれてしまっていた。
くそっ! 先ほどの魔法弾は、単純な攻撃型ではなく、重力を強める霧に変化させることが出来るタイプのものだったのか!