第100話 カナーサ王国 六
奴はパンチの間に重力フェイントを織り交ぜてくるが、先ほど分身で経験したことと、奴自身が魔力と体力を消耗しているせいで、先ほどのキレがないことも合わさり、まともにパンチを受けることはなかった。
だが、俺のパンチも当たらずに膠着状態が続いていた。なんとか有利に戦闘を運びたいな。俺がそう考えた時だった。
「反重力の泡!」
膠着状態を破ったのは奴の方だった。
一瞬のスキをつかれて、奴の手のひらから発生した直径2メートルほどの泡に閉じ込められてしまった俺は、泡ごと空に浮かんでいった。
「フハハハハ! これが隠しておいた俺の真の奥の手、反重力の泡だ! まさか、これを使わざるをえないほど追い込まれてしまうとは思っていなかったぞ! だが、この技を受けたが最後、お前は宇宙に向かって落ちていくのみ! 久しぶりに戦いを楽しめた礼に、お前のことは少しの間だけ覚えておいてやろう!」
奴の言う通り、この感覚は、浮かんでいくというよりは、上に向かって落ちている、とでも言った方がより近いだろうな。
自然落下と同じように、上昇する速度はどんどん加速していく。
奴は、両手のひらを俺に向けて、魔力を込めて力んでいる。どうやら、この技は相当魔力を使うようだ。ああしていないと、効果が切れてしまうのだろう。
考えている間に、上昇速度はさらに増してきた。
まずい! この世界の成層圏やら宇宙やらがどうなっているのかは知らないが、このままでは、死んでしまうのはまず間違いない! どうにかしなくては! そうだ、こんな時は!
「伸縮可能オーラ糸付矢!」
俺は、自分の意志で伸ばしたり縮めたりすることが出来るオーラのひもが、オーラの矢に付いているものを地面に向けて射った。
「なにをしようとしているか知らんが、そうはさせん!」
奴が、矢をめがけて魔法弾を放った。まずい! このままでは矢に当たってしまう!
私の小説をお読みいただき、ありがとうございます。
読んでいただいている皆様のおかげでモチベーションを保ち、なんとか100話まで投稿することが出来ました。
これ以降のストーリーのアイデアはたくさんありますので、これからも毎日投稿していって、200話、500話、1000話と、どんどん書き続けたいと思っております。
今後も、よろしくお願いいたします。