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一度話し合う必要がある。

窓から差し込む光が、腰に届く程に長く、緩やかなウェーブがかった紅い髪に反射して、見る者にまるで燃え盛る炎のような印象を与えているーーーー‥‥


「あら〜?いっちゃんもうお腹いっぱいになっちゃったの〜?」

ふふふ…と赤ちゃん用のスプーンを振りながら、前世の誰かを彷彿とさせるようなふわふわした声で話しかけてくる、長く紅い髪の美女は何を隠そう我が母様、花時雨華澄(はなしぐれかすみ)である。

「うーあうあおーあえーう。」(うむ。ありがとうございます。)

私と翔悟は順調に成長している。離乳食とももうすぐお別れだ。

…む、ご飯を食べ終わった翔悟がよちよち歩きで脱走しようとしている。あ、捕獲された。次はお昼寝の時間だ、また後で遊ぼうな、翔悟。

「はい、じゃあいっちゃんも翔ちゃんも少しお昼寝しましょうね〜。」

赤ちゃん用のベッドに寝かされ、ふかふかのタオルケットを掛けられる。2つ並んだベッドのもう片方では、翔悟も同じように母親に寝かしつけられている。

ちなみに、翔悟は雨宮家の次男で、翔悟の母、雨宮家夫人は我が母様の幼馴染み兼付き人のようなものをしている。






隣から健やかな寝息が聞こえてくるが、私は全く眠くならない。

……暇つぶしに軽く私の周囲の説明をしようか。

花時雨家には4人、雨宮家には5人子供がいて、我が上の兄様に雨宮家次男、姉様に長女、下の兄様に次女、私に翔悟という風にそれぞれ側についている。(長男は年が離れすぎていたため、雨宮のおじ様の元で時期当主として修行中らしい。)

代々花時雨家の子供の数と合わせるように(1人2人の差はあるらしいが)、雨宮家の子供も同じ数だけ生まれるそうだ。

これにはこのような事情があるらしいーーー






昔、護りに長けた力を持った初代雨宮家当主が、初代花時雨家当主を慕って忠誠を誓った。がしかし、主の性格があまりにも自由奔放で、護衛を撒いて1人でお忍びで出掛ける、近くに賊が出たと聞けば先頭切って討伐に行く、など周囲は心配で苦労が絶えなかった。その主の子にも同じような傾向が見られた時、主命の初代雨宮家当主は、このままでは自分がいなくなった後、主の血が途絶えてしまうかもしれない…っっと思った。ならば自分の子孫が主の子孫を護れるように、と雨宮の血に誓約を掛けた。

この誓約の効果か、後々の雨宮家では花時雨家で子供が生まれるとそれに合わせるように子供が生まれるようになった。






    ーーー以上、神知識からの抜粋でした。





ここ最近になって、徐々にこの世界についての知識を思い出すようになった。

この血の誓約について思い出した時は、一瞬呪いか!?とおののいてしまったが。なにせ血という響きがな……

まぁ、こんな特殊な主従関係を交わしているのは花時雨家だけのようで、他家では純粋な身分差で仕えることになったや、弟が兄に仕える為に分家を作った、勝負に負けた相手が、勝った相手の所に押し掛け奉仕した、など普通の主従関係である。……最後は普通なのか?







他に思い出した…というか知ったことと言えば、神が言っていた魔法のことだ。

まず、魔法は魔力を持つ者が使用できる。

魔力は全ての人間が持っているわけではない。魔法を使える者の大半はこの世界ではある程度の名のある家の者やその血筋の者だ。まぁいわゆる上流階級、ヨーロッパなどでいう貴族というやつだな。国のトップに王はいないが。

平民の中でも魔力を持つ者が産まれることもあるが、ほとんど微弱な魔力で小さな火を起こす程度しか使えないらしい。

ちなみにヒロインは平民だが、15歳の時に町で交通事故に遭い、その衝撃が原因で莫大な魔力が発現する。それに目をつけ上流階級の家に養子に出されることになる。

…いやいやいや。いくらなんでも設定に無理がありすぎないか?

主人公が何故身分が違い過ぎる攻略者達と交流できたのか、という謎は解けたが。


しかしなぜ上流階級の血筋しか魔力を持つ者がいないのだろうか。

…ふむふむ。脳内神事典(勝手に命名)によれば、その昔、魔力を持つ者の中でも、強い魔力を持つ者同士の子はさらに強い力を持つ割合が高いということがわかった。それによりかなり狭い範囲での婚姻が繰り返されたらしい。

そのようなことができるのはある程度権力や財産のある家が多かったため、今のように魔法が使えるのは上流階級に多い、というようになったらしい。

さらに古参の家と新興の家が婚姻を結ぶことも、新興の家に協力な魔力持ちが産まれるなどのこがない限り滅多にないため、上流階級の間でも古参と新興の間には大きな壁がある。

平民に強力な魔力持ちが生まれた場合は、ヒロインのように養子にされる場合がほとんどになる。

…なかなかに成金や庶民に厳しい世界だ。



さて、大人な世界の魔法事情はここらで横に置いておいて。肝心の魔法について説明しようか。

この世界の魔法は、地球で読んだ小説とほとんど同じであった。大体属性は1人に1~2つ、多くて3つ持っている。

基本の火・水・土・風に派生の雷や氷、岩や木などがある(派生に関しては他にもあるらしいがそれはおいおい…)。光・闇も存在するが滅多にこの属性持ちは生まれないらしい。…勘の良い者ならもうお気づきだろう。ヒロインは世にも珍しい光属性持ちだ。

魔力持ちは、6歳になると国が管理する王立クラン魔法学園に入学しなければならない。

王立クラン魔法学園は初等部・中等部・高等部に分かれており、高等部を卒業した者は政界や経済界のエリート街道を約束されたも同然である。

そして物語は16歳になった主人公がこの高等部に入学してくる所から始まる。





むぅ……すまない。そろそろ瞼が強制閉鎖しそうだ………おやすみなさいである。










あぁそうだ。私の魔法属性だが…これはいわゆる全属性(チート)というものだろうか。

何とも都合の良いことに、ある程度自我が芽生えてくると、魔力持ちは自分の魔力属性が分かるらしい。何となく、あーこれ使えそう的な感覚で。うむ、だから設定が適当すぎるぞ作者。

それでまぁ私は生まれた時からある程度自我があったからな。…あぁベイビーライフ辛い。

転生した人物しかり、能力しかり私は1度神と話し合うべきだろう。

とにかく私が全属性であることは当分公にしない方が良いな。

1~2つの属性が一般的な世の中で、全属性の私の存在が知られれば

………欲のままに利用しようとするか、恐れて排除しようとするか。

一番の問題は自分の力に劣等感を持った者がいたとして、嫉妬で私に危害を加えてくるかもしれないということだ。自意識過剰だ?何とでも言うが良い。




私は今度こそ平穏な人生を全うすると決めたのだ!


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