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桜の咲く頃

作者: 藤堂遥惟

 四月、中旬。ほとんどの学校は新学期が始まった。

 今日は土曜日。僕は一人で家にいた。家でのんびりしていてもいいけど、それは昨日、やった。人ごみの中でかけるのはあまり好きじゃない。

 かばんを手に僕は玄関脇に置いてある自転車を出し、目的もなく出かけることにした。

 近所の小学校近くの道を通るとちらっと、桜の木が見えたが、僕は自転車を止めず、走りなれた道を進んでいった。


 三十分ほど自転車をこいでいるとさすがに体が暑くなってきた。今日の気温は五月上旬並み。四月にしては少し暑く感じるものだった。ちょうどいいところに店が見えてきた。僕は駐輪場に自転車を止めて、少し休むことにした。店の外には飲み物とアイスの自販機が一台ずつ並んでいる。

 喉が渇いていたから迷わず、ペットボトルのお茶を買った。近くのベンチに座ってお茶を飲んでいると少しだけ、暑さが引いた。

 そういえば、今、何時だろう。そう思ってかばんの中に入っていた携帯電話で時刻を確認すると、もうすぐ十一時になろうとしていた。今から帰るのもつまらないし、ここまで来たなら、近所の市民公園に行こう。飲みかけのお茶をかばんにしまい、駐輪場に止めた自転車に乗って、市民公園を目指した。

 自転車で行って、五分とかからない。この道を真っ直ぐ行けば、市民公園へ着く。そう思っていたら、いつもなら、通る車がまったく見当たらない。今日はなにかあったか? 思い出せないうちに市民公園の前に出た。そこで僕は気づいた。今日は桜祭りの日。

 僕の地元・岐阜県各務原市(ぎふけんかかみがはらし)は毎年、この時期になると、市民公園で桜祭りが行われる。近くの新境川(しんさかいがわ)沿いに屋台があれば、市民公園敷地周りの車道を封鎖して、パレードなどのイベントも行われる。たしか、メインステージは図書館裏にあったはずだ。僕はそのことを思い出し、少しだけ、見ていくことにした。お昼も近いし、朝は簡単にしか食事をしていないから、少し、空腹を満たせるものを買っていこうと思った。

 だけど、桜があるのは今、僕がいる場所の反対側。新境川沿いに桜並木がある。満開だと結構綺麗。二週間ほど前、親父が見てきたらしいが、その時はもう少しで満開だろうと言っていた。運がよければ、満開の桜並みが見られる。

 僕は図書館そばにある駐輪場に自転車を止めて、桜並木を目指した。歩いていると、すぐに桜並木が見えた。

 桜を見上げ、よく見ると、八分咲きといったとこだ。周囲の人も同じことを思っているのか。満開まで、あと少しだなと聞こえた。遅かれ早かれ、来週くらいになれば、もっと綺麗に咲いているんだろうなと思った。僕は満開の桜よりも散り始めの頃の桜が割りと好きだなと思う。見ていると、桜の季節が終わりに近づいて、残念な気もする。なんと言えばいいかわからないけど、その頃の桜が好きとしか言えない。そう思うだけなのかもしれない。

 近いうちにまた来ようと思った僕は、桜並木を通ると称して屋台巡りをした。ちょうどいいところに僕の好きなから揚げの屋台を見つけた。


 それから時間は過ぎ、気づけば、ゴールデンウィークに突入していた。あの後、一度も、桜を見に行っていない。

 だけど、今日、特に用事はない。ゆっくり桜を見に行ける。僕はかばんを手にこの間と同じよう、自転車に乗って、市民公園へ向かった。

 この間と違うのはすでに桜祭りは終わっていて、いつも通り、車が往来している。有料駐車場のほとんどは車が停まっている。

 また、駐輪場に自転車を停めて、桜を見に行った。

 さすがに時間を空けすぎた。桜の花びらは半分ほど散っていて、すでに葉桜へと姿を変えていた。少し、惜しい気もしたが、葉桜は葉桜の良さがあるかなと、感じた。

 もう少ししたら、完全に花びらは散りきって、葉だけになる。その頃になれば、また違う。桜が見られるかもしれない。

 人通りが少ない場所を探し、僕はかばんから出した携帯電話のカメラ機能で、目の前にある葉桜を撮影した。


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