かくれんぼに終止符を。2
あのふたりの続きです。かなり小話です。
「ムカつく」
「ん?何か言った?」
ふてくされたように呟いた私。首を傾げて顔を覗きこんでくるあいつに、なんでもなーい、とそっぽを向いて返す。そんな私を特に気にした風でもなく、あいつは白い息を吐きながら、帰途を行く。……それさえもがムカつく。
思い出すのは、数時間前の昼休み。またしても、私は告白現場に遭遇した。否、正確には陰に隠れて盗み聞き。決して、呼び出されたあいつの後をつけたとかではなく!たまたま…たまたま、だ。でも、辛い。付き合い始めたというのに、告白されるって。私は本当に彼女なのかと、不安になる。大して可愛くも何ともない自分が憎い。今でも、あの日の出来事は夢だったんじゃないかなー?と思ってしまう。それでも、隣にいたいって思うのは、やっぱり好きだから。大好きだから。そして、いつも余裕の彼がムカついてたまらない。
「しわ寄ってる」
「う、うるさい…!」
俯いて色々考えていた私の額に軽い衝撃が走る。突然デコピンをしたあいつに文句を言うものの、はいはーいと、笑われてまたしても余裕。
それに、ぎゅって、なに?私の左手とあいつの右手がぎゅって、なに?いつもいつも昇降口を出たら、さらっと勝手にポケットに手を引っ張り込む。それが、当たり前かのように、いつも余裕でいつも突然で。ムカつくけど、そこが大好きで。
――今日は尚更、寒いなんて言えない。
『俺、すっごく大事なやつがいるから』
数時間前のその言葉の熱が、未だにひかないから。
Fin
ちょっとしたひとこまでした。
読んでいただきありがとうございました。