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幼馴染の紡ぎ  作者: 翠凛
5/12

新しく始まる帰り道

以前フォレストノベルにて掲載していた作品です。



 何年も続く、何年も続けている学校からの幼馴染との帰り道。私の想い人でもある隣の奴はモゴモゴと話しかけてきた。それはものすごく奴らしくなくて気味が悪い。


「あのさ……」

「なに」

「俺さ……」

「うん」

「隣のクラスの奴に告白された」

「……。……へー」


 軽く答えながらも、頭はショックと興味でいっぱいいっぱい。なんて言われたんだろう。相手は誰なんだろう。何て答えたんだろう。魚の骨が喉につまったような感じで、吐き出したい言葉がつまってつまって苦しい。


「もっと何か言えよ」

「他になんて言えばいいの」


 何が気に食わないのか、噛みつくように問うてくる声に、苛立ちが募る。


「……じゃあ、どうすればいいと思う?」

「何が」

「告白の返事」


……なぜそれを私に聞く。ぐさぐさと心に突き刺さる奴の言葉。私の気持ちも知らないくせにこいつは……!


「そんなのあんた次第でしょ」

「そうなんだけど、お前はどう思う?」


 お互い目を合わせない会話。住宅街に伸びるふたつの影には距離がある。長いような短いような、沈黙。……考えたくもないのに、そんな、あんたが誰かと付き合うなんて。


「おい」

「しつこいなあ」

「お前はどう思うんだよ」


……ほんとにムカつく。どう思うも何も、私はずっと、好きだったわけで。あんたが好きだったわけで……


「いいんじゃない?付き合えば?」


 それなのにいつも声になるのは、思ってることとは反対の言葉。また、やっちゃった。言っちゃったよ。馬鹿だ私。ずっと何年も、喉につまらせたまま。


……ん?ふと、隣を見ると奴がいない。後ろに首を回せば、奴は俯き加減に立っている。


「なにしてんの」

「――……だよ」

「は?」

「なんだそんなこと言うんだよ」


 低い声と、怒った目。なんで睨むのかが分からない。なんで怒ってんのこいつ。っていうか……なんで私がそんな目で見られなきゃいけないの!?もう、ムカついた。


「なんで怒鳴るのよ!」

「お前がふざけた事言うからだろ!」

「はあ!?こっちは大真面目に応えてやった!」

「だから、なんで付き合えとか言うんだよ!俺は付き合いたくないんだよ!」


 はああああ?なにそれなにそれ。言ってること滅茶苦茶じゃん。ああああああ!もう!頭の中がぐちゃぐちゃで言葉が止まらない。


「だったら最初からそう言えばいいでしょ!私に聞く必要なんてないじゃん!」

「~~っ!この鈍感!」

「ど…っ!?あんたには言われたくない!鈍感はあんた!」

「俺の気持ち知らねえくせにつべこべ言うんじゃねえーーー!」

「私にあんたの気持ちなんか分かるわけないでしょうが!」


 唾が飛ぼうが、声が大きかろうが、構わない。


「だから鈍感だっつってんだよ!」

「なんでそうなんの!?」

「俺が鈍感っつったら鈍感なんだ!」

「私が鈍感っつったら鈍感なの!」


 お互いに呼吸は乱れて睨み合い。子どもみたいな喧嘩。言葉が止まったところで、奴を睨みながら呼吸を整える。息が落ち着いていくうちに、頭も冷えてくる。なにしてんだろう。馬鹿だ。


もう、やってらんない。もう、どうでもいい。

 

 ふいっと、目を逸らして足の向きをかえた。もう、帰ろう。ひとりで帰ってやる。こんな鈍感知るか。自分に言い聞かせるように、帰る帰る帰ると心で呟く。それに合わせるように歩調も速くなる。後ろから聞こえる足音さえ、腹が立った。それなのに――


「……邪魔なんだけど」

「待てよ」


 奴は私の前に立ちはだかった。伸びる影が重なる。


「通行の邪…」

「お前が好きだ」 


 足が止まる。おかしな単語が聞こえた気がする。ちょっと、よく、わからない…、何言ったのこいつ。


「お前が好きだ」


 心臓が走る。確かに、聞こえた。たぶん2回同じこと言った。言った。好きって言われた。……好きな人に好きって言われた。真っ赤な顔と尖らせた唇。さっきまであんなに腹が立ってたのに、この俺様な口調がムカついてムカついて堪らなかったのに。何故だか、可愛く思えて仕方ない。


「何か言えよ」


……何か言えよって言われても……言う言葉はひとつしかない。


「私は……」

















――幼馴染との帰り道。横に並ぶふたつの影。でもその陰に隙間はなく……ふたりの手はひとつ。何年もつまってた喉の苦しさはない。幼馴染から、少し関係の変わった、そんな新たな帰り道。











fin


読んでいただきありがとうございました。

過去のものを掘り起こしているわけですが、パターンがどれも似たりよったりで…もっと柔らかい頭が欲しいと思います…。

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