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幼馴染の紡ぎ  作者: 翠凛
2/12

かくれんぼに終止符を。

以前、フォレストノベルに掲載していた作品です。





「好きです!付き合って下さい!」


――それは、いつもと変わらない昼休み。……のはずだったのに。その可愛らしい声で、日常が崩された。

 ええと、はい、告白現場に遭遇というやつですよね、これは。人生初の告白現場遭遇。これぞ、初・体・験!おめでとう私!……ってんなわけあるかああああああ!……なんで告白されてるのが――あいつなんだろう。なんで……私の幼馴染なんだろう。なんで私の好きな人なんだろう。あの、ちょっと、これは…辛いですよ?いや、かなり。


 向き合うように立っているふたりにバレないように、花壇の裏に身を潜める。あいつが、ちゃっかり人気があるのは知っていた。だって、いいやつだし。あいつがいいやつだなんて昔から知ってる。私はそのいいやつすぎることがちょっと嫌いでもある。

 でも、告白現場を見たのは今日が初めて。好きな人が告白されている所を見ると、こんなにも嫌な気分になるのか……とぼんやりと考える。そもそも、こんな天気のいい日の昼休みに裏庭で告白って、ねえ?人がせっかく日向ぼっこして、のんびり過ごそうかと思ってたのにさ。これじゃ、のんびりできないでしょうが。しかも、花壇に隠れて息を潜めてる私って、明らかに怪しい人だし。

 ……にしても、可愛い子だなあ。あれはたぶん1年生だなー。ほんと可愛いなあ、あの子もモテるんだろうなあ。顔真っ赤にしちゃってさ。私もあんなに可愛かったら…なんて考えちゃうじゃん。


「ありがと」

 そう言ったのはあいつだった。こっそり覗いても、その微笑みっぷりはかなり素敵なもので、胸が痛む。あー、えーっと?つまりは、付き合うのかな?ふーん、へえ。そうかそうかー。

 鼻歌でもしてやろうという気分で状況を理解しようとするものの、やっぱり感情は言うことをきかなくて、視界が揺れてくる。……何年、片想いしてると思ってるの。絶対私の方が、ずっとずっと好きなのに。

 目元をゴシゴシと制服の袖で拭きながら、もう一度ふたりの様子を見る。――が、え、あの、女の子が泣いてるんだけど!?なんで!?もしかして泣くほど嬉しいの!?

 呆然とその様子を見ていると、急に女の子は猛ダッシュで校舎の方に行ってしまった。あいつはその後ろ姿を見てるだけ。私は、状況が理解できなくてただただ……ポカンと…って、うお!?ちょ、待て!なんでこっち来るの!?え、ちょ、それはまずいって!!

 なぜかあいつはこっちに歩いてくる。スタスタと近付いてくる影に、手が震える。


 に、逃げる!逃げなきゃ!私は逃げますーーーーー!!

そう思って、腰を上げた瞬間……襟元を掴まれた。ひゅっと息が詰まる。足掻く気力さえ湧かない。恐い、恐い、恐い!

「逃げられるとでも思うなよ?」

 ……っ思えません―――――――!!


 そのままぐいっと立つように促されて、引きずられるように歩いて、目で言われたようにその場にストンと座る。そして私に向き合うようにあいつも。もちろん、私は顔を見られないように俯く。

「……で、なんでお前は泣いてんの?」

 うぐっ…ば、ばれてるし。いや、でも、白を切ろう!強気で行くんだ私!

「な、泣いてない!」

「目、真っ赤」

 ぐっと覗き込むように顔を近づけられ、目がぶつかる。

「か、風が強くて…!」

「今日は風は強くないけど?」

「つ、強い!」

「すすり泣き聞こえてた」

「うそ!?」

「うそ」

「!!」

 にやりとした笑いに、失態に気付く。やられた……っ墓穴掘った―――!!

「何を勘違いしてるか知らないけど、俺あの子と付き合わないからな」

 ……は?……え?

「はあああっ!?」

「おまっ、声でかい!」

 だって、だって、だって!

「だ、だってありがとうって言った!」

「告白されたらありがとうぐらいは言うだろう。俺はOKなんか言ってない」

「うそ!」

「盗み聞きするんならちゃんと聞いとけ」

「ショックでそれどころじゃなかった……」

「ふーん、ショックねえ?」

 ……し、しまった!学習能力なさすぎる私!あほか!ていうか、この顔は、この顔は、絶対私の気持ち知ってやがる――――――――!!こいつSだ!ドSだ!サディストだあああ!

「ショックってなんで?何がそんなに悲しかったわけ?なんでそんなに顔赤いのかな?説明してもらおうか」

 敢えて、息のかかる距離で聞いてくるとか卑怯だと思うんですが!ほんとドS!昔はこんなやつじゃなかったのに!もっと優しかったのに!

「わ、分かってるくせに言うな!」

「分かってるけど、事実確認として、本人からはっきり聞きたい」

「……っ!」

「言えよ」

 さっきまでとは違う、真剣な瞳から目を離せない。

「言ったらどうするの」

「それは言ってくれないとわからない」

「~~!」

 言っても言わなくても、どっちにしろ私たちはもう今までのようには一緒にいられない気がする。だったら。はい、そうですね、はいはい。言えばいいんでしょ、言いますよ!!なるようになれ!

「ずっと好きだった!これで満足!?」

「うん、俺も」

「ああ、そうですか、それはようございまし……へ?」

「俺もずっと好きだった」 

 満足したように笑う目の前の男に眩暈がする。なにこれ。なんかすごく遊ばれたような気分なんだけど。ていうか、なに、え、私好かれてたの?はい?状況整理する時間ください。

「俺の勝ちだな」

「は?」

「先に言ったのはお前だし」

「ちょ、私に言わせたんでしょうが!」

「でも結局折れたのはお・ま・え」

 むーかーつーくー!!

「まあ、まあ、そう怒るなって」

 宥めるように肩を叩いてきた手をすばらく払いのける。

「怒ってないわぼけ!」

「おうおう、口の悪い事」

「悪いか!」

「いや?そういうとこも好きだし」

「な…っ」

 一瞬の、小さく音を残した頬の妙な感覚に、体温が上がる。ふ、不意打ちだ…。

「もう、逃げるなよ?」

 確かめるように、覗き込んでくる瞳を見つめる。逃げるもなにも。私はもう。

「……逃げれないよ」


 かくれんぼはしないから。




――かくれんぼをした。何年も。隠れても隠れても見つかって。でも、もう恐いものはないから、かくれんぼはしない。





fin


タイトルのセンスのなさに毎回呆れます・・・とほほ。

読んでいただきありがとうございました。

ついのべとしてツイッターで流した段階から改稿しました。

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