4.腹黒姫の告白・2
あたしは何故か告白した時点で告白ゲームが完了したと思っていたのだったが、考えてみればその日一日中は「仮の恋人」と言うルールがあるのをすっかり忘れていた。
自分がこのゲームで告白されたことがなかったから忘れていたが、三浦くんはモテる。
つまりまだ12日しか経っていないにも関わらずすでに何人かに告白を受けていた彼は告白ゲームの趣旨を理解しており、仮の恋人とは言え恋人の扱いを心得ていた。
あたし達は受験生と言うこともあり、2学期が始まっている今は既に部活はみんな引退している。
つまり放課後になれば学校に用事がなければ基本的にみんな下校することになっている。
勿論あたしも今日はこれ以上学校に用事がないので帰る準備をしていたのだが、あたしの席に三浦くんが訪れ本日三度目のニコッを頂きました訳で。
?マークを浮かべるあたしに三浦くんは「一緒に帰れる?」と一言聞いてきた。
そこまできてようやくあたしは告白ゲームがまだ有効な事を思い出したのである。
最初に思ったのは「めんどくさい」だった。
別に一緒に帰らなくたって問題はないと思う。
それをわざわざ律儀に守って声をかけてくるなんて三浦くんは本当に出来た人だと思う。
でもあたしからしてみればそんな模範解答みたいな行動は求めてなくて、むしろ放っておいて欲しかった。
しかし、わざわざ来てくれて断るのも失礼な話なので「うん、いいよ」と承諾するしかない。
返事を聞いた三浦くんは相変わらずニコニコと笑みを浮かべあたしの準備が終わるのを待っている。
あんまり待たせるのも悪いので急いで仕度をしてお待たせ、と声をかけた。
校門をでるまではそれはもう終始視線を浴びてまるで見世物小屋の気分だった。
三浦くんは慣れているようで全く動じていなく、あたしもどうせ今日一日の我慢だ…。と自分に言い聞かせる。
「そういえば神城さんって家どっち?」
校門を出る前に三浦くんは尋ねてきた。
これはうちの中学は2つの小学校から集まっていることもあり、校門をでて東の人と西の人で帰る方向が違う。
三浦くんはこれの事を聞いているのだと理解したあたしは返事をする。
「東だけど三浦くんは?」
「俺も東。良かった。まだ一緒に帰れるね」
そう言って来ると三浦くんはあたしの歩調にあわせてきた。
それに対して慣れているな…、と思わず三浦くんに視線を向ける
それを見た彼はニコッと不思議そうに首を傾げてくる。
ウッとしてしまった。
とっさのことで頬を引きつらせてしまったがそれを見られてないと祈りたい。
本当にめんどくさい。
三浦くんが同じ方向だと知っていれば嘘をついて回避するのに…。
「そういえば神城さんって同じ方向だけど小学校違うよね?」
あれこれ失礼な事を考えてれば三浦くんは話しかけてくれる。
気を遣ってくれてるのだろうけど、ありがた迷惑だ。
しかし、無視する訳にもいかないので当たり障りないように尚且つ、内面とは想像もつかない微笑みを浮かべる。
「うん。あたし中学から転校したから」
「あ、そうなんだ。前はどこに住んでたの?」
「隣の県だよ。」
なるべく話を広げないように一言で返す。決して悪い印象を与えないように隙は見せずに。
三浦くんは相変わらずニコニコと笑顔でいる。
それからも彼といくつか会話した。
気づけばあたしの家がある曲がり角に近づいていて、ようやくこの告白ゲームも終わりが見えた。