2.腹黒姫の憂鬱・2
三浦くん。
彼のことはもちろん同じクラスだから知っているのは当たり前だけど、それ以前にあたしは何度も「三浦くん」の名をよく耳にしている。
そう。彼は有名な男子なのだ。
アイドルグループにも決して引けをとらない愛くるしい美貌の持ち主で、そこら辺の女子より断然可愛い。
身長はそんなに高くはないが低くもなく日本男子の平均よりかは若干高いくらいの背丈。
何より気さくな人柄で男子にも女子にも友達は多くそんな彼を女子はほっとく訳がない。
そういった物事に興味のないあたしですら彼の事は知っているのだからこの学校からしてみれば「三浦くん」と言う存在はかなり大きいと思える。
「三浦くん…?」
あたしがそう呟くと安藤さんはニコニコしながら返事を待っていた。
返事と言ってもこの表情から見るに肯定以外は受け入れてくれなさそうだ。
「そ!三浦くん可愛いし優しいから結構人気あんだよ~?」
いやらしくニヤニヤと口を歪ます安藤さんに思わず視線をそらしてしまう。
苦手だ…。只でさえふざけたゲームをしなければならない事に対して頭が痛いのに追い討ちをかけられてるようだ。
悩んでいる時間が勿体無いのか安藤さんは少し苛ついた口調で「そうしなよ~」とせがんでくる。
これ以上この人と話すのも嫌だったあたしは気づかれないようにため息を吐いて「そうする」と一言返す。
それを聞いた安藤さんは満足そうにしてこの短時間で見た中で一番最高の笑顔を浮かべて立ち去った。
立ち去った方向を暫く見つめながらあたしは告白ゲームのことを考える。
告白ゲームは始業開始から終業までの間であればいつ告白してもいいルール。
現時刻は3時間目と4時間目の間の休憩時間だからタイムリミットまで結構時間がある。
しかも今日はいつもより授業が多い日なのでその分告げる時間も遅くても構わない。
どうせならギリギリにやりたい。
あんまり早くても色々と面倒だったから。
頭の中でいくつか整理して、今日の最終授業の前の休み時間に告げることを決めた。
決めた途端馬鹿馬鹿しくなり、カバンの中に入れている読みかけの本を取り出しまるで世界を遮断するかの如く自分の世界に入った。
途中、遠くから安藤さんの妙に甘ったるいしゃべり声で「神城さん」と「三浦くん」と言う声が聞こえた気がしたが、本に熱中しているあたしはそれに全く気にも留めなかった。
そうして気がつけばタイムリミットの時間になっており、あたしは重たい腰を上げて目標の人物の元に向かうのだった。