1.腹黒姫の憂鬱
「今日何日だっけ?」
「12日だよ」
「じゃあ今日は12番の人かー。12番って誰?」
「えーっと神城さん?」
神城 有花15歳。中学3年生。
花も恥じらうお年頃…な崖っぷち受験生。
うちのクラスでは今妙な遊びが流行っている。
その名も『告白ゲーム』
名前の通り、告白を告げればいいだけのゲーム。
ルールとして、その日の日付と出席番号が同じ人が誰かに告白をしなければならなくて、告白の対象は自分で選べる。
ただ、同じクラスに限り、更に告白された人は絶対に断ってはいけない。
そして晴れて2人は両思い。カップル誕生と言う訳だ。
たとえ、相手が自分の事を好きでなくても付き合わなければいけない。
その代わり、付き合う期限はその日一日だけ。
次の日になったら無効になる。
そして12日の今日。出席番号12番のあたしは告白ゲームの日だった。
思い出しただけで頭痛がする。
そもそもこの遊びが流行ったのはクラスのボス的存在でもある女子グループが原因だった。
同じクラスで付き合いたい人がいたらしいけど、告白して振られるのが怖かったのか中々言えずにいて、
それだったら遊びって事で告白しよう!どうせなら一日だけ付き合ってもらいたい!って事でこのふざけたゲームが誕生した訳だ。
別に告白ゲーム自体にケチをつける訳ではないけど、やるなら自分たちでやれ。
無関係な人を巻き込むな!って言うね。
それよりも驚きなのが意外にもこのふざけたゲームに対してノリ気な人が多いっていうこと。
どうしてこんな事が楽しいのか理解に苦しむ。
「神城さーん。今日12番だけど決まってる??」
声をかけてきたのは告白ゲーム発案者でもあるグループの一人、安藤さんだった。
軽く現実逃避していた頭は一瞬にして現実に戻される。
相手にばれないように小さな溜息を吐いて返事する。
「んー。実はまだ決まってないんだぁ」
「えー?もう今日だよ?大丈夫?」
この場合の決まってる?と言うのは告白する相手は決まってる?と言う意味で、告白ゲーム当日なのに未だに誰に告白するか決まってないあたしを心配しているらしい。
本当余計なお世話だ。
心の声が顔にでないように注意しながらあたしは眉を下げていかにも困ってます!というオーラをこれでもかっと言うぐらいかもしだした。
そんなあたしの想いが届いたのか安藤さんは「じゃあ、」と呟きあたしの耳に顔を寄せてきた。
「三浦くんとかどーお?」