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comrades  作者:
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私のいた隊

それは私が16歳の頃だ。

当時の我が国の軍は、開戦8年目にして、いまだ敵国と対等に戦っているように見えた。

表面上は。

敵の戦闘機が二機、本土上空を旋回しているのを見付けたら、軍は同じ型の戦闘機を二機出撃させた。

本土付近に敵国の軍艦が二隻現れれば、当時最新鋭の大型大砲で敵国の軍艦が沈没するまで攻撃を続けた。

毒ガス兵器の開発にも長い年月と経費を費やしていた。

ただそれは表面上だけだった。

水面下では、鉄や銅といった金属の不足。

徴兵制を何世代も拡大し、かき集めたところの兵士の不足。

そもそも定かでない効果で全くといっていいほど成果をあげられない無駄な兵器とそれに吸われて消えてゆく軍費。

そして何より一人一人の戦意の低下。

失踪する上官。

逃亡する下官。

軍は静かに崩壊しつつあった。

私が所属していたのはそんな軍隊の中で唯一、“武器を持つが行使しない”軍隊、軍楽隊だった。

正しく言えば軍楽隊も、陸軍の歩兵隊も、空軍の戦闘機乗りも、海軍の艦隊も変わりはない。

左胸には勲章または階級章、

左腰には軍刀または軍配給の小型拳銃。

帽子を深く被り、警棒をさして行進する。

敬礼は右手を額にしっかりと当て、礼は腰を90度に曲げた。

軍楽隊と他の軍隊には正式な違いは無かった。

あったとすればやはり先程述べたように、“武器を行使しない”ということ。

いや、“行使できなかった”ということ。

私のいた隊、それは軍楽隊。

その軍楽隊も私が17歳の誕生日を向かえる前に廃止されることとなった。

“武器を使用しなかった”隊。

“武器を使用できなかった”隊。

私の思いはいまだそこに止まり、静かに息を潜めている。

静かに昔を思っている。


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