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44: hinc illae lacrimae

「第五島の風土病か。洛叉とやら――……其方は奇妙な事を言う」


 第一島へと至る船上で、俺を見上げて首をかしげる刹那姫。リフル様の外見と相まって、最高に愛らしい。しかし、彼女が発した言葉は不可解だった。


「あれはそもそも、其方が生み出したようなものでは?」

「――……はい?」

「であれば其方なら、すぐに解決できるものであろう? 妾の用事の一つは其方に会うことぞ? 其方が生きていることが伝手で解ったのでな」


 この女は何を言っている? そう思ったのは俺だけか。どうやら俺は周りからの信頼がかなり低いようである。普段は困りもしないが今回は流石に事が事。


「刹那姫。お戯れは程ほどになさってください。俺が味方に殺されます」


 フォースにロセッタ、アルムにエリアス様。全員から驚愕と憎悪の視線が降り注ぐ。


「嘘……です、よね?」

「ど、どういうことなの先生!?」

「聞いてねぇぞ洛叉!!」

「お、落ち着きなさいあんたら。この女と闇医者のどっちを信じ――……どっちもどっちか。発言には気をつけなさい変態」


 銃口をどちらに向けるべきか迷ったあげく、俺へと定める聖十字。俺の味方はいないのか? 四面楚歌の此方を見ては、くすりと微笑むタロックの美姫。


「よいよい。静まれ童共。まぁ、民草共の話には信憑性のない噂も多い。妾は寛大じゃ。船旅で気分も良い。特別に話してやろうぞ」


 刹那姫が床を指さす。どうせ跪くのではなくこうだろうと両手も付けば、理解が早いと頷いて、俺の背中に腰掛けた。リフル様ならこんな展開まずないが――……正直悪くない。周りの視線の温度はさらに下がったが些細なことだろう。


「くくく、あの度家の嫡男がこうも容易く。いつぞや妾を袖にしたこと、覚えておるぞ? よもや那由多派であったとわのぅ。確かにこれは、よい体をしておる」

「あれは……子どものしたことですから」

「愉快な男よ。それを本人が言い訳に使うパターンは初めて聞いたぞ」

「あんたらの昔話はどうでもいいから。それより、Disのことをおしえてくれよ!」


 しびれを切らしたフォースが騒ぐと、姫は再びくくくと笑う。


「堪え性の内男よの。幼い内はそれも愛いぞフォースとやら」

「ど直球のセクハラやめてください」

「リフルも大概だったけど、それタロック王家の血か伝統なわけ?」


 しばし考え込む刹那姫。俺も一緒に思い返してみたが、やや否定が出来なくなった。若干タロック王もその気があった。


「それは実際に、父上と対峙したときにでも確認するが良い。生き延びいずれ会うつもりなのだろう?」


 病の治療が出来るなら、それまで死ぬつもりはないのだろうと確認される。彼女はただの色ボケ姫ではない。頭が切れ、人心掌握術にも長けている。良い方に向かわなかったのが残念だが、上に立つ者としての器量は十分備わっていた。確かに、只の政略結婚の駒――……子を産むだけの存在と捨て置くタロックでは光らぬ才能。セネトレアに嫁いだことで、彼女はより多くのものに開花した。少し言葉を交わしただけで、この場が彼女に呑まれてしまう。


「そうじゃな――……まずは何から話そうぞ? ふむ、――……我がタロックとカーネフェルは異なる民族。病や毒への耐性、体のつくりが違うのだ。仮に悪意がなくとも接触することで伝染病を広めることはある。元々のDisはまぁ、その程度の疫病。厄介な熱病くらいのな」


 確かに、そこまでは聞いたことがあるかもしれない。先の大戦ではマリー様が感染者の治療に当たった。そこで彼女はタロック王と出会い惚れられた。休戦条件として中立国シャトランジアの姫をタロックに差し出すことで、カーネフェルとの休戦が成った。


「休戦の折りに、タロックは治療や予防をしてやったのだ。第五島の貴族共にな。第五公もそれじゃろう」

「予防――……まさか!?」

「うむ。抗体自体が問題でのぅ。自身が発病しない代わりに、運び手となる」

「そ、それって――……あんたらは、いつか休戦が破られる、いえ! 破る前提でそんなことを!?」

「当時の最先端の治療だが? 先延ばしにすればいつかは解決する、はずだった。違うか洛叉?」


 なぜそこで俺に振る。身に覚えがないと言い訳しようにも、場の空気が葬式よりも重すぎる。心当たりはないかと自分に問いかけながら――……病の概要を振り返る。

 Disはカーネフェル人(カーネフェリー)の血に反応する。タロック人の感染確率は低い。真純血のタロック人ならまず感染しない。混血も感染しない。カーネフェルに向けた明確な悪意のようなこの病。確かに、その構造は人為的――……?


「身に覚えがない。逆なら考えたことは何度かあるが――……」


 タロック人を殺す毒の研究。タロックでは毒殺が美学。政敵の始末に毒を用いれば罪にならない。薬師の家計である俺の家では、毒と薬の研究を代々続けていたものだ。


「那由多のため、ずいぶんな研究をしたのでは? 処刑を止めるため――……恐れ多くも我が父、須臾王をも殺める毒を作ろうとしたことは?」

「――……!? ば、馬鹿な!! あれは、あれは実現するはずがない!! 馬鹿げた机上の空論だ!!」


 刹那姫からの追求に、俺の顔は青ざめる。そちらの心当たりは大いにあった。

 タロック王族を殺そうと思った瞬間は、何度となくあった。その時、ありえないものを生み出そうと書き殴り、破り捨てた幼き日の自分。結局実現不可能と諦め、時間というシステムを操る道を選んだのだが。俺の出奔で家が焼かれるその前に、資料を持ち出した馬鹿がいたならば?


「阿呆の僧祇……か?」

「くくく、思い出しおったか。其方にもずいぶんと熱烈な好敵手(ストーカー)がいたものよ」


 今の今まで忘れていた。そういえば、故郷にそんな男が確かにいた。


「僧祇――……さま? どっかで聞いたことがあるような」

「馬鹿フォース! タロックの第五騎士よ!! ろくな噂なかったでしょ村でも!」

「あっ! 村から子どもを人体実験に買っていくっていう、あの!?」

「そうそれ! まだセネトレアの方がマシって言われてたやつよ」

「酷い言われようじゃが、あやつは天九騎士団の第五騎士。今まさに、第五島を攻めている阿呆じゃ」


 この場はタロック出身が多いから話が早いな。付いて来られていないのはアルムとエリアス様のみだ。ふたりには後からかいつまんで説明しよう。

 僧祇は旧友と呼ぶにはなんの親しみもないが、旧知の仲ではある。共に王家に仕える医者の家系。取るに足らない不快な男だが、一方的にライバル視されていた記憶はかすかに残っている。


「あの阿呆は、其方の研究を反転させた。それを風土病と組み合わせ――……より最悪の疫病へと進化させたのだ」

「ろくなことしませんね、あの馬鹿は」


 タロック王絶対殺す毒、を作りたかった俺の研究を使い、カーネフェル人絶対殺す毒を作り上げるとは。


「ここまで話したのじゃ。いい加減理解したであろう?」

「……ええ。ますます生身の貴女にお会いたくなりました。失礼」


 俺は刹那姫の椅子をやめ、彼女を背からそっと降ろした。ようやく周りの視線も少し変わってきた様子。


「洛叉――……そ、それじゃあ! 治せるのか!?」


 期待に染まった子ども達の目。それは宝石のよう美しい。間に合うか、間に合わないか。全てはこれからの行動次第。だが、間に合わせる。今度こそ、間に合わせてみせる。


「きゃっ! な、ななに、急に凄い風だよ!」

「アルムちゃん、だいじょうぶ?」

「お前等、危ないからこっちに来い!」


 甲板を転がる子ども達を、慌ててフォースが追いかける。


「ほぅ――……良い風じゃ」


 船を進ませる追い風に、毒の王女がにたりと笑った。彼女が扇いだ扇の力とは思えないが、刹那姫はスペードのⅡ。風の元素に愛されている。まさか、協力を……してくれているのか?


「――……まだ、信じたわけじゃないわ。あんたも、あんたのことも。でも、方法は――……あるのよね?」


 銃を下ろしたロセッタが此方を見つめている。炎のように揺らめく瞳で。


「青目であろうとシャトランジアの姫の血では届かなかった。俺の研究では、真純血のカーネフェル王族が必要だった。近親婚のタロック王族と違い、そんな者は存在しない。だから俺の毒は机上の空論」

「じゃあ、凶暴化したDisにはタロック王家の血が使われている?」

「カーネフェルの真純血。カーネフェリアの血を宿したものなら、もっと良い。この国に今――……カーネフェル王が来ているのなら、可能性はある」


 刹那姫がこの話を持ち出した以上、いるのだ。それに該当する人間が!


「くくく――……勿論おるぞ? それに近しい者がな。我が王家のように完全にとは行かぬが、あの二人の血が揃えば。其方であればどうにかできよう。その程度の不足なら――……」


 付け加えられたのは、俺にだけ聞こえる言葉。耳元で囁かれたそれは、一瞬俺の表情を強ばらせる。それを周りが怪しむ前に、刹那姫がぽんと手を打ち自身に注意を引き戻す。


「しかし、薬の原料だけあっても意味はない。第五騎士は破壊ばかりに特化しておる。其方が原料を手にしなければなるまいて。少なくとも、其方はカーネフェルの者に死なれては困る訳じゃ」

「くそっ!! 神子様と連絡さえ取れれば――……すぐにでも!! ああもう! なんでトーラが死んじゃったのよ!! あの変態馬鹿ブラコンがぁあああ!!!!」


 主にあの鳥頭の所為だなそれは。本当に、トーラがいれば大体なんとかなった。この絡繰りさえ判明すれば、本当に。


「目の前に救いの鍵があるというに。カーネフェリアも悔しかろう! 指をくわえてみていることしか出来ぬのだ。否、それが薬だとさえ理解して折らぬ大馬鹿者よ!!」


 刹那姫は泣くほど腹を抱えて笑っていた。リフル様であれば、涙も毒と離れただろうに。彼女はなんの配慮もせず、愉快愉快と笑い続ける。


「あ。でもあんた――……やっぱりなんか企んでるでしょ? だって、私たちがカーネフェルに味方するってことは、セネトレアが負けるわよ?」

「ここでの遊びにも飽きたところでの。土産を持って妾は国へ帰るつもりじゃ。ちょうど良い贄もおる」


「那由多には妾の猫を倒させる。その体を妾が奪う。その時に無事にこの体を那由多に返してやろう」

「なるほど。影武者に全ての責任を負わせるつもりですか。仮にそれが間に合わなくとも――……」

「其方が困ることになるぞ? その場合、妾の体で死ぬのは那由多となる。妾はこの体で帰っても問題ない故」


リフル様を救うためには、刹那姫の企みに乗るしかない。


「あのさ――……それ、もっと、簡単な方法があったんじゃないのか?」


 刹那姫に、それが言えたのはフォースだった。邪魔なカードを消して欲しい、国に帰りたい。取引ならば、こんな風に人質を取らなくても可能だったはず。嫁いだ国を見捨てて敵国を勝たせるつもりなら、もっと犠牲者を減らす方法があったはず。


「それではつまらぬじゃろう? 其方は知らぬか? こんなつまらぬ世界でも、命を賭した遊戯は愉快なものぞ。退屈を、しばし忘れられるというものよ」


 笑った姫に、フォースの表情は曇る。理解できない、わかり合えない生き物として彼女を見ているのだろう。俺はと言えば、人として情けない話だが、彼女の言葉が理解できてしまった。

 敗北を知らない。自分に勝る者がいない。空虚な生だ。

 この最悪の状況で、思ってしまった。面白いと。あの阿呆が、この俺の研究を使って……こんな大それた事をやってのけた。屈辱だ。打ち負かさなければ気が済まない。しかしなんだ、それに心が震えている。目の前の子らが、大勢の人々が苦しんでいる事実があれど、歓喜の心が止まらない。この俺に追いついた馬鹿がいる。それがいかに愚かで無駄なことだったのか解らせたい。風土病を完全に滅ぼしてやり、お前の人生がいかに無意味だったか教えてやりたい。なんて邪悪な欲望だ。だが周りには、俺と同じ道で俺と同じ場所までたどり着いたものがいないのだ。俺の気持ちは、誰であっても理解できない。


「くくく――……やはり此方にきて正解だったのぅ」


 医術は理解できなくとも、俺の心はすべてお見通しだと彼女が言った。





 もう、心の中がおかしくなりそうだ。船室に戻ったフォースはその場に座り込む。ドアを背に、はしゃぎ喜ぶアルムの声が響いていた。


「でも――……よかったねぇ、よかったね!!」


 見なくても解る。エリアスに抱きついてふたりで喜び合う姿が見える。きっとエリアスは助かる。まだ感染して日が浅い。


(俺は、俺は――……)


 解らない。でも、もしかしたら間に合うかもしれない。

 こんな審判に参加しておいて、死を覚悟したつもりで。それでもまだ、助かるかもしれない。かすかな希望を前にして、勝手に心が暴れ出す。


「知らなかったよ俺――……ほんとうは。本当にまだ。こんなに、生きたかったんだな。俺は、どうしようもない人殺しなのに」


 あふれた涙を隠すため、膝を抱えて蹲る。誰に見られているわけでもないのに恥ずかしかった。いや、見ている者ならいた。精霊が俺の傍にいてくれる。

 トーラから継いだ土の精霊。手のひら妖精サイズのエルツが、自分の横に座っている。


《おいフォース》

「どしたエーさん?」

《我は偉大な精霊。こんな姿は本来不本意である》


 トーラと違って才能がない俺に憑いているせいで弱体化していると彼は不満を漏らした。どうしようもないじゃないか、そんなの。けれども彼は、方法はあると口にする。


《お前に覚悟があるのなら、契約を進めてやる。触媒を、我に食わせるつもりはあるか?》

「触媒――……?」

《――……どちらかの剣》


アーヌルス様の《冬椿》。もう限界だと言われたそれに代わって、カルノッフェルが打ってくれた《番犬(つがいいぬ)》。そのどちらもが触媒だと精霊は言う。

カルノッフェルは、どうなったんだろう。刹那姫にその件も問いたださなければ。もしあちら側の思惑で贈られた武器であるのなら、《番犬》をこのまま所持していて良いのだろうか?


(でも――……)


 あの時のあいつは、操られていたように思えない。どうかしてるよな俺。かつてはあんなに憎んだ仇敵を、信じたいと思う自分がいるんだ。

 一度も使わず、砕いてしまうのが可哀想だと思うんだ。正直、あいつの見立ては正しいよ。どんどん体力も力も落ちている。刀はもう振るえない。仮に治療が出来たとて――……トーラがいなくなった今、《冬椿》はいつまで保つか解らない。復讐のため、主の形見として大事にしていた俺の牙。カルノッフェルを殺したいと思えなくなった今、この刀に残る派思い出だけだ。


(思い出――……俺は)


 他に縋れるものが何もないと思っていた。アルタニアでの記憶。アーヌルス様、コルニクス――……そして、エリザ。でも、あれから色々なことがあった。リフルさんと再会して――……本当に、色々あった。ニクスという名も、もう俺の何処にも重ならない。冷えた心を溶かしてくれた人がいる。思い出ならもう、俺の中に十分すぎるほど詰め込まれたんだ。失ってしまった人もいる、でも――……取り戻した繋がりもある。


「……――わかった。じゃあ、こっち」

《そちらで、いいのか?》


《冬椿》を差し出す俺に、エルツは驚いていた。


「こっちはトーラが一度直してくれたんだ。エーさんに食べられるならトーラも本望だと思う」

《そうか――……。ならばありがたく頂こう》


 大事な形見を受け取って、エルツの体が輝いた。エルツは土の精霊。刀に使った原料も、大地から採掘したもの。彼にとっては食事に等しい。《冬椿》に残ったトーラの数術、その痕跡まで彼の力になれば良い。

 刀は形を失い分解され、輝きながらエルツの中陪と溶けていく。彼は眩い光に包まれて――……姿が変わった。手のひら精霊だったエルツが、俺と同じくらいの子どもの姿に成長している。


《トーラ姫――……》

「な、泣くなよもう! トーラは――……トーラは、そういうの、悲しむと思うぜ?」


《冬椿》から、エルツは何を受け取ったのだろう? 俺だけじゃない。大事な主を失ったのは彼も同じだ。慌てて慰めの言葉を紡ぎ、涙を流すエルツに触れる。その肩へと触れられた。


(あれ?)


 以前はこんなにしっかりと、精霊に触れることが出来ただろうか? 彼に憑かれた時は、そこに凄い力や気配を感じることはあったが、物質的な意味合いで触覚を感じていたかは解らない。


「水や土の精霊は形を得る者もいる。火や風と違って掴みやすいものであるからな」

「なんか、エーさんの声前よりはっきり聞こえる気がする」

「触媒のおかげだろう。お前があの刀に触れることが出来たよう、我にも触れられると言うことだ」


 そもそも目の前にいる人は――……先ほどまで見ていたエルツじゃない。彼の涙が乾いた時に、彼の姿は変貌していた。


「えっと、つまり――……?」

「喰らった刀の姿でいてやる事もできるが、こうして人の姿を摸すことも可能だ。お前を守りやすくなった」

「で、でもさぁ! その姿は――……」


 綺麗な金髪、虎目石の瞳。トーラが残した痕跡か? 死んだはずの彼女の姿を摸して、エルツは顕現。


「さすがは我が姫! 我の姫はただでは死なぬ!!」


 どうしようこれ、どうしようこれ。この姿のエルツがいれば、第一島でなにかはったりとか凄い作戦を練ることができそうな気もする。でもそれ以前に。


(なんだよ、これ)


 今度、涙を流したのは俺の方だった。姿一つ、それだけで。こんなに心強いものなのか。

 俺なんかおまけなんだと思っていたのに。トーラの奴は本気で、俺の母親気取りをしてくれていたんだな。リフルさんと結ばれることがなくても、俺がふたりの傍にいるだけで――……血のつながりなんかなくても、俺たちは――……あの瞬間は、確かに家族だったんだ。少なくとも、俺にとっては。


「エー――……さん」


 ぎゅっと抱きしめられた感じは、完全にトーラそのもの。本当に彼女が帰ってきたのだと錯覚してしまいそうになる。


「エルツで良い。もはや他人ではないだろう?」

「どういうことだよ」

「我も姫の家族だからな!」

「あはは、なんだよそれ――……じゃ、俺たち兄弟みたいなもんか」

「無論、我が兄だ。敬うように」

「その姿で兄ちゃんかよ、いいけどさ」


 久しぶりに、本心から笑えた気がする。体の痛みも辛さも変わらないのにさ。

 彼女の笑顔を見ていると、なんとかなりそうな気がしてくるんだ。セネトレアの魔女、最高の数術使いの姿があれば。

8年ぶりの更新です。ずっと応援してくださった方、ありがとうございます。

自分なりの最高潮を書き切った後、落ち込む出来事が続き、二度とこの物語を誰かに教えることもなく、自分の中だけで完結させることにしようと思いました。


まず読んでくださる方を増やすため、別の作品を手がけたり執筆以外の活動で興味を持って頂こうとこの数年奮闘しておりました。

その甲斐あって……某所で最近またこのシリーズの感想を頂く機会があり、また続きを書くことができました。もしここまでたどり着いてくださった方がいたのなら、本当にありがとうございます。

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