29:ignem gladio scrutare
ヴァレスタの数式。鮮やかで大きくて、とても綺麗な数値配列。
「う、うあ、あああっああああああああ!」
「グライド様っ!?」
見える。見えすぎて、頭が痛い。流れ込んでくる情報量に、僕は堪えきれない。頭の中の枷が外れるような感覚に膝をつく。倒れ込む僕を、抱きしめるエリザさん。
強く抱きしめられた、その瞬間を僕は覚えている。正確には、僕の身体が。
「ごめんね。さようなら」
(え?)
妙な懐かしさ。遠くから女性の声がする。
気付けば僕は桜の咲く春の夜の中、呆然と立ち尽くす。明らかに低い視界に惑い、顔を上げれば女性が見える。
その人はもう、僕のことなんか覚えていないかも知れない。でも僕は覚えている。思い出した。あの日の僕はその人と離れることが、とても寂しかった。
お姉さん。そう呼んでも差し支えないほど若く幼いその娘。色に黒い深みはないが、艶やかで美しい茶色の髪。貴族よりは薄いけれど、鮮やかで綺麗な赤目。美しい人だった。あれは夢だったのだろうか?
「行くぞ」
そういう男の声もまだ若い。十代半ば位じゃないだろうか?
「はい、識様」
お姉さんは小さな赤子を胸に抱いていた。その子は黒い髪に赤い瞳を持っていた。父親の深さと母の色を継ぎ、見栄えのする形で生まれた僕の妹。お姉さんは、女の子を産めたんだ。だから正妻になれる。貴族のお嫁に行くんだ、僕を残して。
「しかしうちの娘が、貴族様の妻になれるなんて……いや、めでたいめでたい」
「しっ、他言無用と言ったはず。貴族の私が平民の娘を娶ったなど知れたら問題だ。その場合は一族郎党処刑することになるから心しろ」
「は、ははぁっ!勿論他言いたしません!」
「え、ええ!ええ!唯でさえこの村には捨てられた女が大勢いるんです!外に知れたら村八分ですよ!」
「これは家が食うに困って、奴隷商に売り飛ばしたことにでもいたしましょう!識様!」
「……まぁ、良い。後は任せた。顔は良いとは言え、本家にこのような色薄の子を連れ帰るわけにはいかん。識家の恥だ」
「……はい、識様。……お母さん、この子をよろしくお願いします」
「ああ、任せておきな!」
僕の肩をしっかり掴む女性は、お姉さんの母親なのだと言う。でも違う、この人は僕の祖母だ。隣にいる男は僕の祖父。娘が金に見えている、どうしようもない人間の屑。
「それで、養育費の方なんだが」
「それが成人するまでは仕送りをしてやる。それで良いだろう」
「いやぁ、助かりますよ識様。このご時世、我々も大変でねぇ」
金の亡者の反応に、男は眉をひそめる。続く言葉に自分たちも含まれていること、こいつら多分気付いていない。気付いたのはお姉さん……母さんだけだ。
「後で呪術師を向かわせる。記憶のつじつま合わせをしておこう」
「でも、識様っ!」
「これもお前を忘れた方が幸せだ。解るな?」
この男はお姉さんを好きだったんだな。だから一度目は女を産めなかったお姉さんの所に通い詰めて、今度は女の子を産ませたんだ。そうして正妻として連れ帰ることが叶った。
だけど僕は……父さんにとって、邪魔だったんだ。
そこまで解っていただろうか?解らない。でも寂しかったんだろう。涙を浮かべて俯く僕の髪……その男の人はポンと手を置き触れたのだ。
(あ……)
この感じ。ヴァレスタ様に似ている。子供を甘やかすことになれていない。腫れ物を扱うように、でも……不器用に、謝るように……大切だと伝える手。
(父さんっ!)(ヴァレスタ様っ!)
男があの人に、女があのゴミに重なる。追いかけたい。追いかけたいのに動けない。駆け寄ろうとするのに、僕は誰かに押さえ付けられている。あの時も、この時も。
「さぁ、今日から私がお前の母さんだよ」
笑うその女の顔を、僕は恐ろしいと思った。優しいけれど目が笑っていない。僕を物のように見ている。その場を逃げだすように、僕の記憶は時を飛ぶ。
(あれ、ここは?)
ゴトゴトと揺れる馬車の中。僕は眠っていたらしい。それでもこれも夢なのだ。僕はそれを自覚する。だって直ぐ傍にあの人が座っている。僕よりずっと立派な色の黒髪、赤目の格好いい純血。僕の恩人、大切な人。
(ヴァレスタ、様)
これは何時の記憶?探ってみて直ぐに思い出した。
ヴァレスタ様は僕を庇ってくれたけど、僕が初めて人を殺したのはあの解体会場でなのだろう。それから僕は、仕事で敵を斬ることも多々あった。純血だって殺したよ。ヴァレスタ様に刃向かうならば。
あの人のためになれるのなら、どんな仕事も苦にはならない。殺した相手のことなんか、すぐに忘れるよ。後味の悪い殺し?そんなもの……ああ、あるな。それがこれ。僕がはっきりと記憶している……人殺しの記憶。
*
「逃がすなっ!そっちだ!」
それは一年半前の冬。東裏町での出来事だ。取引帰りの馬車の中、何かが僕らの前を横切った。それは何かを抱えた細身の人間。それを追う大勢の男達。
「グライド、先に戻っていろ」
「え?ヴァレスタ様?」
命令通り、僕は先に本部に戻ったが、なかなか帰らないあの人が心配になり……雪夜の街に飛び出した。
お戻りにならないのは、仕事が終わらないから。それならお力になりたい。
「ヴァレスタ様……」
夜の東裏町は静かだ。昼間の活気もない、だから……なんだか違う場所に来たように思える。実際僕は道に迷ってしまったのかもしれない。
それなら来た道を引き返そうかと振り返った僕は、通りに駆け込んできた者にぶつかる。痛い。それでも相手の方が重傷か。倒れ込んだその人に、すみませんと謝り手を差し伸べる。
(あ……)
それは金髪……細身の女だ。薄汚いその格好から、彼女が奴隷なのだと見て取れる。半年前の僕と同じ境遇の人。彼女が両腕に、庇うように抱いていたのは布きれ。いいや、違う。二人の赤子だ。
「タス、ケテ……」
片言のタロック語で彼女が両腕を僕に差し出す。差し出した手に、その子達を預けようと。
「あ、あの……」
その刹那、僕の中に無数の考えが巡っていた。元奴隷として彼女を助けたいと思う同情。ヴァレスタ様の指示を仰ぎたいという迷い。普通にここは助けるべきだろうという常識的厚意。だけどここはセネトレアということを思い出し、僕は咄嗟の判断を選べなかった。
「!?」
「手間取らせやがって」
「ふぅ、やっと追い着いた」
ぐらりと血に伏すその女。彼女は現れた何者かに、後ろから刺し殺されたのだ。
その衝撃で雪の上に投げ出される子供達。黒でも金でもない。暗がりの中でもその色は、異様に映った。
(混血だ)
おぎゃあおぎゃあと泣き叫ぶ、彼らの声。それは雪が冷たいから?それとも母が冷たいから?
死んだ女と同じよう、その泣き声は助けを求めているように思えた。母が恋しい。家が恋しい。帰りたい。そんな気持ちを僕は感じ取る。嗚呼、僕に似ているのはこっちだったのか。
「ん、そっちのガキは何だ」
「んんー……可愛い面だが、格好は男だな。この女に誑かされて、協力者になった男だろ」
「え、あの……僕は」
「じゃ、残りの仲間の場所を洗いざらい吐いて貰うか。こっちへ来いっ」
乱暴に掴まれた胸倉。それでも僕を引き寄せた男は、僕の襟を見て狼狽し出す。
「あああああああっ!そ、その歯車ピンは!」
「歯車?」
「馬鹿っ!お前知らないのか!?あれを持ってるのは東の主様の部下っ!gimmick様の幹部様々だよ!」
「ぎゃああああっ!す、すいませんでしたぁああああああああっ!」
「さ、流石は幹部様っ!子供だから甘い!舐められるっ!そう思わせる外見を生かして敵を誘き寄せるとは!」
「このガキを殺すところだったんですね!申し訳ありません!ささっ、どうぞ!」
「え?」
手柄を譲る。それが後の出世に繋がる。そんな風に思っているのか?手を揉む男は僕に剣を握らせ、赤子達の前へと追いやった。
「混血には死をっ!」
「混血には死をっ!」
僕を応援するように、二人の男はそう捲し立てる。その声に、他の追っ手も集まって……事情が知れ渡っている。どんどん増える殺せコールが響く中、僕の思考は煮詰まっていく。
混血を匿う純血も混血。純血至上主義者にとって、それは不文律。
僕は得物を持っている。それでもここに集まった人間全員を殺して、赤子を連れて逃げる力はない。そもそも義理もない。それにそうすれば、ヴァレスタ様に迷惑が掛かる。ヴァレスタ様に迷惑はかけられない。
(殺さなきゃ……)
弱肉強食。これは仕方のないことなんだ。だけど……こんな生まれて間もない子供を。身を守る統べも持たない者を一方的に殺すなんて。僕には考えられない。でも考えないと、僕も一緒に殺される。
自分を正当化する。それが生き延びると言うこと。生きると言うこと。浅ましい。そう思って震える手……なのにどうして?手を下ろせない。何もなかったことにして、納めることが何故出来ない?
「殺せっ!殺せっ!」
「殺せっ!殺せっ!」
「殺せっ!殺せっ!」
鳴りやまない死のコール。僕がこの街の一員となること。それを認められるための通過儀礼のようだ。それを拒んだら……
目に入ったのは、死んだ金髪の女。混血を庇う者も混血。
(僕は、僕はまだ死ねないっ!)
拾ってくれた養父さん、養母さんのためっ!僕を助けてくれたヴァレスタ様のためっ!僕はまだ、何の恩も返せていないっ!
(こんな所でっ、死ぬわけにはいかないんだっ!!)
……振り上げた手は止められなかった。僕は感情のままに振り下ろす。
転がる赤子の生首二つ。直視できずに逃げ帰る僕。見送るような大歓声に、静まりかえった街も何事かと人が溢れる。人混みを抜けた場所で、僕はようやく彼を見つけた。
「よくやった、グライド」
その言葉に僕は、これが偶然ではなく必然だったのだと気付く。ヴァレスタ様は、躊躇いを捨てるようにと僕に願った。主の面子のためならどんな境遇のどんな年齢、性別の人間でも迷わず殺せるようになれと。
ヴァレスタ様なら、もっと早く逃げた奴隷を見つけ、始末することが出来た。出来たのに、なさらなかった。
「ヴァレスタ……様」
「生かして捕らえる方が鮮度も良いし、解体も輸送も楽だ。だが、ああいう連中の前で渋って揉めるのも後々面倒なことになる。時折々の状況判断を忘れるな」
お前の判断は正しかったと褒められ頭を撫でられる。それだけで、あの人の手は僕の辛さを吸い取ってくれるみたいで、凭れ掛かってしまう。はっと我に返った僕は、咄嗟に身体を引き離し、謝罪の言葉を口にする。
「ご、ごめんなさい……っ!」
「……構わんさ」
「わっ!」
頭からすっぽり掛けられたコート。かなり大きい。それでも温かい。
「ヴァレスタ様……僕は」
約束を破りました。先に帰っていろと言われたのに、また引き返しました。でも貴方は僕を罰しない。代わりに頭を撫でてくれる。懐かしく、安心する心地よさで。
その優しさを僕は特別扱いなんだとその日は思った。僕は信頼されている。その信頼に応えたいと僕は思った。
それでもどうしてだろう。あの人を軽んじ、あの人を崇めない奴らの方が……あの人の心に触れているような気がしてならない。僕がそう感じるようになったのは、あの赤毛のゴミ。リゼカが来てからだ。
僕の方がずっと前からお仕えしていた!僕の方が信頼されているっ!大事な仕事を任されるっ!僕のお茶の方が美味しいって言ってくれるっ!
(でも)
こんな風に自分に言い聞かせること。それ自体が証明じゃないのか?
僕は僕があいつに負けていること。それに心の何処かで気付いている。現実から、目を逸らそうとしている。
(現実……現実)
目をカッと見開いて見据えた先にあった現実……僕の、あの人の……現実。
悔しいよ。許せないよ。
僕は何もかも捨てて貴方にお仕えしてきたはずだ。それなのに貴方は、どうして教えてくれなかったんですか?
(僕だって、僕だって……)
最初に……いや、後からだって。貴方の口から、奴が来る前に……教えて貰えれば。心を許して貰えれば、こんなに貴方を憎くは思わなかった。
でも、貴方は。どんなに僕に優しくしてくれても、本当を教えてくれなかった。
僕を貴方は信頼してくれていなかったのだ。どんなに尽くしても、意味がなかった。無駄だった。そう思うと辛いんだ。苦しいんだ。
僕はフォースを殺した。殺してでも……貴方が大切だと選んだのにっ!それなのにっ!
*
「グライド」
「え?な、何?」
「つまんないなら遊びに来るなよ。ぼーっとして」
フォースが目の前にいる。かなり幼い。見回せば周りには同じ村の子供達が。昔遊んだことがある子達だ。徐々に疎遠になった子らもいる。ああ、懐かしいな。
可哀相だと言われている子が居た。母親は貴族に遊ばれて、捨てられたんだって。みんな馬鹿にしていた。だけど僕はその子が放っておけなかった。みんな日が暮れ、帰路に就く。仲良く遊んでいても、帰って行くのは別の家。僕もあんまり気が進まない。家に蔓延る妙な違和感。それが気持ち悪くて嫌だった。
のろのろと歩く僕は、同じくらいゆっくり歩く子に気が付いた。
「あ、いけね!俺忘れ物しちまった!」
みんな先に帰ってくれよと笑って彼は去っていく。みんな彼の噂話をする。それで自分の境遇がマシだと安心したいから。
でも僕は嫌だった。何だかよくわからないけど、彼が馬鹿にされるのが嫌だった。
それを哀れみなんだと思っていた。可哀想な子を助けることで、自分が立派な人間であるように思いたかった。僕はそう言う偽善者なんだと思っていた。
「忘れ物。見つかった?」
追いかけた先、彼は一人で泣いている。彼が泣き止むのを待って、僕はそう話しかける。
「……なんで、そんなこと聞くんだよ?」
「僕は見つかった」
は?と目を瞬かせるその子を僕は指差して、見つけたと言って笑う。
「フォース、僕もまだ家に帰りたくないんだ。一緒に遊ぼうよ」
「……なんで?」
「知ってる?夜にしか捕れない虫がいる。夜にしか鳴かない鳥が居る。夜にしか咲かない花がある」
それなら帰りたくなくもなるだろう?僕がそう微笑めば、彼もふっと笑う。
勿論嘘だよ。嘘じゃないけどやっぱり嘘だ。彼もそれを解ってる。だけど嘘に甘えたい。誰だってそんな時がある。
(ああ、そうか)
彼を放っておけなかった理由。彼は僕に似て居るんだ。何かの歯車が違っていたら、僕らの境遇は逆だった。どちらも悲しいことには変わりないけど、僕は彼を大切に思うことで、自分を好きになりたかったんだ。
「それじゃあ、俺を殺したお前は何なんだ?」
「フォース!?」
目の前でフォースが笑う。あの頃の姿じゃない。成長した彼が、血まみれの彼が僕を睨んだ。
「俺達親友だろう?なのにお前は俺を裏切った!俺を殺したっ!」
「そ、それはっ!」
「互いの意思を尊重した?ああ、そうだ。だけどお前は裏切った!俺を殺してまで選んだ男を裏切った!」
「ち、違うっ!違うんだフォースっ!」
どうしてだ?まだ動けない。僕は何者かに抱き竦められている。フォースが得物を手にとって僕に殺意を向けるのに。
「は、離せっ!」
「グライド様」
耳元で、聞こえる声。優しい声。だけどあの人の物じゃない。ヴァレスタ様じゃない。
それが無性に悲しくて、僕の頬を涙が伝う。
僕が何を間違えた?僕が何をしたと言うんだ。その答えはある。僕は人殺しだ。僕は人殺しだ。
(“フォースが言っていた。混血だって人間だ。良い人も、悪い人もいる”)
悪いことなら、しただろう?お前は混血を、一杯殺したじゃないか。金で買えない信頼を、寵愛を……お前は他人の命で購っただろう?二年前の、何も知らない自分が語りかけてくる。
(黙れっ!黙れっ!黙れぇええええええっっ!!)
*
短く長いその数巡。数術に魅せられ、影響を受け意識が混乱した。今日は数術を使いすぎた。その無理が祟った。あのまま廃人になってもおかしくなかった。
それがふっと、突然思考が澄んでクリアになっていく。冷たい雨に打たれながら、グライドは思う。よく、戻って来れたものだと。
「ありがとう、エリザさん」
「いえ……」
彼女の数痲薬で、僕の脳内異常を沈静化させたのだろう。彼女が傍にいてくれて助かった。そう思ったのも束の間だ。
「如何なさいますかグライド様?」
彼女は僕に聞いてくる。僕が錯乱している間に集まった配下達を代表するように。このまま沈黙することは許されない。僕の襟には歯車が。保証された東裏町での地位。その裏に潜む責任。
長であるあの男が混血だった。これは酷い裏切りだ。それを僕が知っていて仕えていたのか。知らずに騙されていたのか。先の戦いを知らない者からすれば僕も疑わしく映る。エリザさんは聞いているのだ。逃げますか?それとも……と。
「混血は……」
殺人鬼Suitとその仲間、ロセッタ。埃沙、リゼカ、変態領主。それに……ヴァレスタ。僕はこの国に来てから、大勢の混血を見てきた。
騙されていた。裏切られた。その悔しさを、許せるか?
(否っ!)
僕は僕なりに、一生懸命生きて来た。誰かを守ることで、自分の意味を見出そうとした。
だけどフォースを捨ててまで僕が選んで仕えた人は、混血だった。あの憎き混血!汚らわしい混血っ!ヴァレスタ様が混血だった!これがどうして許せるだろう。
考えることで浪費する時間。激情は僅かに引いて、冷静により残酷に物事を考えられるようになる。その間、エリザさんは僕に話しかけたりしない。唯その青い瞳で僕をじっと見ているだけ。答えは僕の内側にある。それに僕が気付けずにいる。その目はそう教えるようだ。
彼女がヴァレスタを助けようとした理由。彼女の口から僕は聞いた。それが僕のためなんだって。僕はあいつを失えないからなんだって。
(わからない……解るわけがないっ!)
認めたくない。解りたくない。どうしてこんなにあの男が憎いのか。それはそれはそれはそれは……それだけ僕があの男を大切に思っていた。今だって、思っているからなんだって、僕は気付きたくなどない!
「混血は……っ、混血はっ!皆殺しだっ!」
信じていた者に裏切られた僕は、何を信じればいい?
変えられた価値観、認識。それを今更変えることなんか出来ない。
(ヴァレスタ……)
貴方が僕を、こんな風にしたんだ。してしまったんだ。混血を憎み、混血を殺し、喜ぶような最低な人間にっ、貴方がっ!
天に掲げた剣。睨み付けた上空。その目の端に、何かが見える。その気配、空間を歪めるようなその数値。
(嗚呼、化け物めっ!)
グライド回。
最初はアルタニア公アーヌルスの実子がグライドっていうのがプロットで立ててた設定でした。でもそこはカルノッフェルさんの台頭により変わり……
フォースもグライドも父親が貴族っていう設定はあった。グライドスペードカードだし、出生考えたらこんな感じかなぁ。洛叉がフィルツァー君に9章でセクハラ的に絡んでいたのは、昔の知り合いを思い出してなのか?