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14:Nihil difficile amanti.

※死に回警報

 心を頭を空っぽに。何も考えないようにする。しがらみは全て捨てた。今の私には何もない。リフルは暗い塔の中、棺の内側……無に帰るための眠りに入る。身体がとても軽い。心地良い気分とは言えないが、胸のつかえが取れたよう。これまで自分の背中には見えない羽でもあったのだろうか。しがらみという名の羽が一枚一枚。それを脱ぎ去り収まる棺はとても冷たく心地良い。

 死の誘惑は甘い花の香り。空舞う鳥は天高く、羽が抜け落ちてもまた生まれ変わる。だが虫は生まれたときの羽のまま。そのままそこで死んでいく。新しい羽が生えることはない。一度きりの生。身体の何処かが壊れれば、それが死へと繋がっていく。人にもきっと鳥と虫があるのだ。私は所詮虫側の人間で、そんな地を這う私の所為で、空飛ぶ鳥が墜とされた。それは忌むべき事だろう。本来虫を食うのが鳥だろう。あの男はもっと高く明るい場所へ飛んでいける人間なのに、土塊の中埋もれた私なんかを気に掛け、空飛ぶことも覚束なくなり野蛮で醜悪極まりない凡俗なる腐れ愚民共に討ち取られた。

 何度あいつに諫められても殺人衝動が収まらない。どうして殺したくない相手がカードになる?全てのカードが彼を死追いやった悪人共なら、どうしようもない人間ばかりなら全員血祭りに上げても構わない。そうして彼を生き返らせて、その罪のために彼に殺して貰うのだ。けれど意気地のない私は彼のためにこれまでの未練達を殺すことが出来ないのだ。だからこうして、捨てていくことしかできない。だから彼への未練を諦めるしかないのだ。二度と彼の声も聞けない。真っ直ぐな眼差しも知れない。戯れにからかいながら、そっと触れることも叶わない。


 「……何故だろう、眠れないな」


 記憶の中、最期の夢か。甦る未練の遠吠えだ。“Suitっ!”と彼が私を呼ぶ。その呼び方一つで、それが何時のことだったか思い出す。

 痛みはない。それは痛覚がまだ麻痺していた時分の話。我が身を襲ったのは、言うなれば衝撃だ。鉛玉が身体を貫通するその速度に私は倒れ、その場に跪く。撃たれたのだと気が付いたのは、思うように動かない身体に触れてみて。

 いつものような軽口の押収。けれど私は何を言ったのか。突然彼の逆鱗に触れたのだ。それが彼の過去……トラウマから来る物だと後に理解はしたけれど。

 あの日は感じられない痛みより、酷く脅えるあの男の視線に心が震えた。撃たれた私よりも撃った彼の男が動揺している。今にも泣き出しそうなその弱さと優しさに、私は魅せられた。唯の偽善者ではない。あの男は本当に、口にした綺麗事を信じ、叶えようとしていたのだ。何て馬鹿な男だ。笑いが込み上げてくるほど愚か。それでも、それでも……嫌いだとは思えない。それどころかいっそ……。

 何はともあれあの日から、確かに死んでいた、死んでいたはずの私が生の意味を取り戻した。死ぬためにこの男に殺されるために私は生まれ、罪を犯してきたのだと盲目なまでに信じた。その時が今か今か。彼に会う度胸は高鳴る。くだらない。私は恋を知ったばかりの小娘か。そんな風に自身を揶揄してしまうほど、私は歓喜していた。

 孤独の内にあっても孤独ではない。追って来てくれるあいつが居る。それは喜びだった。

 だけど今……耳を澄ませてみても、もう私を追う足音も、鎧の音も、あいつの声も聞こえるはずもない。


(……結局お前の一人勝ちだったな、ラハイア)


 リフルは棺桶の中苦笑い。

 私は負けた。お前の正義を覆すことは出来なかった。人間は世界は醜く醜悪だ。それでも確かに美しい心を持つ人はいる。お前がそれだ。お前を失ったこの世界など、本当に醜いだけの場所。お前は世界が美しいと言ったが違う。世界は美しかった。今はもう取り返しが付かないほどに醜く穢れている。

 あの男を死なせる世界なんて、死んで消えて無くなればいい。悲しいまでの正しさが、痛いほどの優しさが……誰も殺さなかったあいつが勝てない世界など、いっそ滅ぶべきなのだ。

 行き着く果ては別の所。死んでも恐らく彼には会えない。悲しいな。寂しいな。二度と叱ってもくれないのか。あの綺麗事も理想論も私の耳を悦ばせない。嗚呼、それでもお嬢様には会えるだろう。彼女はきっと浮気者の私を怒るだろうな。けれど死ねば人殺しから個人に戻れるのかもしれない。もう何の責任も咎められない。唯彼女の我が儘に付き合うのも悪くはないだろう。昔はそれが何よりの幸せだったんだから。

 下りろ、下りろ、幕よ下りろ。さっさと私を無に帰せ。死んでしまえ、死んでしまえ。二度とこの眼が開かぬように。


 *


 「ヴァレスタっ!」


 突然頭に流れるイメージは、自分に扮した何者かが背後から主を刺す姿。フォースの引き起こした地震を精霊クレプシドラの数術でなんとか免れたエルムだが、その直後にその映像を頭の中に流されて、瓦礫の中を無我夢中で走り出す。


 《ご覧の通り、リゼカ君。君のご主人様は絶体絶命。彼を助けたければすぐに東裏町までおいで?早く来ないと大変なことになっちゃうよ?》


 何者か。その正体は判明した。頭の中から聞こえる声は、あの第五島からの客。オルクスという男。奴はもう僕の姿を模す気もないのか、いつもの金髪姿になっていた。

 何故だ。何故ここで裏切った?ヴァレスタの目まで欲しくなったとでも言うのか!?いや、そもそもあの男は先程まで此方に居やしなかったか?空間転移?それにしたって辻褄が合わない。それじゃああれは何?解らないことだらけ。この映像だってもしかしたら嘘?いやこれは本当だ。僕が間違うはずがない。この半年の間、僕はずっとあの男の傍にいたんだ。些細な評定の変化、苦痛に呻く息遣いの一つにだって、あの人が本物だと見て取れる。


(ヴァレスタ……)


 だけどあの人はそうじゃない。僕を選んでくれた人は、僕が僕でないことにも気付かなかった。僕を見つけてくれる人は、僕が見えていなかった。それだけの動揺があの人を襲ったのだろうとは解る。けれど僕はその動揺の原因に劣る存在だと知らしめられたようなもの。走るエルムの頬を涙が流れた。


 《ああ、来なくても良いよ?立ち止まっても良いんだよ?そうすれば先にグライド君がここに来る。さぁ、空を見上げてご覧?素晴らしい暗雲だね。きっとまもなく雨が降る。さっきの地震と流水の数術で発生した元素が作った雨雲だ!あれにちょっと手を加えて風を吹かせてあげるだけで、この街は面白いことになるよ》


 オルクスの脅し通り、見上げた空は灰色の雲が東に運ばれて……怪しげな雲行きになる。

 姉さんとフォースさんの数術、それに生じた元素を瞬時に都合の良いよう変換したのだこの男は!


(駄目だ……雨はいけないっ!)


 ヴァレスタの髪は染色してある。しかし元の見事な銀髪は、どんな色でも染められない。黒髪を装うあいつの染料は、水に触れるだけで元の色をすぐに現す。雨なんか降られたら、あいつはあんな危ない東裏町に放り込まれた混血だ!正体が明るみに出れば、あいつは東での立場を、最悪命も失ってしまう。


(ヴァレスタ……僕は)


 今更立ち止まれない。貴方が僕を何とも思っていないのだとしても、……俺にはもうお前しか居ないんだ。殺した。殺してやった。ディジットを、僕が。俺が殺した。俺が帰る所はもう、お前以外に無いじゃないか。


 *


 「ヴァレスタ異母兄さん、惨めだね。ねぇ今どんな気分?」


 俺を嘲笑うは死神の声。


 「大騒ぎも出来ない。時間もない。そして使える駒もない」


 刺されて未だ倒れぬ俺に問いかける。何故跪かぬのかと。何故抗うのかと。

 そんなもの問われるまでもない。俺が王だからだと俺が奴を嘲笑う。嗤わせるなよと嘲りの笑みを注いでやった。それで屈する奴ではないが、俺の行動を理解出来ぬのか不可思議な面持ちのままに見つめる。これが最後だと思うと僅かに心残りなのだろう。


 「戦えるのは貴方だけ。貴方の目は僕には効かないよ。一度死んだ人間が、生きた人間を恐れるわけがないじゃない」


 「兄さんには数術が扱えるんだよね。さぁ、でも見てご覧よ。まもなくここに雨が降る。そうなれば貴方のその美しい銀髪が現れる。人目に付く前に逃げて隠れなきゃならないのに、ここで目立つ数術まで使って僕とやり合う気?」


 そうだ。割に合わない。この男をここで殺したところで、これはオルクスではないのだ。その身体はオルクスに乗っ取られた他人に過ぎぬ。半年前のセネトレア王、その影武者事件の真相がこれだ。何処でこんなものを見つけたか、作り出したか。オルクスは王にこの洗脳憑依数術を献上した。自分の肉体を安全圏へと隠した後、精神のみを他人の元へ送り込む、いわば生き霊の類。

 エルフェンバインの保護を城が行わなかったのには訳がある。詳細も知らされぬままgimmickはその始末を任された。故にしばらく泳がせた。奴が数多の命を犠牲に捧げ発明した気で居る憑依数術は、既にそれを上回る式が存在した。しかし邪道の式とはいえそんなモノが外に溢れては堪らない。或いは本当にその式の一部にエルフェンバインが触れてしまったか?そうだ。それを知る者は自分一人だけで良い。そんな考えの下、それは執り行われた。


 「最後に聞かせろ。貴様は何時父上と和解した?」


 オルクス……セネトレア王子フェネストラはかつての第一次混血狩りの最中、ライトバウアーにて討ち取られたと史実では語られる。だからこそ双子の妹チェネレント姫はトーラなぞと名乗り、城と敵対する道を選んだ。

 不貞不貞しくもそれでも半ば諦めたような言葉。口にすれば相手に僅かの好きと余裕が生まれる。


 「……混血って言うのは面白いものでね、異母兄さん。片割れを失えば残された片割れの力が増幅される。これは事実だ。だけど誤りが一つある」

 「誤り、だと?」

 「実際に死ななくても良いんだよ。チェネレントは僕が死んだと思った。それを疑わなかった。だからセネトレアの魔女と呼ばれるまでの先読みの力を手に入れた」


 ならばオルクス自身はどうなのか。目で聞いてやれば奴は小さく笑い空を見上げる。


 「本来あそこで死ぬのは僕の妹だった。だけどその未来が変わった。僕は預言の身代わりになるが如く、生死の境を彷徨った」


 一度墓に埋められる恐怖を知っているかいと奴が俺に問いかける。棺桶と土の冷たさを貴方は知っているのかと。そうして地の底から這い出して、涙を流したことは在るのかと。愛しい者に忘れられ、再び心を土に埋められる夜をご存知か。そう問いかける男の僅かに哀愁漂う姿。死神を名乗ったのはこの男の自虐で皮肉だったのだろうか。


 「下らんな」

 「あはは、そう言わないでよ異母兄さん。僕は貴方と違って弟や妹を愛する心はないよ」

 「だからこそ下らんな。女の一人や二人、片割れに寝取られた位で何を世迷いことを」

 「僕からすれば哀れなのは貴方ですけどねぇ、異母兄さん」


 嘲りには嘲りを返し、尚も死神を騙る男は嗤った。


 「トーラは万能でも全知全能でもない。神の審判に触れることが出来るのは神だけだ。だからあの子はこの審判に隠された僕の未来を知ることが出来ない。僕がカード候補になったのはあの子が仮初めの未来を見た後だからね。神様なんて奴らは全能の力をもって後出しジャンケンだって余裕でかますクソ野郎共さ」


 数術使いなどあまりに下らない。見えぬ者が見えてしまうがあまり、運命などを神と呼ぶ。目に見える数値を否定し続けた俺にとってはそれはまやかし。この男の宣う幻想の類など俺は決して信じない。数字に否定され続けてもここまで俺は抗った。今となっては辺りに浮かぶ数字の読み方意味、示す世界と概念すら忘れた。計算式など金勘定さえ出来ればよい。


 「なるほど、あの男も我が子には甘いと見える。亡骸をわざわざ墓に埋めてやるとはな」

 「自分の子でもないのに有能可愛いって裏組織を任された人に褒められてもなぁ」

 「つまり貴様は仮死のまま墓から這い出し……いや、それでは計算が合わんな。さては貴様……さっさとあの男の前で死んでみて、傀儡を用いて自らを助けさせたか」


 わざとセネトレア王自身に手を汚させて罪悪感を煽る。その後、けろりとした顔で便利な術を携えてさも許した顔で会いに行くのだ。多くの子を失ったあの男の心の隙を突いたのだ。なるほど和解もなるだろう。


 「……ご名答、そうだよ異母兄さん。この憑依数術は僕が死に直面して生み出した。殺されかけた僕が他の身体を乗り継いで、回復数術を使って自分を治したり戦ったりしたんだ。ライトバウアーに住む子供達はみんな僕が手懐けてたからね、予め洗脳支配下においていたようなもの。そのお陰で命拾いしたけどね」

 「……なるほどな」


 ならばこの場でこの俺を傀儡とするのは不可能。憑依数術の標的とするまではかなりの時間を要するらしい。しかし見えてきたこともある。数術を使える人間に憑依することが出来たなら、凡人が数術使いになることも可能。これはエルフェンバインの件でも立証済みだ。問題は脳への負担をどうするかと言う点と、新たな身体の確保。オルクスの数式であれば、精神を分離し同時に並列処理で動かせる。この点は非常に大きい。父は、セネトレア王は別の場所で別の人間として生きながら、城の監視も行っていたのだ。


(先月、あの男がタロックで父上を殺したと言うが……)


 情報によれば、殺人鬼Suit……那由多王子がセネトレア王を暗殺したのは六月の頭。それさえ、本当に殺せているかは怪しいものだ。オルクスが憑依数術を伝授していたのなら……踊らされているのは刹那姫という可能性もある。


 「唯問題は僕が操れる身体のストックが切れた頃、敵も減ったり帰ったりで良かったんだけど、僕がもう勝手に父様に埋められてしまっていたってことだったんだよ。そこで借りてる身体が死んでしまって、僕は僕の所へ戻って……そっから這い出してくるのが本当に大変だったんだ。あんなのはもう懲り懲りだ」


 だから早くこの場を片付けたいってのが僕の本音だと、オルクスが微笑み躙り寄る。きょうだいのよしみもここまでだと、奴が俺の目を抉り出そうと手を伸ばす。迂闊に近寄るこの隙を俺は待っていた。ヴァレスタが抜き払った刀身に、膝をついたのはオルクス。掠ったとはいえ腹の一部は抉ってやった。残念ながら、これで終いだ。


 「割に合わない勘定をさせた罪、贖って貰うぞオルクス!」

 「へぇ、僕を殺したところで僕は死なないのに、僕とやり合うつもり?」

 「愚問だな。舐められて王が務まるか」


 まったく時は金なり、時間の無駄だ。無駄だった。


 「いや、一つ訂正しよう。この俺の貴重な時間を奪った罪、確かに償って貰ったぞ」

 「……何!?」

 「馬鹿が。那由多王子とやりあって、俺に何もなかったとでも思ったか?」


 あの男とやりあった者は覚える。そんな戦い方もあったのかと、戦いに毒を用いるようになる。だが剣に優れた俺にとって……時は金なりとは言え、毒の調達研究資金まで用いて毒を武器に使うだろうか?否。そう思うことを見越しての毒。


 「い、一体何時……貴方が、毒を」

 「俺が何の考えも無しにあんな化け物を抱くとでも?目の摘出に夢中だった貴様には知れぬ毒があったと言うことだ。あんな危険物に何の備えもなく触れる馬鹿があるか。貴様には効かぬ目が仇となったなオルクス」

 「この僕が、見落とした毒だって……!?……あっ!いや……そんな馬鹿な話が!」


 全ての毒を調べたはずだ。それを考え、自分と俺の違いを考え……オルクスは答えを導き出した。あるとするならそれは腸液毒。万全の装備で挑むことでその猛毒を得ることに成功した。それもオルクスに悟られずに、だ。


 「あれは奴隷としては調教が行き届いているらしいな。余程腕の良い奴隷商に教育されたんだろうさ」

 「彼はあんな状況で、兄さんを殺しに掛かっていたって言うのかい!?」


 信じられないと叫くオルクス。何が信じられないというのか。この俺に謀反を起こそうとした時点でお前の敗北は決まっていたと言うのに。ヴァレスタは狼狽える死神を嘲笑う。

 俺の目は那由多王子のような力はない。いや、昔は多少はあったかもしれんが今はない。あれはこの銀髪と瞳の色と毒の力が合わさってこそあそこまでのものが生まれる。奴もこの目を多少使いこなし他者を恐怖で動けなくさせる程度は出来るようになったが、俺はその先を行く。成長し、鋭さを増した俺の瞳は他者を恐怖させ動けなくさせるだけではない。その目で睨み続けた者を弱みさえ握っていれば思い通りに動かせる。リィナがそれだ。言葉や数術など使わずともある程度の意思の疎通が可能。それはこの男の裏を掻くのに良い一手。


 「リィナが何故ロイルから目を離したと思う?」


 弟と妹にくれてやった休日は今日から。よってリィナは夜遅くまで酷使したに決まっている。相手が前回以上の毒塗れ危険物とあれば流石の俺も時折拷問にも休みが入る。気を失いそうになるあれのために度々拷問道具を取りに行く必要もあった。その間リィナに毒の数種類と得物を預けた。長年俺の意を汲むことで生き延びた愚妹。視線一つで解る命令もある。俺の剣に毒を纏わせるように音を発せず命じ、剣が戻されたのはシャワーの後だ。脱衣場に服と共に立てかけられていた。リィナは毒の扱いに掛けてはそこそこだ。案の定、上手くいったらしい。

 勿論オルクスの短剣にも毒は塗ってあった。此方の動きを封じる毒だ。激しく動けば動くほど毒が良く回る、だからこそ俺を愚かとオルクスは言いかけたのだ。しかし馬鹿はお前だ。


 「俺は既に、あの男の毒を食らっている。生半可な毒では俺の動きを封じられんさ」


 半年前に一度、俺は奴の最後の切り札屍毒に触れている。何故俺は倒れないのだと問う死神に、俺はきょうだいのよしみで答えてやったが、果たして聞こえていたかどうか。仮初めの身体は死んだのか視覚数術すらも解けていた。

 空は暗いがまだ間に合う。しかし西に行くにはまだ足りない。ならば一度アジトに戻ることにしよう。グライドも心配だが、我が身もあってこその部下。元の身体か他の身体に戻ったオルクスが悪さをしないとも限らん。奴が俺を裏切ったのは確かなのだ、さっさと始末するに越したことはない。


 「ヴァレスタっ!」

 「っ!」


 不意に背後で子供の声。背中から俺に抱き付く生暖かい温もり。反射的に突き飛ばして振り向けば赤毛の少年がそこにいる。


 「また現れたかオルクス!」


 何度も同じ手を使うとは芸がない。手にした剣を掲げたところで、俺は妙な違和感を知る。


 「…………リゼカ?」


 いつもなら本物は、ここで何するんですか人格破綻者とか飛んできそうなものなのだが。だが、オルクスにしては……ああ、そうか。クレプシドラ、あの水の精霊を連れている。数値の意味は忘れたが、この半年で妙に見慣れた数値が確かに見える。これが本物だ。グライドのことで取り乱していたとは言え、こんな簡単なことにも気付かぬとは……


 「良かった……本当に、良かった」


 リゼカが笑う。ほっとして力が抜けたと言うように。突き飛ばされて尻餅をついたままボロボロと涙を零して俺を優しげに見る。何だこの眼は。こんな眼差しを向けられたことのない俺はその意味が分からず固まった。


 「拾い食いでもしたか、犬?」

 「こっちはあんたが心配でっ……そんな言い方するとか最低だっ!」


 悪い物でも食べたのかと遠巻きに問いかければ、桜色の瞳を釣り上げ噛み付いた。それが一も通りでほっと安心する自分が居る。いや、おかしいな。これは主に対する態度が足りないということで拷問部屋でいたぶる必要がある。あるのだが……今はそれどころではない。いやそれ以前に今何か妙な言葉が聞こえた。


 「心配?」


 何とも奇妙で恩擬せがましい言葉。それが俺とこの少年の関係、間柄に似付かわしくない表現であることか。


 「……貴様、西にいたにしては」


 そうだ。駆けつけるのが早すぎる。じっとリゼカを見つめれば、その周りに膨大な数式の残り香が見える。


 「空間、転移……だと?」


 この少年は回復補助特化型。埃沙と違い迫害の過去を持たないこれは空間転移を習得していないはず。それが何故、今になって……?


 「見せて下さい」


 水の数式で清潔な水を取りだし消毒、解毒。更にはオルクスに刺された傷を温かな光の数式が包んで癒す。命令する間もなく、奴は自主的に俺に仕える。不思議なのが、終止奴が穏やかな笑みを浮かべていると言うこと。こうして俺に仕えることが心の底から、至上の喜びであると言わんばかりの至福の笑みだ。他の者も同じように痛みや恐怖で従えようとしたことはあったが、この少年以外はこうはならなかった。どういう心境の変化か。以前にも増して俺への忠誠心が増している。


(これは……俺の身を案じて、空間転移をマスターしたか)


 本来自分の身の危険の際に覚えるはずの数術を、主の危機に習得するとは。それは即ちこの少年にとって自身の身の危険より、この俺の身の危険の方が心に響く事柄だったと言うこと。俺の今までは何一つ間違っては居なかったと、肯定されたような温かさ。

 ふと緩む口元に浮かんだ笑み。今日初めて。或いは暫くぶりの……俺にとっての微笑だったかも知れない。


 「リゼカ」

 「はい」


 その笑みのまま、そっと赤い髪へと触れてやる。見ているこちらの胸が張り裂けそうになる、奇妙な笑みで奴は俺を見上げて来た。情報を手早く大量に取り出すには触れるのが一番だ。そう言い訳をして小さな肩を一度だけ抱き締めた。


 「……よく戻った」

 「………っ、はいっ!ヴァレスタ様っ!」


 忠実な俺の飼い犬は、さっと上着を脱いで雨よけに俺へと被せ、道を先導。そんな行動一つをとってもオルクスの演技には荒があった。この犬は後ろを歩くだけの犬ではない。危険を察知すればこうして盾となるべく剣となるべく俺の前へと出る犬だ。喉元で揺れる首輪の鎖の音さえ愛しげに、少年は微笑んでいた。


 *


 「ヴァレスタ異母兄さんに感謝、かな」


 目を開けたそこで、オルクスは己の失策に気付く。

 本体である身体が動かない。身動き一つ出来ないほどに縛られ拘束されている。それに留まらず毒を盛られ身体の自由を二重に奪われていた。これでは音声数術が使えない。普通に計算で展開しようにも、その妨害を成される。毒に麻痺まで食らった僕では展開スピードで妹に勝てない。

 そもそも妹は言葉を発していない。唇だけの動きで言葉を紡いでいる。僕の音声数式を警戒してだ。他人の紡いだ音さえも、支配下に置ける可能性を危惧して。


(チェネレントめ)


 オルクスは忌々しい気持ちを拭いきれずに心の中で舌打ちをする。後一歩と言うところでヴァレスタの瞳を逃した。こうなってはこれからの仕事がやりにくくなる。

 那由多王子は体液全てが猛毒。粗方調べた気ではいたが、直接手を出したあの男しか入手できない毒があったのは迂闊だった。妹が夢中になっている王子様はとんだ淫乱、とんだ化け物だったわけだ。隙あらばそんなモノで毒殺を図っていたとは。


(あんな毒くらい、慌てずにいれば解析出来た。出来たのに)


 ヴァレスタという餌に釣られた隙を見逃さなかった。空になった肉体を人質に取るために、チェネレント……いや、セネトレアの魔女トーラは思い人である那由多王子ですら見殺しにしたのだ。脱走、潜伏をしていたのなら彼が両目を失う前に、救うことが出来たはず。それをしなかったのではなく、出来なかったと僕は解釈……そしてこの油断に繋がった。この女はその術を持ちながら、敢えて動かなかったのだ。邪眼によって生み出された好意であの王子様に惚れた以上、いつだって彼の身の安全を第一に考えるはず。それに抗ったのは、抗えたのは……


(本気で、あの男を……?)


 ならば尚更解らない。そこまで愛した男を犠牲にしてまで掴む勝利に意味があるのか?

 掌で踊らせたはずの妹の掌の上。今踊らされている僕には、妹の考えるところが何も解らない。それにそこまであの男に惚れているのなら、ベルジュロネットを僕に譲ってくれても良いじゃないか。何もかも手に入れようだなんてこの女は身勝手だ。


 「兄さん、僕はここにいる。それを選んだ。貴方を殺しに来た。それはリーちゃんの願いに背くことなんだ。リーちゃんは僕に殺させず、いつだって代わりに殺しに行ってくれたからね」


 彼を頼らず自ら手を汚す。それは那由多王子からの決別。別離を意味する。本気で妹は僕を殺すつもりなのだ。一組織の長としては甘いところがあると思っていただけに、それは僕を驚かせる。くそっ、こんな事なら西裏町でからかっていた赤髪の子ともっと接触しておけば良かった。空間転移をマスターするなんて。あの子を攻略しておけば、この場を脱することも出来たのに!せめて身動き一つ出来れば、音を発すれば数式は紡げる。しかし本当に指先一ミリたりとも動かない。こんなはずでは。悔しげな視線を向ければ、僅かに哀れむように僕を見る。せめて冥土の土産にどうぞとトーラは全ての種明かしを口にした。僕が幸福値全てを注ぎ込み願うことがあるのなら、その時間内に毒が抜けることを祈るくらい。それも寿命を費やすことだが、ここで死ぬしか道がないなら同じ事。流石にキング二人を同時に敵に回したのが痛手だったか。那由多王子の触媒の力に目が眩み、もう一つの片割れ殺しの触媒を欲した欲が敗因だった。それを悟っても解らないことは幾らでもある。


 「兄さんはアルムちゃんの前に現れた。彼女は数術の才能に恵まれすぎている。その反動で脳の成長が芳しくないけれど、数値を読み取る術は優秀だ。数値からリーちゃんの性別を一発で見抜けるくらいに」


 桜色の髪の混血少女。あの子を数術で騙すことは難しい。それはライトバウアーでの一件で知っている。だからまず精神状態を乱す必要があった。姉代わりである少女との別れで生じた不安と気負い。そのプレッシャーがこれまで読めたことを読めなくしてしまう。そして彼女は愚かだから僕の視覚数術には騙される。


 「よく言えばあの子は素直。だから疑い破ると言うことが難しい。それにベルちゃんセクハラとのストーキングを続けた兄さんだからこそ、ベルちゃんに化けることは出来た。彼女に違和感を与えることなく、ね」


 数術使いにとって、触れ合うこと抱き合うこと程情報量を読み取るに絶好の機会はない。衣類という邪魔な情報概念が取り払われ、その肌、その内側に直接触れて膨大な情報を得ることが出来るのだから。握手からでも情報を読み取ることが出来るのは余程優れた数術使いのみ。これも生まれ持った運であり、他の分野に優れていてもこの技が使えない者も多い。

 情報を奪われる側からの信頼関係があり、心に壁を作らずいられる関係のみ、このような消極的接触でも多くの情報を引き出すことが出来るが、一方的に情報を奪うやり方ならば、奪う側の技量……つまりはこの情報数術の能力が問われる。ベルジュロネットに嫌われている僕が完璧に彼女を演じるには、やましい接触が必要だった。勿論やましい気持ちなんてこれっぽっちも……ばっちりあるに決まっていたけれど。


(一体、どうして……?)


 妹の触媒である両目は奪った。そのどちらも僕が確保している。その目はどこから来たんだ。わからない。


(そうか、そういうことだったのか!)


 彼女の数術代償は、眠りなどではない。眠らざるを得ないだけだ。一気に使いすぎると消滅の危機がある恐ろしい数術代償。絡繰りに気付くことで見破った視覚数術。その先にいる妹は昔よりも更に幼い。だけどその幸福値はこれまでの比ではないほど大きい。妹は若返ることで、身体の時間を巻き戻す。つまり使えば使うほど……消滅の危機に瀕するほどに、幸福値は増していく。その代わりに身体能力は急激に低下。一発逆転の大博打というとんでもない数術代償。傍に後天性混血ばかりを置いたのはそのためだったのだ。


 「そう。兄さんの考えた通り、僕の数術代償は年齢。外見を数術で誤魔化して居るんじゃない。僕は数術を使えば使うほど若返る!寝なきゃ駄目っていうのはその分寝る子は育つでもう一回成長しなきゃいけないっていうか、若返った分眠くなるんだよね」


 此方の思考を全て読み取られている。垂れ流しだ。くそっ、迂闊に何も考えられない。いや、封じ手も駄目だ。情報数術は妹が特化している。僕は植え付けるのは得意でも引き出すのは苦手。他の身体に精神を飛ばそうにも近場に使えそうな駒が無い。その前に僕自身を殺されて、帰る場所を失ってしまう。


(だけど……)


 僕の命を幸福を燃やしても、今の妹の幸福値には及ばない。カードとしては僕の方が強いから、ベルジュロネットが止めを刺す形になるとは思うけど。その前に何とかならないだろうか?ここにいる二人にも洗脳数術は施していた。ベルジュロネットには第五島での一件以来何度も。妹には幼い頃に。どちらも洗脳の浅さと精神力の安定している今、完全に支配下に置くことは難しい。それでもどちらかに乗り移ることが出来ればこの状況を打開できる。問題はそのスイッチ。今それを発動させることが出来るかどうかと言うことだ。動け動け動けっ!ほんの少しで良いんだ!音さえ出れば!


 「兄さんとエルフェンバインの憑依数術には違いがある。兄さんも解っているよね?」


 脅すような笑顔で妹が言う。


 「エルフェンバイン博士の数術は、肉体を犠牲にして飛び移る式。だから自分の本体が死ぬのが前提。よって本体が死んでも精神は死なない。だけど兄さんの式は、違うよね?遠隔操作を行う頭脳はあくまで兄さんの脳。だから兄さんの脳が壊れたら、貴方の式は瓦解する。つまり僕が言いたいのはね、これで王手ってことなんだ」

 「………~~~~~~~~~~~~~~~がっ」


 時間稼ぎは成功、腹に力を込め口をすぼめて吐き出した唾。それさえ音だ。音声数術を発動……駄目だ!集中力が足りない!


 「っ!」


 反射的に反応するベルジュロネットから鳩尾に食らった一撃。それに僕は咽せ咳き込んで……


 「駄目だベルちゃんっ!」


 焦ったような妹の顔。今更止めてももう遅い。人殺しに馴れすぎたベルジュロネット。彼女は反射的にそれを行ってしまった。痛みで鮮明になる思考。紡がれていく音声数術!今度こそ完成だ!命の危機から抜け出して、ベルジュロネットの身体に乗り移った僕は、……そこで己の失策を知る。


(しまった!)


 ベルジュロネットは後天性混血児。何一つ、数術を扱えない身体!触媒の移植だって、僕が数術を使えなければ意味がない。元の身体に戻ろうとしても、それだって数術が使えなければ……愛した人の身体得ても、ここは出口のない迷路、決して開かない牢獄だ!


 「く、くそっ……!おまえ達……最初から、これをっ!」


 身体の自由が利かない。ベルジュロネットは脳を僕に乗っ取られてもその両手はギリギリと、自らの首を締め上げていく。おかしい!僕はこの身体を乗っ取った!幸福値が今まだ妹に負けているのだとしても、カードは今は僕が上!遙かに上!僕の分とベルジュロネットの分!それで大いに引き離した!それなのに何故勝機が見えない!?


(チェネレントはあの闇医者達と情報の共有はしていない!していないはず!)


 それなら知らないはずだ!この審判、上位カードでも下位カードを殺せることを知らないはずだ!それが可能であったとしても、禁止事項に触れることは怖い!犯せないはず!何故躊躇わない!?自分の願いを諦めていると言うことなのか!?あの男に全てを託して!?


 「さよなら、兄さん」


 妹が拘束された僕の本体に触れ、数術を展開させる。触れた場所から風化をさせる土の数式。身体の水分をみるみる吸い取って、身体を骸に変えていく。


 「あ、……ぁああああああっ!」


 身体が、脳が死んでいく!戻れないのに遠隔操作ができなくなって、本体からの痛みだけが此方に伝わってくる。


 「ぼ、僕が一体……何をしたっ!!」


 僕は何も悪くない!そうだ、そのはず!そうだろう!?僕はそんなに多くを求めたか?身の安全と愛する人。それから知的好奇心!混血である僕が混血を狙うことは、身の保証を証明すべきことがらに含まれるだろう!世の中には僕よりももっと悪い人間は大勢いる。何故今僕が殺されなければならないのだ!理不尽だ!嗚呼、理不尽だ!


 「チェネレント!お前は僕が求めた全てを持っている癖に!僕から僕の命をも奪うのか!?」


 僕からの略奪者。報いを与え切る前に、また僕らの関係は反転。僕がお前から奪ったんじゃない!お前が僕から奪ったから!だから僕はそうしたんだ!僕の行いが罪だというのなら、それはお前が生んだ罪に他ならない!そうだ!そうだろチェネレント!


 「お前さえ……お前さえいなければ、僕は……」


 それは僕の足の指からサラサラと上へ上へと登っていって……両目だけを残して僕を土に変えていく。妹の手に両目を覆い隠され握られて、何も見えない。何も見えない。ベルジュロネットの目で見ているはずなのに。


 「……僕の預言、外れちゃったね」


 でも、それで良いんだ。そう妹が呟いて……パンと何かが破裂する音。カラカラに渇いた身体。その中で骨が軋んで折れた音。僕が壊れていく音だ。その音に、僕の終わりに少し満足したように、妹が笑った気がした。それが最後。それが最期……やがて何も聞こえなくなる。何も考えられなくなった。


 *


 「お疲れ様、ベルちゃん……」


 トーラはほっと息を吐き、尚も首を絞め続ける配下に向かって語りかける。オルクスが死んだ今、憑依数術は瓦解した。洗脳から脱した彼女は意識を取り戻すはず。これから多少の無茶が出来るように、その触媒眼を奪うことも出来た。これでみんなを助けに行ける。全ては計算通り……、いや……?どうして彼女は動かない?呼びかけに応じない?膝をついたまま、唯僕を眺めているのは何故?


 「ベルちゃん……?」


 脈はある。まだ心臓が動いている。だけど数値がどんどん消えていく。何かがおかしい。何度呼んでも友は意識を取り戻さない。虚ろな瞳で自らの首から手を離さない。


 「……うっ、……うぁああああっ」


 トーラは泣きながらその場に蹲る。オルクスは数術を使えない彼女の身体で数術を使おうとした。それは、彼女の脳を殺してしまった。凡人が数術を扱おうとすればどうなるか。良くて廃人、悪くて脳死。人工呼吸をし続ける?数術でなんとか心臓を動かす式を練る?駄目だ。駄目だ。駄目だ……彼女の手からカードは消えていない。こんな状態で居ても必ず誰かに殺される。


(ここにハルちゃんがいたのなら、代わりに手を汚してくれた。リーちゃんでもきっとそう)


 僕は今、彼女を救うために……ルールに背いて彼女を殺さなければならない。物心つく以前より、傍にいてくれた彼女を。僕が今、この手で……

 どんなやり方が良い?数術で?それとも毒で?


(駄目だ……)


 これまで傍にいてくれた彼女に報いるためにも僕は、もっと彼女に直接触れるようなやり方でその命を奪わなければならない。離れない彼女の手。そこに僕の両手を重ねる。退化した小さな身体。思い切り力を込めてもまだ足りない。彼女の心臓が止まるまで、ずっとこうして彼女の首を絞め続ける。最後まで、最期まで、その温もりに触れながら。彼女の脈がそして温度が消えていくのを眺めている。泣きながら、目を逸らさずに僕は見つめる。


 「ベルちゃん……」


 紅葉のような赤い瞳がとても綺麗だった。それはもう私を見てはいないけど、私はずっと見つめていた。その目の色と同じ紅葉の秋。二人でそれを見ることはもう無い。その赤が私の目に強く焼き付くようにと、爪を立てて彼女の首を絞める。私の指先にその色が染みこんでしまえばいい。そうすれば、そうすれば……私は貴女を忘れない。

 彼女の首を絞めること。それは自分の首を絞めるようだ。苦しくて息が出来ない。それは手を離した後も、変わらず私を苦しめる。早く他の仲間の手助けに向かわなければならないのに。動揺した私の心を静めてくれる人はもう、誰も傍にいてくれないのだ。

オルクスと鶸紅葉ベルジュロネットの相打ち回。

死神の名前通り、思い人を攫って行ったオルクスによって脳死になる鶸紅葉、鶸紅葉の止めを刺すことになるトーラ。


エルムがデレ全開。奇跡的に重なるヴァレスタのデレ期。それってもしかして死亡フラグげほんごふん。

敵も味方も死に祭りとは言え、群衆劇。思い入れはそれぞれにそれなりにある分、胸が痛みます。

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