ギャンブラー殺人事件
ええ、毎週日曜日午後2時更新の「古今東西気楽ノ進め」を連載中のものです。
今回、古畑任三郎を見た後に、なんだか推理物を書きたくなって投稿しました。
フリーライターA「場口さん、金の用意は出来たの?」
場口「・・・・・」
フリーライターA「まったくねえ、あの一世一代の賭けで大勝ちしたあんたにとっちゃ、こんなのたいした額でもないだろうよ。まっ、そのお陰で俺もだいぶ儲けさせてもらっけるけど。まあ、一杯呑みな。」
場口「これで、いったい何回目だ?」
フリーライターA「さあ、何回目だろうね。まあ、かなり儲けさせてもらってる事は、確かだけど。」
場口「いい加減にしないと、訴えるぞ。」
フリーライターA「訴える?それは大変だ。でもね、場口さん。あんたは現に何回も俺に金を払ってるんだ。仮に、俺が臭い飯を食う様になったとしたら、そのときはあんたも道連れだ。なんなら、今すぐ新聞社に電話してもいいんだぜ。15年前のあの事。こっちは証拠をつかんでるんだ。」
場口「・・・・・」
フリーライターA「おや、なんだこれ空か。確か、まだ棚にウイスキーが・・・」
グサッ
フリーライターA「うっ。」
場口「・・・・・」
翌日
夜田≪よた≫巡査「警部、まだ来ないの?」
鑑識 金水≪かねみず≫「まだみたいですね。」
夜田「なんだよおお、また寄り道かよおお。」
時葉≪ときば≫警部「誰が寄り道だって?」
夜田「けっ警部。いつから居たんですか?」
時葉「そんなことより聞き捨てならないね。なんだ、寄り道とは?私はただ、コンビ二によって、明日の朝ごはんと時計の電池を買いにいって、45分だけ遅くなっただけじゃないか。」
夜田「十分寄り道で、しかもだいぶ遅刻じゃないですか。」
時葉「そんなことより、遺体の状況は?」
夜田「えー、被害者はフリーライターの男で、死亡推定時刻は昨日の夜の10時ごろと思われます。今朝になって、朝から電気が点いてるのを不審に思った、新聞配達員が鍵の開いていた部屋に入り、死体が発見されました。」
時葉「ずいぶん、部屋が血だらけだね。いい、部屋なのにもったいない。」
夜田「致命傷は、おそらくアイスピックで刺されたものだと思われます。
被害者が、あそこの棚のウイスキーをとろうとしたときに、後ろから刺されたようです。また、金目の物が無くなっているところから、おそらく、鍵の開いていた部屋に、強盗が入り隙を突いて彼を殺したものと思われます。」
時葉「本当に、強盗だったの?知り合いじゃないの?」
夜田「どうして、そう思うんですか?」
時葉「だってほら、酒のグラス2つ用意されてるよ。まさか強盗が呑んだわけじゃないだろうし、誰かが来てたんだよ。」
夜田「でも、これだったらグラスが2つ用意されてるだけじゃないですか、後から誰かが来る予定だったかも知れないですよ。」
時葉「でも、遺体を発見したのは、新聞配達員なんだろ、誰か来る予定だったら、後から来たその知り合いが遺体を発見してるはずだ。」
夜田「なるほど。」
時葉「被害者の周辺よく当たってみて。」
舐泣競馬場
場口「・・・・・」
時葉「あのー、場口さんでいらっしゃいますか?」
場口「あなたは?」
時葉「私≪わたくし≫、時葉と申します。警察のものです。」
場口「なにか、御用ですか?」
時葉「あなた、この写真の方のお知り合いですね。」
場口「ええ、彼がどうかしましたか?」
時葉「ええ、お気を確かに持ってください。実は彼亡くなりました。何者かに殺されたようで・・・」
場口「そうですか・・・まだ若いのに可愛そうに・・・ でっ、どうして私のところへ?」
時葉「実はですね、近所の方からあなたと彼がよく近所で、お食事などをなされていたそうで、何でも料金はいつもあなたが払ってなさった様で・・・」
場口「まあ、私のほうがかなり年上ですから。」
時葉「どのようなきっかけで、あんな年の離れた方とお知り合いに?」
場口「今だから、正直に申し上げますが・・・」
時葉「なんですか?」
場口「死んだ人のことを悪くいうことになりそうですが、まあ、長くなりますが私のことについて話させてもらってよろしいですか?」
時葉「構いませんよ。」
場口「かつて、私はある小さな会社の社長でした、しかしあるとき、どうにもならないような大穴が、帳面に開いてしまったんです。」
時葉「なるほど。」
場口「今は、まあこういう趣味ですから、大穴なんてありがたい言葉ですが、あの時は大変でした。しかし、そんな時思ってもみないような話が舞い込んだんです。」
時葉「どの様な?」
場口「ほとんど、大博打みたいな仕事でした。しかし、奇跡的に大成功して倒産どころか、いまや少し余裕があるような暮らしができるようになりました。今は隠居して趣味で、競馬なんぞしております。まあ、あのときがきっかけで、今の自分があるわけです。」
時葉「いい話です。」
場口「問題はそこからです。」
時葉「と、おっしゃいますと?」
場口「実は、亡くなったフリーライターの彼が、あの大博打みたいな、仕事のときにイカサマをしたといってきたんです。どこをどうしたか、知りませんが、証拠があるんだと。」
時葉「で、どうされました?」
場口「根も葉もない話でしたが、会社の信用にも関わりますので、下手に裁判なども起こせず、情けない話ですがご機嫌取りに食事をおごったりしていました。」
時葉「なるほど、よく分かりました。」
場口「そろそろ、馬券を買わなきゃな。じゃあ、これで。」
時葉「おや、こういうのって事前に買われてるものじゃ、ないんですか?」
場口「まあ、そういう人もいるみたいですが、私はその場で状況を見て買うタイプなんで。すぐ買えるように、いつも申し込みようの紙と、愛用のボールペンは持ち歩いてるんです。」
時葉「なるほど、私にも一枚いただけますか?」
場口「どうぞ、勝つと思う馬の番号を塗りつぶすんです。」
時葉「なるほど・・・じゃあ、こいつとこいつに。」
場口「時葉さん、それすごい大穴ですよ。当たったら、百円につき、70万円もらえるんですよ。悪いこと言いませんから、変えたほうが・・・負ける勝負はやらないほうが身のためです。」
時葉「そうですか、じゃあ700万円に期待して千円だけ賭けてみましょう。」
場口「やめといたほうが・・・」
20分後
場口「させさせさせーーー。よし。」
時葉「・・・・・。ずいぶん興奮されてますね。競馬新聞くしゃくしゃですよ。」
場口「まあ、それが競馬の醍醐味ですから、それより大丈夫ですか?」
時葉「千円のことですか?仕事中ということですか?」
場口「どっちもですよ。」
時葉「じゃあ、そろそろ署に戻ります。」
夜田「時葉さん、どこ行ってたんですか。捜査会議始まりますよ。」
時葉「大丈夫だよ、捜査会議なんて出る必要ないよ。」
夜田「犯人、分かったんですか?」
時葉「ああ、あとは証拠だ。」
翌日 舐泣競馬場
時葉「やはり、今日もいらしましたね。」
場口「あなたもですか。今日は何か?」
時葉「いえ、今日はプライベートで。少し競馬を教えていただけますか?」
場口「あなた、ギャンブル向いてないからよしたほうがいいよ。」
時葉「そんなこと言わずに。」
場口「おっと、今日は混んでるな。ちょっと、あなた向こうのテーブルでやって。」
時葉「一枚、いただけますか。」
場口「自分の使いなさい。」
場口の友人「あれ、場口さんかい?どうだい調子は?」
場口「ああ、まあまあだね。」
場口の友人「どれどれ、何にしたんだ・・・2-4-5?しかも10万円?」
場口「なんだよ?」
場口の友人「いや、別に・・・じゃあ、そろそろ行くわ。」
時葉「ちょっと、あなた。」
場口の友人「はい?」
時葉「実は、わたしこういうものですが。」
場口の友人「けっ警察?」
時葉「つかぬ事をうかがいますが、場口さんのかけた馬って、そんなにおかしかったんですか?」
場口の友人「ああ、まともだったらあんな馬に10万もかけないよ。」
時葉「そうですか、分かりました。ご協力ありがとうございます。」
場口「・・・・・」
時葉「やはり、2-4-5ではなかったですね。」
場口「運がなかったんですよ。」
時葉「いえ、お友達に聞きましたよ。普通はかける馬ではないと。」
場口「大穴を狙ったんです。」
時葉「いえ、小さい会社からコツコツやってきた人が、あんな無謀な賭けに10万もつぎ込むと思えません。」
場口「なにがいいたいんですか?」
時葉「はっきり言います、あなた人を殺しましたね。」
場口「また、唐突なことを。証拠があるんですか?」
時葉「ええ、さっきあなたが書いた、マークシートを係の方に機械から出していただきました。あのレースに2-4-5を賭けるのは、の素人でも一人もいなかったんで楽でしたよ。」
場口「じゃあ、もう見られた訳ですね。」
時葉「ええ、あのマークシートの、10万円と最後の5のところに血痕が。遠くからでは分かりませんが、近くで見るとボールペンで書いたものとは違います。おそらく、あなたは私があなたを疑い始めたことを、気づいていたんですね。現場に証拠は残していないつもりでしたが、自信がなかった、しかし、今日あなたはマークシートに血痕を見つけてしまった、本当は早く捨てたかったんでしょうが、自分の指紋がついている貴重な手がかりを、自分のことを疑っている刑事が持ち帰ってしまうかもしれない、だからあなたはあんな無謀な賭けをしなければいけなかったんです。幸い、あなたの事を疑っている刑事は競馬にそう詳しくなかった、しかし運悪く友人に会って、無謀な賭けだったことを私に知られてしまったんです。」
場口「これは、参りましたね。」
時葉「動機はやはり・・・」
場口「ええ、奴が私のことをゆすっていたんです。いつから、気づいていたんですか?」
時葉「実は、あなたが脅迫されていたというのは、周りの人はうすうす気づいていたんです。聞き込みで、そのことを聞いてからもしやと思っていました。」
場口「それだけですか?」
時葉「いえ、確信を持ったのは、私が昨日大負けしたときです。」
場口「あのときのマークシートには、血痕はついてませんでしたよ。」
時葉「いえ、あのレースのときあなたは興奮して競馬新聞を握り締めましたね。あの時、ぐしゃぐしゃになった新聞の形が、アイスピックのグリップと同じへこみかたでした。」
場口「どの道負けだったんですね。」
時葉「いえ、今だから言いますが、現場にはあなたがいたという、手がかりは何一つ残っていませんでした、アイスピックもハンカチか何かで包みながら刺したんでしょう。だから、あの時、あなたがマークシートを捨てたとしても、持ち帰るつもりはありませんでした。もっと、違う方法で問い詰めるつもりでした。」
場口「あの、15年前の大博打と同じようになってしまいましたね。」
時葉「と、おっしゃるとやはり・・・」
場口「ええ、あのとき私は確かにイカサマをしました。しかし、今思うとあんなことしなくても、自分を信じていれば勝てたと思います。今回も・・・」
時葉「さあ、参りましょうか。」
ええ、何とか無事に書き終わりました。
始めて、推理物を書いたので、どっかで同じようなネタが使われているかも知れません。
感想お願いします、後、日曜午後2時更新の「古今東西気楽ノ進め」をお願いします。
短編なのに、かなり長くなりました。