雨の日は傷が疼く
雨の日になると傷が疼く。
別に厨二的な病に侵されてるわけではなく、事実、傷に痛みが走るのだ。
何年も前の傷。
自分でつけた手首と首の傷。
「だるい……」
気圧の変化の影響か、体がそもそも重く感じる。
しかし今日はバイトの日。
社会復帰を目指す身としてはこの程度では休んではいられない。
それに、
「あいつも来るだろうし」
平凡なあいつ。
私に向き合ってくれたあいつ。
毎朝コーヒーを買っていくあいつ。
ベッドから飛び起き、着替えて、メイクをして、髪を整える。
春だろうが夏だろうが、秋だろうが冬だろうが、私は一年中長袖タートルネック。
傷を隠す為。
上手くいかなかったことに対する怒りと諦めの証。
全ては暇を持て余した神様の所為。
なんて、そんな言い訳はもういらない。
今は少しずつ前を向けている。
一人じゃこうはなれなかった。
何も言わずとも寄り添ってくれた人がいたから、私は変わろうと思えた。
首の傷に手を当てる。
あいつには嫌なトラウマを植え付けてしまったと思う。
──チキチキチキ。
あるはずのない音が聞こえた気がした。
ただの文房具。
でもその刃には、赤い赤い血液が流れ滴る。
あぁ、頭が痛い。
昔の記憶が脳を占めるからか、それとも気圧の所為だろうか。
「痛み止め……」
飲んで行こう。
前向きになったり、過去に振り回されたり、我ながら忙しい。
さて、そろそろ行かないと。
玄関を開けて空を見上げる。
暗い雲から降り注ぐ雨。
でも頭をよぎるあいつの顔。
思わず口元が緩んだ。
あいつって誰だろうね。




