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雨の日は傷が疼く

掲載日:2026/08/11

 雨の日になると傷が疼く。

 別に厨二的な病に侵されてるわけではなく、事実、傷に痛みが走るのだ。

 何年も前の傷。

 自分でつけた手首と首の傷。


「だるい……」


 気圧の変化の影響か、体がそもそも重く感じる。

 しかし今日はバイトの日。

 社会復帰を目指す身としてはこの程度では休んではいられない。

 それに、


「あいつも来るだろうし」


 平凡なあいつ。

 私に向き合ってくれたあいつ。

 毎朝コーヒーを買っていくあいつ。


 ベッドから飛び起き、着替えて、メイクをして、髪を整える。

 春だろうが夏だろうが、秋だろうが冬だろうが、私は一年中長袖タートルネック。

 傷を隠す為。

 上手くいかなかったことに対する怒りと諦めの証。

 全ては暇を持て余した神様の所為。

 なんて、そんな言い訳はもういらない。

 今は少しずつ前を向けている。

 一人じゃこうはなれなかった。

 何も言わずとも寄り添ってくれた人がいたから、私は変わろうと思えた。

 首の傷に手を当てる。

 あいつには嫌なトラウマを植え付けてしまったと思う。


 ──チキチキチキ。


 あるはずのない音が聞こえた気がした。

 ただの文房具。

 でもその刃には、赤い赤い血液が流れ滴る。

 あぁ、頭が痛い。

 昔の記憶が脳を占めるからか、それとも気圧の所為だろうか。


「痛み止め……」


 飲んで行こう。

 前向きになったり、過去に振り回されたり、我ながら忙しい。

 さて、そろそろ行かないと。

 玄関を開けて空を見上げる。

 暗い雲から降り注ぐ雨。

 でも頭をよぎるあいつの顔。

 思わず口元が緩んだ。

あいつって誰だろうね。

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