第1話 転生、そして絶望
ある日、激務で過労死したサラリーマン・田中一郎は、目を覚ますと豪華なベッドの上にいた。
周りは大理石の柱と絢爛たるタペストリー。
どうやら中世ヨーロッパ風の王国に転生したらしい。
「陛下、宰相の後任が決まりましたか?」
そう言って現れた老侍従に、一郎は「陛下」と呼ばれた。
どうやらこの身体は、とある小国の王様、アルフォンス13世のものらしい。
王冠も戴いている。ラッキー!これで好きなだけ寝ていられる……と思った瞬間、記憶が流れ込んだ。
アルフォンス13世の一日
- 午前10時:起床
- 午前11時:朝食(3時間)
- 午後2時:昼寝
- 午後5時:軽食
- 午後6時:宴会の準備
- 午後7時~深夜:宴会
- 深夜:就寝
「……これ、完全にニートじゃないか!」
一郎が絶叫すると、侍従が冷静に言った。
「陛下、本日も宰相の仕事が山積みです。
先代宰相が急死したため、3日分の書類が未処理で……」
「宰相がいないなら、俺がやればいいじゃないか」
「いえ、陛下は『王たるもの細かい仕事はせぬ』とおっしゃっています」
その時、一郎は気づいた。
この王様、**完全に仕事をしない**。
しかも国は傾きかけている。
税収は減り、隣国からは脅威が迫り、民衆の不満は頂点に。
「……これはまずい」
元社畜の魂が騒ぎだした。
放っておけない。
でも王様自らが働きだしたら、宮廷中が大騒ぎになる。
その夜、一郎はひそかに執務室に潜入した。
机の上には書類の山。
予算案、農作物の報告、外交文書……全部、先代宰相のサイン待ち。
「ああ、これは……締め切りが昨日のものもある……!」
社畜DNAが爆発した。
一郎は知らずにペンを握り、深夜まで働き続けた。




