泣いてもいいですか
僕は何度も瞬きしながら、占い館に近づいた。
「いらっしゃい…」
先生は僕の顔を見て少し驚いた表情になった。
「ここに座って。今お茶入れますね」
彼女は僕に何も聞かず、温かい紅茶を淹れた。
「僕、彼女に振られたんです」
「三年付き合って、来月プロポーズしようと思ってたのに、もう好きじゃなくなったって」
先生は静かに頷いた。
「復縁出来るか占って欲しいです…」
「…なるほど」
彼女はタロットカードをすぐには並べなかった。
「ねえ」先生が口を開いた。
「本当にそれ知りたい?」
「え?」
「復縁できるかではなくて、この痛みが消えるかを知りたいんじゃない?」
僕は戸惑い言葉が出なかった。
彼女は目の前のタロットカードを1枚引いた。
「死神」
「え、最悪じゃないですか…」僕は視線を落とした。
「ううん」
「死神は終わりのカード。でも同時に始まりのカードでもある」
「始まりですか…」
「この痛みはいつか消える。そして新しい何かが始まる」
彼女は僕の目を見た。
涙が溢れてきた。
「泣いてもいいですか」
「もちろん」
先生はティッシュの箱を差し出してくれた。
僕は子供みたいに泣いた。気づいたら外は暗くなっていた。
「すみません、こんなに長く居て…」
「大丈夫」
彼女は笑った。
「占い館は、未来を見る場所でもあるけど、今を休むする場所でもあるから」
僕は心がホッとした。
痛みは消えていない。彼女への想いもまだある。
だけど少しだけ前を向けた気がした。
帰り際、タロットカードを渡してくれた。
「死神」のカード。
裏にメモが貼ってあった。
「終わりはいつでも始まり。また来てね」
僕は空を見上げた。星が、いつもより近くに見えた。
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