「ヤッホー!お待たせ!」
「ヤッホー!お待たせ!」
「おう。」
彼女はとても元気が良い。
そう。こんな俺にも彼女ができたのである。
「じゃあ行こうか。」
「うん!」
彼女の方から俺に腕を組んできた。とても積極的なアプローチである。とはいってもこの自分は、それに対して気にきいた対応を取る能力は無い。だいたいきちんとした形で、自分は異性と交際をしたことなど無いのであるから・・・。
だからこのデートも定番のコースである。この恋愛知識のない自分に、サプライズなど不可能なはなしなのであった。だからまずは無難なカフェに入ったのだ。
「ねえ。」
「うん?」
「ワタシの事好き?」
「ぶっ!?」
その彼女の唐突な発言に対して、俺は飲んでいた珈琲を吹いてしまった。
「あっはは!!そんなにビックリしなくても!」
「お、お前なあ・・・・。」
周りにテーブルの人達は、いかにも微笑ましそうな顔でこちらを見ていた。そんな雰囲気で自分を見て欲しくはない、と正直に思うのであった。それは目の前にいる彼女も含めてである。
何故なら・・・・。
===== この状況は俺が自力で勝ち取ったものではないのだから =====
そうなのだ。これを純粋に幸福と呼んで良いモノであろうか・・・。全てはお膳立てされていた。
===== 俺の親友に =====
・・・この彼女は俺が自力で作った関係では無い・・・。親友が間を取り持ってくれたのだ。
~~~~~ 話は遡る ~~~~~
俺と親友は大学の食堂で昼食を取っていた。
「最近太ったんじゃね?」
「あ、まあ・・・。」
彼から指摘を受けた俺は自分の脇腹を触った。簡単にその柔らかい肉を握れたしまう。要するになまっているのだ。無理もない。毎日、酒池肉林の生活を送っているのだから・・・。むしろ太らない方がおかしいぞ・・・。
だいたいこの諸悪の根源は目の前のお前ではないのか・・・。
そう思って俺は親友を睨みつけるように見やった・・・、うん、多分そんな表情に映っている事であろう。
そんな俺を見る彼の表情は、とても穏やかであった。これが余裕のある人間の態度と言うものなのだろうか。それから俺は気が付いてしまったのだ。態度・表情だけではなく、決定的に彼と自分には違う点があることを・・・。そして親友は言ったのだ。
「お前も始めるか?」
「・・・・うん。」
俺がすんなり二つ返事をしたのは、彼が何を言わんとしているのか理解したからである。
===== ガチャン ガチャン =====
その器具の可動域が奏でる汗臭い音が耳を触ってくる。
「ふう、ふう。」
日頃から運動不足の俺には、とてもきつかった。もっとも自分としては子供の頃から、定期的な運動の習慣は無かったのだが・・・。それにしてもこの若さで直ぐに息切れとは、我ながら体力の無さに呆れる次第である。
「でもよかったよ。お前がやる気を出してくれて。」
「うん、まあ。」
相変わらず自分は相槌を打つのみである。その時、俺は気が付いた。先ほどの大学の食堂でのやり取りは、親友が俺をここに誘うための布石だったのだ。
そう。ダブつい身体を引き締めるべく、この俺は親友が通っているというトレーニングジムに来ているのであった。久しぶりに身体を動かして息の切れた俺は、席を外して休憩を取ることにした。親友は体力がガンガンに有り余っているらしく、エアロバイクという走らない自転車のペダルを回し続けていた。それを横目に眺めながら、俺は自販機で買ったスポーツドリンクをゆっくりと飲んでいた。
「ん。」
今、自分が座っているベンチの傍に、全身をを映し出す姿鏡があった。
気が付くと俺は、その姿鏡の前に立っていた。
「・・・・これが俺・・・・。」
その姿を見た俺は、まさに愕然とした。明らかに自分の姿は劣化していた。
恐らく田舎にいる間は、その若さで体型を維持できていたのだと思われる。しかし大学での不規則で堕落した生活による、肉体の崩壊に歯止めをかける事ができなかったのだ。最早この自分は若者とは言えない・・・。生物学的には中年の部類に入るのではなかろうか・・・。勿論、爽やかな、おじさまなどではない・・・。脂ぎったおっさんだ・・・・。気持ち悪い・・・。多分、女子高生が見たらこう思うであろう・・・。
この俺はすっかりと都会の闇の飲まれてしまったである・・・。
「はあ。」
自分自身の現在位置を再確認した俺は、再びトレーニングを再開する事にした。
「はあ。」
ベンチプレスの前に立った瞬間、またしても溜息が洩れる。そりゃあそうだ。長年の運動不足の習慣など、一日で解消できるわけも無し。ハッキリ言ってしんどい・・・・。このまま俺はまた、怠惰な生活から脱出できないのだろうか・・・。しかし・・・・。
「こんにちは。」
「はい?」
===== 女神が現れた =====
気が付くと自分の傍には、タンクトップにスリットの入ったショートパンツの可愛らしい女性が立っていた。
その瞬間、俺の心臓の鼓動が活発になったことは言うまでもない・・・。
<続く>




