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良かった。私は生きてる。助かったんだ…。カトレアはほっと胸を撫で下ろし、ひとつの疑問が湧き出た。
「ねえ、クロは?えっと…私と一緒にいた子供なんだけど…その子のおかげで隠れ切ることができたの。お礼も言いたいし…あとその件でお父様にお話ししたいこともあるの」
話が本当ならば、おそらくクロも別の部屋で休んでるだろう。早く会いたい。ちょうど目的である父親もいる。例の話をするのに絶好のタイミングだ。カトレアはそう思った。
「…ああ、私も話があるんだ。カトレア…その彼のことは、屋敷の執事やメイドから話を聞いてるよ」
「……!そう、セバスとケイトが…。じゃあお父様…」
執事は期待できないが、メイドはまだ公平に事情を話してくれただろう。話が早くて助かる!とカトレアの表情が明るくなった。
「そう、そのことなんだがね…」
先ほどの饒舌さは嘘のようにまごつく父。奴隷というデリケートな話題だから仕方ない、とカトレアは納得して自ら説明に乗り出した。
「お父様。クロはね、今回の件で分かると思うけどとても頭が切れる子なのよ。きっとお父様にもみんなにも迷惑をかけない。最終的な判断はクロに任せようと思ってるけど、私は友人として彼を屋敷に迎え入れたいと思ってるわ」
カトレアの父は話せば分かる人だ。娘以上に好奇心が強く、探究心がある。お茶目な部分が目立つが、かなり頭も良く、大きな仕事を任され、この港町に滞在している。カトレアはそんな父親が大好きだ。
「……君の友人は、クロと言うんだね。彼は、騎士の皆様に引き渡したよ。……彼自身が引き渡しに了承した」
だから尊敬する父親が嘘を言うはずが、ない。