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気合いとは恐ろしいものだ。気のもちようか、あるいは脳の勘違いか、厄介な件もまれに気合いで乗り切れることがある。
カトレアの眠気も本人の頑張りのおかげで、今のところ効果は出ていないようだ。不幸中の幸いと言っていいだろう。
「じゃあ、私は夕飯を運ぶから、あんたは隣の部屋で隠れてな」
「……!」
ようやく動いた。バタバタと足音が聞こえる。
2人は顔を見合わせる。緊張感が走った。変な汗が流れたのは一体どちらが先だったろうか。
バタバタバタバタ
足音が止まった。部屋の前に女がいるのだろう。
「お待たせしました。夕飯ですよ~」
「…………」
もちろん返事をするものはいない。
「…あら?もしー?……寝たのかしらあ?」
「…………」
何の返事もないため、女が痺れを切らすのは時間の問題だった。
「…失礼しますねえ…………はあ?」
勢いよくドアが開いた音がする。同時に間抜けな声も聞こえた。
「……ガキが…消えた?!!!」
2人がいなくなったことについに悪人が気づく。クロとカトレアは飛び跳ねる心臓を必死に抑え、視線を交わす。ここからは一つの音でさえ出してはいけない。生死に関わるかくれんぼが、始まったのだ。