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3

ますます怪しい。何故普通の民宿で気配を消し、小さい声で会話をする必要がある。


クロの嫌な予感が的中しそうだ。しかし、まだ確証もない。こちらは世間知らずなお嬢様がついている。下手に動くのは良くない。


ふいに肩をトントンと叩かれ、クロは振り返った。カトレアはひっそり声で床を指した。


「私、ミステリー本を読んでいたから知ってるの。こういう時はね、床から脱出するといいって」


クロの考えが伝わったのだろうか。カトレアが大真面目な顔で提案したものだから、クロはギョッとした。


「…………」


「え、逃げるんでしょう?クロは、何か考えがあるのよね。私、それだけはなんとなくだけど分かるわ」


何の確証も得てないにも関わらず、自陣満々に言い切るカトレアにクロは、尻込みしながらも、口を開く。


「……床下は…汚いと思う」


「まあね。美しくはないわ。けど大丈夫、私、クロと一緒なら耐えられると思う」


「……」


迷ってる暇は、ない。


クロはカーペットをめくった。古い木造の床に四角い切れ目とくぼみがある。


「床下収納ってやつね。私の屋敷にはないけど、一般的な家庭にはあると本で見たことがあるわ」


カトレアは普段どのような本を読んでいるのだろうか。鋭い発言をすることもあれば、拍子抜けになるような馬鹿馬鹿しいことも言う。本人の持ち前の性格が大きいのかもしれないが、それらをかたち取る彼女の思考や生い立ちにクロは少しだけ興味が湧いた。残念ながら今は、会話を楽しむ時間はないが。


くぼみに手をかけ、床下収納の扉を開ける。中は物もなく、小さい空間だが子供2人くらいならどうにか入れるスペースがあった。


「なんてタイミングがいいの。ここに隠れましょう」


「…………」


「……クロ?…きゃっ」


クロはカトレアの腕を引く。思わず体勢を崩しそうになるカトレアをクロがすんでのところでキャッチした。


驚きのあまり声も出ないカトレアは顔を上げる。今まで見たこともない真剣な顔をした少年と目があった。


「……ごめん。……けど絶対」


守るから


クロの目は真剣だ。


「……うん」


カトレアは頷いて、クロに身を任せた。


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