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メイドに目配せするも、申し訳なさそうに肩を落とすだけ。屋敷の責任を任されてる執事と専属とはいえ一介のメイドでは立場があまりにも違う。さすがのカトレアも無理強いすることはできない。
「…お嬢様、まだお分かりいただけませんか。そこにいるゴミはゴミとして扱われて当然の存在です。奴隷を友人として迎え入れてるなんて…旦那様になんていえば良いのか…」
「……」
「はあ、まさか私の不在にこんな事態になってるなんて…。たまたま!私が偶然!帰ってきたからいいものを」
カトレアは、嘘おっしゃい、と思わず意見しそうになったが、何を言っても無駄なことを分かっていたので口を閉じた。ここまで早い到着からすると屋敷内の誰かから連絡があって来たに違いない。
「旦那様のためにも、お嬢様の教育のためにも私は心を鬼にしなければなりません」
目的は当然クロだ。
「…お父様にはまだ言ってないのね」
「もちろんです。旦那様が知る前に全て片付けようと急ぎで参ったのですから」
「別にお父様にお話ししても良かったのに。お父様は私の考えを汲み取ってくださるわ」
あんたみたいな頭の硬い変人と違ってね、と嫌味を込めてカトレアは目の前の男を睨んだ。
「ああ、お嬢様…そんなに穴が開くほど睨むなんて…このまま見つめられたら本当に穴が空いてしまいます。…しかし相手がお嬢様ならそれもそれで」
「執事様、流石に限度が…」
心底気持ち悪いセバスを腹心のメイドが静かにたしなめる。