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「また変な拾い物をしたんだね、ガキのお客様」
「ガキガキガキって…私は立派なレディよ!」
「父親のカードを使ってるうちは、あんたはまだガキさね。ねえ、お付きさん?」
「え?ええ…と、まあ…」
「ちょっと!納得してどうするのよ!」
とんだ茶番を見せられてる。クロはジロリと女店主を睨んだ。気分が悪い。女店主はカトレアを揶揄いつつも意識は確実にクロに向けていたからだ。
「そ、れ、に!変な拾い物なんかじゃないわよ。どう?綺麗な子でしょう?」
殺伐とした空気に気づいてない様子のカトレアは回り込んでクロの肩を掴んだ。まるで友人を紹介してるようだ。女店主は遠慮なくクロを舐め回すように見た。
「…確かに綺麗な髪と目をしてる。少しばかりコケているのが気になるが」
「これでも前よりは良くなったのよ。シェフが栄養満点料理を作ってるおかげね」
「ほうほう。甲斐甲斐しいねえ。ペットの世話を進んでやるなんて」
「……なんですって!」
失礼な物言いをする女店主にカトレアはついに怒り出す。女店主はケラケラと笑い出した。
「まあまあ怒んなさんなって。あんたの大事な友人の服は私が責任を持って作るからさ」
豪快にカトレアの頭を撫で回すこの女店主は何者なんだ、クロは疑問と警戒心が止まらない。お付きのメイドもやれやれと言った表情でため息をついている。どうやら珍しい光景ではないようだ。
「まずは、採寸だ。さてお嬢さんとお付きさんは外へ出な」
「なんで?私も残るわよ」
「あんたは本当にガキだね。レディを目指すなら少しは恥じらいをもちな」
またもや怒り出しそうになるカトレアをメイドがどうにかなだめて、2人は外へ退出することになった。
別れ間際、カトレアは機嫌の悪そうな少年に話しかける。
「クロ、あれでも腕は確かなの。絶対あなたに似合う服を作ってもらえると思うわ。少し辛抱してね。何かあったら大声を出すのよ」
「……」
クロがジロリとカトレアを睨んだ。しかしその目はかすかにだが、カトレアに助けを求めてるように揺れ動いてるように見えた。
「じゃあ、外にいるからね~、終わったら呼ぶのよ」
残念なことにクロの無言の訴えも虚しく、カトレアとメイドは扉の向こうへ消えてしまったのだが。