お嬢様と奴隷
美しいものが好きだ。
宝石も絵画も、綺麗なものは全部父親におねだりして手に入れた。
筋金入りのお嬢様カトレアは綺麗なものを愛でる至福の日々を暮らしている。
綺麗なものを手元に置けるならいくら払っても構わない。
そんな時だった。
綺麗な髪と目を持つ子供に出会ったのは。
とある立派なお屋敷の中にある一室にて。屋敷に仕えるメイドは神妙な面持ちで口を開いた。
「…カトレアお嬢様、今度は何を買ったのですか?」
メイドの視線の先には大きなソファにふんぞりかえるように座る少女の姿があった。ふわふわの黄金色の髪、桃色に染められた頬、華奢な身体をAラインのワンピースが包むその姿は一見愛らしい純真な少女そのものだ。しかし少女の顔は不敵に歪められていた。
「ど、れ、い、よ、奴隷。他の貴族から買ったのよ」
少女の名前はカトレア・タンザナイト。この屋敷の主人の一人娘である。
メイドは頭を抱えよろめいた。自分の仕えるお嬢様の口から聞き捨てならない言葉が飛び出たからだ。
「なんてことを…外国貿易で留守にしている旦那様になんて説明すれば…」
「お父様なら大丈夫よ。だって私の言うことはなーーんでも聞いてくれるんだもん!!」
少女は笑った。その天真爛漫な笑顔だけ見れば、ついなんでも許してしまいそうになるようが…騙されてはいけない。
「お父様からいただいたカードもあるし、私に買えないものないわ!」
カトレアは筋金入りのワガママお嬢様なのだから。