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赤髪の騎士シリーズ

赤髪の騎士は婚約破棄された令嬢を甘やかしたい.ep2

作者: もみじ山

見つけてくださりありがとうございます!

短編「赤髪の騎士は婚約破棄された令嬢の幸せを願う」が1000PVを超えました。有難うございます!

嬉しかったので続編を書いてみましたが、こちらの短編だけでも楽しめるように編成しております。

※最初の方はリオニダス目線ですが、途中からアシュリー目線になります。

オレはリオニダス。カーディナル王国の大公家の三男だ。

王国騎士団の副団長をしていたが、国内でゴタゴタがあった時に王都を出たまま、今は国境警備に参加している。


つい先日、第一王子の婚約者であるアシュリー嬢が、エルフ族のレオンハルト様と一緒に国境に来た。

なんでこの二人が一緒なんだとモヤモヤしたが、今はそれどころではない。


王国は悪魔の結界に覆われ、国民は洗脳状態にあるらしいことが判明したからだ。

アシュリー嬢が婚約破棄されたと言っていたが、それもこの結界の影響だろう。


洗脳されてるせい。

そうは分かっていても、腹が立つ。

子供の頃に殿下の婚約者に指名されたアシュリー嬢は、家族のいる辺境伯の領地を離れて遠い王都で頑張ってきたんだ。自由もほとんどなく、厳しい王子妃教育に嫌な顔もせず粛々と学び、公の場では穏やかな笑顔を絶やさず立場に相応しい振る舞いで称賛を得ていた。

責任感の強い彼女はいつも一生懸命だった。


それを婚約破棄だなんて、あんまりじゃないか。


なにやってんだよアイツ。

今度殿下に会ったら絶対に殴ってやる。




殿下の幼馴染だったオレは15歳まで殿下の側近候補としていつも一緒にいた。


殿下がアシュリー嬢に一目惚れして、婚約者にと望んで、3人でいることも増えて。

「おとなしいけれど芯の通った少女」というのが初めの印象だ。

健気に自分の責務を果たそうと頑張るアシュリー嬢を見ているのは少し複雑な気持ちだった。


アシュリー嬢には他に思いを寄せている人がいると気づいていた。

それはきっと、手の届かない相手。


国が決めた婚約という名の契約と、届かない思いと。


彼女はそんな気持ちに蓋をして自分の責務を果たそうと努力していた。


こんなことで全てを失うなんて、頑張ってきた彼女が報われないなんて許されない。



援軍を呼ぶためにエルフの谷に向かったレオンハルト様を見送るアシュリー嬢。

彼女の気持ちを慮れば、じっとしてなんかいられない。


殿下もレオンハルトも貴方の手を取らないというのならーー


せめて、貴方を守るのは自分でありたい。

初恋も婚約者も全て忘れるくらいの幸せを貴方に届けたい。

貴方がいつでも笑っていられるように、オレの全てをかけて守ると誓おう。





「ねぇアシュリー、子供の頃みたいにリオって呼んでよ?」





幼馴染のリオニダスが言った。

少し照れた顔をしながら、私に向けられた優しい声。

胸が小さく跳ねたのはきっと気のせい。


国境に辿り着いて、今は隣国でお世話になっているけれど、こちらに来てからは彼が全部手配をしてくれた。

相談があると言えば親身に話を聞いてくれるし、町へ出かけると言えば護衛をしてくれた。

私が不自由しないように気遣ってくれる、ひとつ年上のお兄さん。


こんなに親しく話しているのは数年ぶりで、懐かしい感覚に嬉しくなる。


「⋯⋯リオって呼んでいいの?」


思ったことを口にすれば、熱のこもったような瞳で微笑み返してくれた。


再びドキリとしたけれど、勘違いしてはいけないわ!


「そっそんな顔してもダメなんだから」

「そんな顔って?」

「私、知ってるんだから。女性との噂が絶えないって聞いたことあるもの」


今度は青ざめているわ。

やっぱり心当たりがあるのね。


「そりゃ確かに一緒に食事に行ったりしたよ⋯⋯でも、誓って手は出していない!」


焦ったように言い訳するけれど、そんなの信じられない。


「うそばっかり。複数の女性との噂を聞いたわよ」


落ち込んだように右手で顔を隠している。

後悔するくらいなら不特定多数と遊ばなければ良いのに。

リオは言い訳を諦めたのか、覚悟したような目でこちらを見つめた。


「実は⋯⋯その、ずっと忘れられない人がいて。だから気を紛らわすために他の女性と出かけたりした⋯⋯けど、相手を傷つけるようなことはしていないよ。本当だ」


「まぁ! リオったら好きな人がいたのね。私の知ってる方かしら? 協力できることがあればいつでも言ってね」


今度はしょんぼりした。

まるで耳のたれた大型犬のようだわ。

可愛いなんて言ったら怒るかしら?


殿下の幼馴染だったリオとは、子供の頃よく一緒に遊んだわ。

リオが騎士団に入ってからはあまり会えなくなってしまったけれど、またこうして話せて嬉しい。

王国を追い出されてどうしようと思ったけれどリオがいてくれたから安心できた。

優しくて、頼れるお兄さん。

リオには幸せになってほしい。


「リオが誰かを傷つけたりなんかしないのは私もちゃんと分かっているわよ」


笑顔で励ますと、リオは寂しそうにはにかんだ。




王国は今、呪いの結界のせいで混乱しているらしく、みんなが解呪のためにいろいろと動いている。


「ねぇリオ、私も何か手伝いたいのだけど」

「そうだな⋯⋯モニカ嬢と一緒に薬草摘みとか、解呪クッキーを作るのは?」

「薬草摘み! 子供の頃は領地の山を駆け回っていたんですもの、薬草摘みなら出来そうだわ。早速モニカ様のところに⋯⋯」

「ちょっと待って。その靴で山に行くのは危険だから山歩き用のものに履き替えた方がいい」


靴屋さんに寄って山歩き用の靴を選んでいると、リオが「他にも欲しい靴があればまとめて買っておこう」と言ってくれた。


「こっちのリボンが付いた靴もアシュリーに似合いそうだよ」

「ありがとう。あれ、そういえば支払いって⋯⋯」

「そんなのアシュリーは気にしなくていいんだよ」

「でも」

「今まで頑張ってきたんだ。自分へのご褒美だと思って受け取ってくれ」


リオは、王弟殿下である大公家のご三男。

王国騎士団の副団長として働いていたわけだし、たしかにお金はあるでしょうけど⋯⋯甘えてはいけない気がするわ。


「やっぱりダメよ、リオ」

「オレが贈りたいんだ。それともやはりドレスやアクセサリーの方が良いだろうか?」

「そんなの受け取れないわ!」


けっきょく断りきれなくて、山歩き用とは別に新しい靴を3足も買っていただいてしまった。

油断しているとリオが次々に買おうとするから頑張って断ったほうだと思う。




聖山の麓の薬草の群生地へ行けば、元聖女のモニカ様がひとりで採取していた。


「モニカ様、手伝いに来ましたわ」

「アシュリー様! こんな山の中に来たら服が汚れてしまいます!」

「大丈夫よ、ちゃんと汚れてもよいものに着替えてきたわ」

「本当にやるんですか?」

「辺境伯領の山で遊んで育ったのよ。まかせて!」


懐かしい土の感触。

木々の間を抜けてきた、心地よい風。

草木と土の、青の匂い。


気持ちいい〜⋯⋯


子供の頃に遊んだ山の景色を思い出しながら、夢中で薬草を摘み取っていた私は気づかなかった。

周囲を警戒していたリオが嬉しそうに私を見ていたなんて。




「ごめんなさい、上手く手伝えなくて」

「いいんですよ。ご令嬢は普通、料理なんてしませんものね。解呪クッキーを作るのは元々私の仕事です! アシュリー様はお茶でもしていてください」


拠点であるドバニー村の協会に戻ってきたは良いけれど、私には料理の才能が皆無のようでした。

粉を扱えば舞い上げて咳き込んでしまい、焼こうとすれば生焼けか焦げたものばかり。

こんなにもダメダメだなんて自分が情けないです⋯⋯


「アシュリー、スイーツを買ってきたんだ。一緒にお茶にしよう」

「リオ、でもクッキーはまだ出来ていないし」

「モニカ嬢もお茶をと言っていただろう。クッキーが焼けたら包むのを手伝えば良いさ」

「そう⋯⋯ですね。では、いただきます」

「この国は農産物が有名だからね。このフルーツタルトもとても美味しいよ」

「ありがとう」


「あと、アシュリーの好きだった紅茶も取り寄せておいたよ」

「えっそんな⋯⋯いつのまに」

「オレがアシュリーと一緒にこの紅茶を飲みたかったんだ」


頬に熱が集まって、なんて返したら良いのか分からない。

リオは誰にでもこんな風に気を使うのかもしれないけど、思わせぶりなのはいけないと思うの!


「アシュリー?」

「あっごめんなさい、何?」


クスリと笑ったリオは楽しそうに「呼んでみただけ」と言った。

私はなんだか恥ずかしくて少し俯いた。


心臓がうるさい。

どうしちゃったの私。

私は婚約破棄されたばかりなのよ、浮ついてる場合じゃないの。

先日だって憧れていたレオンハルト様と会えたけど平気なフリできたじゃない。

自分がこんなに移り気な性格だなんて知らなかったわ。



「アシュリー? 食べないの?」

「あ、うん。食べます」

「ん。じゃあ⋯⋯はい、あ〜ん」


リオが目の前にスプーンを差し出してきた。

食べようと思っていたフルーツタルト。

スプーンの上には、小さくカットされたフルーツとクリーム。


え?

ちょっと待って?

これを食べろというの?


え?


えっっ!?


今度は自分でもはっきりと分かるくらい、顔が熱い。

きっと真っ赤になっているわ。恥ずかしい⋯⋯!!



勝ち誇ったような顔をしたリオが嬉しそうに笑う。


「どう? 少しは意識してくれる気になった?」



私は耐えきれずに両手で顔を隠した。

これでからかっただけ、なんて言ったら許さないんだからねっ!

いつも読んでいただきありがとうございます!

少しでも面白いと思いましたら、ブクマ登録や評価、コメントなど頂けると嬉しいです。執筆の励みになりますのでよろしくお願いします。


☆リオとアシュリーがサブで登場する連載「精霊王子と漆黒の姫」もやっと2000PV。有難うございます!なかなかアクセスが伸びず亀のようなゆっくりペースですが、読み続けてくださってる方のためにも最後まで書ききりたいです。第四章スタートしましたのでこちらもよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n5138jp/


☆1000PV有難うございます! 評価とリアクション、ブックマークも沢山ありがとうございます!! 感謝を込めて続編を書きました。よろしければどうぞ。(2025.5.25)

「赤髪の騎士は婚約破棄された令嬢に求婚する」

https://ncode.syosetu.com/n4829kn/


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