▽世界廃墟の中で
‐―地球
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「ミクヤ。聞いたか?」
機関銃や爆弾を整理している明るい赤っぽい栗色の髪の色をした、ミディアムで七三に分けているレッドアイのミクヤと呼ばれた女が作業をしていた手を止めこちらに振り向いた。
「あまり覚えてない。カイトは?」
彼は紺色の髪の毛を風になびかせながら廃墟となったビルの屋上でうっすらと笑いながら言った。
「ああ…聞いた。なんでも世界で戦闘カーニバルっていうのがはじまるらしい」
「へぇ。まあ地球がこんな風になって、しまいには怪物、キルギタンやファックンドたちがいる中に…更に人間の殺し合いだなんてね」
地球も終わったもんだね、とミクヤは寂しそうに呟いた。
俺はそんなミクヤの肩をそっと抱き寄せて何も言わずにただただ夕日が沈む風景を眺めていた。
「カイト」
急に呼ばれて驚いた表情な俺を余所にミクヤはそのまま言った。
「私達、まだ21なのにこんなことって…夢みたいよね」
大人びた声で、低く、唸るように言うミクヤ。
俺にはそれが最初理解出来なかった。
しかし良く考えてみたらそれはいま起きている出来事に対して夢みたいと言っているのだと悟った。
「だな…」
そう呟くと、ミクヤは少し強張った表情になったがすぐに緩め、俺の肩に項垂れた。
「俺らは、生まれてくる時代を間違えただけだ」
「うん…そうだね」
優しく微笑むミクヤを見て俺はほっとした。
するといきなり人間たちの罵声が聞こえてきた。こんな時間に何が起こったと言うんだ…?
「逃げろー!殺されるー!」
「…え?」
ミクヤが顔をしかめた。俺もまた顔をしかめ、そして急いで双眼鏡を手に取りビルの屋上から下の方を見た。
そこにはおぞましい光景が広がっていた。
人々が自分たちが知らない新たな怪物たちに襲われていた。
体型がティラノサウルスで身体の回りには骨の甲羅や角みたいなものが生えていた。
俺とミクヤは急いで機関銃を手に取り、その怪物、二体に向かって放った。
『グゥオッ!!』
見事に怪物の頭部にクリーンヒットした。
「よし!」
「…あ!」
俺は思わず声をあげた。驚いた様子でこちらを振り向くミクヤ。
「どうかしたの?」
「あの怪物の頭部…見てみろ」
俺はその怪物の頭部に向かって指をさした。
「あの怪物の頭部…?」
ミクヤは双眼鏡を俺から取って見た。
怪物の頭部の中を見たのか、ミクヤは真っ青な表情をしていた。
「も…ももんが…?」
そう。一頭の怪物の頭部の中に一匹のたくさんの装備を纏ったももんががいたのだ。
「…やべ…笑えるけれど笑えないな」
苦笑いをしながら俺は小型スクーターにのって地上に降りることにした。
「私は見張ってるからね」
「ああ」
そう言って俺はすぐに地上に降りていく。
地上に降りたとたん今まで逃げていた人間たちがこちらに気づくとすぐに攻撃してきた。
何故だ?
助けたのにいきなり…
ああ…
そうか…
もう始まってしまっていたんだ。
恐怖のカーニバルが。