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聖剣に選ばれた男

今から1000年前。

人間にとっては人生の何十倍もの年月であり、獣人や虫人、魔法使いにとっては人生の2倍肌の年月であり、まだ聖剣使いも生まれていなくて、ドラゴンや竜人や竜神にとってはすぎる年月の一環に過ぎない。

 

人からすれば途方も無く長くて、人では無いものからすれば呆気なく短い。

 

そんな1000年も昔の伝承に記されている、伝説の聖剣の話をしよう。

 

 

昔々、一匹の"赤く染まった"ドラゴンがこの世に生を受ける事になった。

生後2日と足らずに、口から暗煙のブレスを吐き出し、自分より遥かに強大な生物を殺す力を持っていたらしい。

 

そのドラゴンは母親、父親、祖父、祖母、友達、赤の"他竜"、ありとあらゆるドラゴンを殺して回ったとされている。

 

そして、その赤に染まった体はどんどんと成長し続け巨大化していき、鋭すぎる牙と爪を携えて、同胞意外にも視野を向けて亜人や人間を殺して殺して殺して、50年以上が経過していた。

 

その時点で、そのドラゴンは邪悪なる暗黒で世界を闇に、恐怖に染めていった。

許しをこう時間すら無く、姿すら見えずに殺された者達は何百人と規模が肥大していき、人々は恐怖に飲み込まれてしまう。

 

そんな世界が滅びてしまう様な、あまりにも強大な被害を齎すドラゴンを恐れ、各地方の守護者であった精霊達が自身らを剣に宿し、四人の人間の手によってドラゴンを剣に封印した。

 

それから幾つもの年月が流れて、一人の男の手に渡ったその紫色の聖剣は、全てを支配しようとする邪悪な心を持つ"悪人"しか選ばない、と噂が広がっていった。

 

それこそが、人々に災いをもたらし、世界を暗黒で染め上げて、所持者の身すら滅ぼしてしまう暗黒の剣。

 

「邪王剣暗黒」が生まれたのである。

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「クローズ様、貴方様はこの邪王剣暗黒によって選ばれました。これからはどうぞご自由に」

 

「えっと……ありがとうございます…?」

 

 

クローズは棺から取り出した聖剣を目の前にして、あまりにもあっさりしていた為少し困惑しながら司会者へ感謝の念を伝えた。

手に持った聖剣、邪王剣暗黒はドクドクと心臓の様に鼓動を発している。

まるで、今聖剣のグリップを握っているクローズの事を待っていたかと言わんばかりに脈動し、歓喜の様にも思えてしまう。

 

 

「おぉぉ……聖剣だぁ……!」

 

 

子供が新しいおもちゃを買ってもらったかに思えるクローズを、司会者は"何故か"安心した様な瞳で見つめる。

そして、他の参加者、他の聖剣に選ばれた者たちは"邪王剣暗黒に選ばれてしまったクローズを奇怪な物を見る様に驚いている"。

 

少しの間、クローズが目を輝かせて聖剣を見つめていると、流石にこれだけ多くの視線を向けられている事からか、漸く辺りの異質な雰囲気に気づきグルグルと見まわした。

 

またしても、何も知らない愚かな男は何が何だか分からない為、困惑の表情で辺りの様子を伺うことしかできない。

 

 

『"あれ"に選ばれて喜んでる……』

 

『とびきり邪悪な奴なんじゃ無いか…?』

 

『でも、あいつ目がすげぇキラキラしてるぜ?』

 

『バカ。あんなの見せかけに決まってるだろ!』

 

 

クローズが予想していた反応は、聖剣に選ばれた自分を祝福する声や羨ましがる声、はたや自分が選ばれなかった事の恨み言などだったのだが、その予想に反して辺りの声は"聖剣に選ばれてしまった奴"は極悪だ、と言う伝承を知らぬクローズからすれば訳の分からない事の連続であった。

 

 

「ぇ……な、何が……ねぇ!あの君も聖剣使「その子に近寄るな邪悪め!」……うぇ?」

 

 

自分一人では何も分からない為、同じか聖剣に選ばれた"仲間"に話しかけるクローズであったが、レーツェルに声をかけた所をバーニによって遮られてしまった。

邪悪とは何のことだろうか、自分が声をかけた少女も怯えているのは何故だろうか。

一つ、また一つと疑問が重ねられて行く現状に、クローズの不安は大きくなるばかりである。

 

 

「あの司会者さん……これって何なんですか……!」

 

 

それは邪王剣の事だろうか、それともこの現状に対する疑問だろうか。

どちらにしろ、今のクローズには司会者に尋ねる他なかった。

 

 

「落ち着いて下さい。」

 

「落ち着ける訳が無いでしょ!何が起こってるんですか!これは何なんですか!何で俺が邪悪って!」

 

「落ち着いて下さい。」

 

「いや…だから!……な、何だあんたら!」

 

 

何を尋ねても落ち着け、としか言わない司会者に憤りを感じたクローズは、怒りに身を任せて司会者に掴み掛かろうとした所を周りの騎士に取り押さえられる。

そして、騎士に引き摺られる様に会場を後にしようとするクローズに司会者は口を開いた。

 

 

「クローズ様、貴方には国の、世界のお尋ね者になってもらいました。」

 

「これから先、その聖剣で貴方が何をするかを、私は楽しみにしております。」

 

 

何もわからぬまま、邪王剣と共に少年は引きずられ会場を追い出されるのであった。

 

 

 

 

しかし、少年は予期していなかった。

 

追い出されのは、会場だけで無い事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪王剣暗黒、ずっと私の手にあって不安でしたが……彼を選んでくれて本当に良かった」

 

「さて、彼は邪悪となるか……それとも正義を貫き聖なる戦士となるか……楽しみですねぇ」

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