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鹿踊りの魂

岩手の山深い村で、鹿踊りの伝統は近代化の波にのまれ、忘れ去られようとしていた。最後の名手である老人・鹿造は、村に工場を建てようと計画する有力者から、古い伝統は発展の邪魔だと公然と非難されていた。


ある夜、鹿造の夢に現れた白い鹿は、秋祭りで最後の舞を奉納しなければ村は魂を失い、災いに見舞われるだろうと告げた。それは、彼の命と引き換えの儀式であることも。


鹿造は、近代化と伝統の共存を願いながらも、村が精神的な支柱を失うことを恐れ、その運命を受け入れた。


秋祭りの日、鹿造が一人で舞い始めると、有力者たちは彼を嘲笑した。しかし、彼の舞が真に迫るにつれ、空はにわかにかき曇り、風が吹き荒れ始めた。自然が、鹿造の舞に呼応しているかのようだった。


やがて、鹿造の周りに先祖たちの霊が光となって現れ、共に舞い始めた。その中には、工場建設を推進していた有力者自身の祖父の姿もあった。彼は愕然とし、自らの過ちに気づいた。


村人たちが心を一つにして祈りを捧げた瞬間、鹿造の体は眩い光となって天に昇り、巨大な白い鹿の姿となって村を見下ろした。その光が村中に降り注ぐと、嵐は静まり、清々しい空気が満ちた。


鹿造の犠牲は、村人たちの精神的な回心によって初めて意味を持った。翌年、村では工場建設の計画は白紙に戻され、若者たちが鹿踊りを学び始めた。近代的な便利さだけでなく、守るべき伝統があることを、村人たちは鹿造の魂から教わったのだ。

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