表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ghost actor  作者: aqri
ghost actor 4 晴海とハルミ
52/59

6 きょうだい

 なんで。本当になんでだろう。普通に会社員として働けばいいのに、フリーランスでもいいのに。わざわざ相手の要望に合わせて明るいキャラや根暗なキャラを演じ分ける必要なんてない。


「それも特に理由は無いけど。強いて言うなら」


 は、と乾いた笑いが漏れる。本当にどうしようもないな俺は。


「他にな~んも、やることないだろ。逆に聞くけど、なんかある? 教えてくれよ、なあ」


 今の俺の姿は流星にどう映ったんだろう。とりあえず不愉快だったのは確かだ、憎々しげに顔を歪めている。


「六年前日本を出てこうしてまた戻ってきて普通に生活してる。そのことに何の不満もないわけなんだけど。お前らが余計なちょっかい入れてくるからやり返しただけだよ。俺が悪者みたいになってるけど、先に喧嘩売ってきたの誰だっけ」

「お前が戻ってきたせいで何もかも滅茶苦茶だ。あのオヤジは何が何でもお前を手に入れるって言って聞かねえし」

「お前よりも役にたつからな」

「晴海のクソ野郎と同じようなこと言うのやめろ! なんなんだよお前、偉そうに気持ち悪いんだよ! べたべたべたべたいつも晴海と一緒にいて、崇拝者みたいにそっくりあいつに言われたことをそのままやりやがる! 思考停止野郎でウゼエ!」

「偉そうなんじゃなくて実際偉い、少なくともお前よりはな。言われたことを忠実にできるって優秀な証拠だろ? 才能が足りてないのに自分流にアレンジして自爆かましてる馬鹿に言われる筋合いはないなあ。お前、自分が優秀なつもりなの? こんな有様なのに」


 俺の声のトーンが低くなった。普通にしゃべったつもりだったけど自然とそうなった。

 東風晴海という化け物にペットや奴隷以下の生き方をさせられたくせに、二人ともまだアホらしいくらいに執着して。忘れて幸せに生きることだってできるのに、その選択をしないのは自分だ。いつまでも超えられない男を超えようとして超えたと勘違いしているアホと、やっとつかんだ自由の道を自分で捨ててわざわざ日本に戻ってきた馬鹿。なんでそういう選択しちゃうんだろうな、俺たちは。


 晴海という虚像にいつまで踊らされるんだろう。一生か?


 そんな二人が並んでどっちが偉いとかどっちがすごいとか言い合って、本当に笑える。どっちがよりクズかって言ってるのと同じだ。この場合は間違いなく、クズなのは俺なわけだ。晴海の本質を骨の髄まで理解しているから。


「晴海の真似をするわ、黒猫は名乗るわ、死神も名乗るわ。頭の中がいい感じに花畑だ、遅咲きの厨二病も大概にしろ」

「晴海ィ!」


 ……ちげえわ、アホ。まあでも俺に名前なんてないから仕方ないか。


「これ以上の痴話喧嘩は時間の無駄だから、俺から先に結論言っとく」


 椅子から立ち上がる。なんだかこれだけでも舞台に上がっているかのようだ。いや、実際舞台には上がっているか。晴海なのか俺なのかよくわからないやつを演じて。何のために?


「黒猫の活動を止めてどっか行けば、許してやってもいいよ?」


 あいつの声で。あいつがよくやっていた相手を苛つかせる笑い方で、そんなことを言ってやる。たぶん流星が一番見たくない顔と声だろうな。考えてやるよ、検討してやるよ、全部上から目線で「行動する」とは言わない。一時的な保留は絶対にやらない。相手の怒りを煽ってコントロールしているだけだ。


「半井ぃい!」

「それ俺の名前じゃないんだわ、偽物の戸籍名叫ぶのやめてくれ恥ずかしいから」

「!?」


 なんだ知らなかったのか。警察への情報源はこいつじゃなくて社長さんか。って事はこれも知らないか。


「もしかして俺と晴海が異母兄弟ってことも知らなかった? じゃなきゃこんなに顔が似てないだろ、整形でもしたと思ったのか」

「きょう、だい?」

「笑えるぜ、晴海の母親と俺の母親は一卵性の双子の姉妹だ。だからほぼDNAが同じなんだよ」


 ほんと、なんでそんな面倒な不倫関係作ったんだ。会った事もない父親を海に沈めてやりたい気分だ。同じ顔と同じ体の女なら一人にしとけよ。なんで二人相手にしたんだ。


「戸籍がないから名前もない。半井宗なんて人間六年前には存在してない、一年以内に作った戸籍だ。だから殺人事件を立証しようがない。こんな簡単な罠に引っかかってる時点でお前の負けだ。警察の協力者は岸辺含めて全員降格処分だし、お前が使ってきた猫たちはもうお前を崇め奉ったりしない。失敗するアホについて行きたいなんて思わないだろ。女はおしゃべりだ、今回の事は愛梨から秒で広がるに決まってる」


 まるで化け物を見るかのような驚愕の表情で俺を見ている。やり方と畳み掛け方が晴海そっくりだからな。

 いや、俺だって俺と晴海の関係をこいつが気づいてないことにはびっくりだ。そこまで知って六年前動いてたんだと思ったから。なんとも中途半端な情報で動いてたんだなあ。あぶねえな、こいつ裏で生きていくのにむいてないんじゃないのか? まっとうな職業つけばいいのにな。


「だからさっき言っただろ。どっか行くんだったら許してやってもいいよって。可哀想だから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ