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ghost actor  作者: aqri
ghost actor 4 晴海とハルミ
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3 Infiltration

 電話を切ったタイミングで御上さんが入ってきた。俺を見て珍しくほっとした表情だ。


「警察が乗り込んできた時はどうなることかと思いましたけど。なんやかんや、やっぱりうまく立ち回るんですよねあの人は。そしてあなたも」

「火男さんが化け物みたいだなっていうのはよくわかりました」

「その化け物について行くって決めたのはあなたでしょう。ついて来れますか、あの人に」

「たぶん大丈夫だと思いますよ。怪物の相手は慣れてます」


 そんな俺の答えに御上さんは小さく笑う。適当に言ってるわけじゃないのがわかったみたいだ。


「火男さんからの指示です。無謀なことは許さん、あとは何やってもいい、だそうですよ」

「あの人らしいな」


 そのタイミングで俺のスマホに通知が来た。風間さんからだ、書かれていたのは住所。住所をタップするとそのまま地図が開かれた、これは風間さんの所属する芸能事務所だ。風間さんが直接社長に詰め寄ろうとしたらおまけどもがうじゃうじゃ出てきたってところかな。


「あっちはあっちで大荒れの会議中ってところか。面倒な害獣どもだ」


 じゃあ行くかな、と立ち上がると御上さんが行ってらっしゃいと声をかけてくれる。その言葉に俺は軽く手を振って会社を出た。


 時間は夜の九時過ぎ、普通のスタッフや社員はもう帰宅済みだ。見上げると最上階の一室だけわずかに明かりが見える。ブラインドはしてるみたいたけど、光は漏れてるみたいだ。あそこが社長室ってところかな。

 勝手に建物の中に入って階段を登る。警備システムは切られてるみたいだ、これも風間さんがやってくれてるとしたら相当すごい。会社の内部を知り尽くしてるんだ、そりゃ社長が警戒するはずだ。


 ……。もしかしたら。友人を死なせた死神は、社長たちだって思って動いていたのかな。俺が本物の死神に会ったと言って、しかも死神本人と会って一度思いとどまった。海鳥さんは本当に自ら命を絶ったのだとわかったから。でも、再び噂が動き出して。奥底に封印したはずの思いがマグマのようにうずき始めた。準備が良すぎると思ったけど、そういうことなら辻褄があう。一人でずっと戦ってきていたんだ、風間さん。


 三階まで行くと明かりがついている部屋まで歩いた。歩きながらも頭の中ではずっと同じことを繰り返し聞いている、自分に。


 どうやったら決着がつく? 火男さんの言葉が頭をよぎる。


 どうやったら決着つくんだろうな、それは俺が聞きたい。別にそこまでエグイ犯罪行為をされたわけでもないし、それを俺が騒いだところでどうにかなることでもない。俺の気が済むかどうかの問題だ。一応黒猫に釘を刺すっていう目的はあったが、そっちはたぶん風間さんが主体でやっているはずだ。何せ自分の事務所なのだから。


 だったら俺はふざけたことをしてくれた大馬鹿野郎にいろんな意味でトドメを刺すだけだ。一体何を言われれば屈辱的なのか、何を言われたくないのか、そんなの俺が一番よくわかってる。哀れで無様な奴だ、六年たってもまだ晴海の幻影に惑わされ続けている。


 誰が? 流星が? 俺が?


 自問自答に口元に笑みが浮かぶのがわかった。だってこんなの笑い飛ばすしかないだろ、笑い話にすらならないのだから。全然楽しくない。面白いけどな、滑稽なほどに。


 部屋の中からは女の騒ぐ声が聞こえる、愛梨か。風間さんが彼女のやっていることを全部突きつけて杏樹さんの自殺幇助について聞いてるのかもしれない。今は話の腰を折らないほうがいいか、ちょっと落ち着くまで待とう。途中の自販機で買ったブラックコーヒーを一口飲む。

 まるで室内犬がキャンキャン吠えているかのように、自分中心の言い訳をまくしたてている。グループの中で圧倒的な人気だった杏樹が嫌いだった、しかもアイドル活動に興味なんてなくて自分だけ女優を視野に入れたレッスンまで受けていた。そういうところが重なったから流星に、コロっと落ちたってところか。

 風間さんはあくまで穏やかに矛盾点やアホなことに関してツッコミを入れているけど、正直興味はなさそうだ。この人の本当のターゲットはそのさらに先にいる奴なんだから。


「私のこと騙してたのはあんたも同じでしょ!? 嘘つき!」

「失礼なこと言うな、俺は今んとこ一つしか嘘ついてないしそれはお前と無関係だ。ありのままの事実を三割ぐらいしか伝わってこなかっただけで、勝手に勘違いしたのはお前だろうが。とりあえずお前じゃ話にならん、ちょっとどいてろ」

「はあ!?」

「引っ込まねえんだったら舌引っこ抜いて窓から放り投げるぞ、クソガキ。黙ってろ」


 聞いたことのないような殺気立ったドスの効いた声に愛梨は黙り込んだ。今のは演技じゃない、あの人の本気の言葉だ。それに助け舟を出すように流星が話し始める。


「とりあえずあんたの要求は? 裏社会のやばい奴らをどうにかして英雄にでもなりたいのか。警察に言いたければ言えばいいと思うけど」

「警察に協力者がいるのにそんなのピーチク言ったところで相手にされないだろう。それにそんなくだらないことには興味ないね、忙しいんだよ俺は。お前らと違って」

「警察に協力者がいることまで知っているのか、あんたのバックに一体何がいるんだ?」

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