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ghost actor  作者: aqri
ghost actor 2 亡霊と猫
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4 愛梨との駆け引き

 間違いないのはあいつが黒猫と関わりがあること。あいつ自身が黒猫であるかどうかの見極めは少し慎重にならないとな。俺たちの動きが逐一伝わっているって事はそうか。愛梨さんも、黒猫ってことか。

 だから風間さんは彼女の動向を許したんだ。気づいていて情報を盗ませている。そのことにまだあの二人は気がついていない。うまく探りを入れられていると思っているはずだ。黒猫と思わしき人物たちをピックアップしたって言ってたけど、まさか彼女まで入っていたとは。もらったキーホルダー、盗聴器かGPSが入ってないか確認しないとな。


 俺には何も知らない状態でやってほしいと言っていたけど、一気に台無しになった。けどチャンスだ、愛梨を深く観察する必要がなくなる。今演じているちょっと頭が悪そうなこのキャラを維持するにはもってこいの状況だ。


 ポン、と肩に手を置かれた。風間さんだ。


「そろそろ始めるけど?」


 大丈夫か、そう言われているんだな。俺の一瞬の気配の変化で俺が察したことに気づいたか。もう超能力者か何かじゃないのか、この人。そんなことを考えて苦笑する。敵わない。


「大丈夫です、やりましょうか」


 ぱっと明るく笑って月守さん達のところに俺たちは歩き出した。



 その後三日かけて次々と撮影を進めた。出演者には俺はあくまでスタッフという位置付けで軽く挨拶をした。いろいろな人に気さくに話しかけて打ち解けながら順調に撮影が進んでいく。撮ったそばからすぐに俺と愛梨さんで編集やカットを入れて、いろいろな話を同時進行で進めた。

 撮影にたいした人数必要ない時は風間さん達二人で進めて俺たちは編集作業に集中する。必然的に二人でいる時間が増えるので会話は芸能界についてた。


 彼女はどうしてアイドルを目指したのか、今後どうしていきたいのかなどの話を聞き役に徹してやればペラペラといろいろ喋ってくる。

 そこから思うに、本当は女優としてやっていきたいようだ。しかしアイドルで売り出してからドラマの仕事をもらうのがセオリーだというのが事務所の方向なのだそうだ。そりゃ理にかなっている道だと思う。舞台や劇団から演技力の高い人がドラマに出るわけじゃない。まずは関係者のコネから当たって話題性がある人を起用する。


「半井さんって普段縁さんとどんな話してるの?」


 打ち解けてきたのでお互い敬語は無しにしようということにしている。その方が気を許しているという気の緩みができるからだ。提案は彼女からだが、それは俺も心得ている。


「特にこれという話題はないんだけど。会ったきっかけが飲み屋だし、芸能人様っていう色眼鏡で見てるわけじゃないから。最近だと、米国株の話かな? GAFAM時代はいつまで続くかな、みたいな」

「なんでよ〜、そこはアイドルとか女優の話にしてよね。縁さんて浮ついた話ないし、ストイックな生活してるから女性関係とかって全然見えないんだもん。別に首突っ込む気は無いけど」


 嘘だな。その手の話を情報収集しているんだ。どうやら死神ビジネス以外にもそれなりにやばいルートの仕事を斡旋しているらしい。

 男を相手に慣れた雰囲気。アイドルっぽさというよりも、散々行かされたキャバクラで見覚えのある受け答えの仕方だ。おそらく枕営業が常態化してる、本人も嫌々やってるのではなく望んでやっているって感じだ。楽しくて楽しくて仕方がない、そんな感情が見て取れる。


 こういう子が相手だと男は「この子は自分に対して悪い気はないんじゃないか」と勘違いする。勘違いさせる方向に持っていっているのがわかる。まだ高校生なのにたいしたもんだ、本人のもともとの性格なのかもしれないが黒猫側の教育の賜物ってやつか。

 ガードが固い風間さんから、頭のゆるそうな俺にターゲットかえてきたってことだな。風間さんから特にこうしてほしいという要望は無い、俺は今の俺を演じるだけだ。


 撮影データは常にリアルタイムでクラウドに上がってくる。俺と彼女のどちらが主体となっているというのはないが、新しいデータは大体彼女が最初に見る。編集される前に見たいのだろう、おいしいネタがないか。


「え」


 驚いたような声が上がった。どうしたのと聞いてみるとその表情は困惑している様子だ。


――表情に出やすいなこの子。突発的な出来事に冷静に対処ができないってことか、そこは年相応だ。


「あ、うん。主人公と女性が揉めるシーンがあったでしょ。アドリブかな、セリフが違うから」


 そう言われてデータを見てみると確かに。このシーンは犯人が女性だと思って主人公が詰め寄るシーンだ。主人公が優勢だったはずなのに、相手の方が主人公を言い負かす勢いだ。しかも怒っているわけではなく淡々と冷静に。逆に主人公の方が動揺して形成逆転だ。

 本来はここでお互い相手を犯人だと思っていて、女性が隙を見て逃げ出してしまうのだが。女性は余裕の表情で「それじゃあね」と言って背中まで向けて歩き去っている。相手が犯人かもしれない相手に背中を向けるとは。

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