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5 才華

 たぶんこいつ何様だふざけるなって思ってるだろうな。怒りを煽りたいわけじゃないけど「こいつは無理だ」って思わせて離れさせる必要がある。最後のカードを切るか、こいつは徹底的に使えないと踏んでここでやめるか。どっちに転ぶかな。


「ちょっと小耳に挟んだんだけど。そっちの会社、実力がある人だけが選ばれてやらせてもらえる特殊な仕事があるって聞いたんだ」


 ……核心をついてきた方か、しかもバカだろこいつ。ウチの会社がそんな大事なことを小耳に挟むような雑な取り扱いしてるわけない。自分もグレーゾーンの仕事してますって大声で叫んだようなものだ。


「そりゃ優秀な人は何か特別な仕事を任せられるんじゃないですか。俺はそういうの当てはまらないので」

「それが結構いい稼ぎになるって聞いたから、詳しい話を知りたくてさ」


 俺の言葉を遮って自分の主張を強めてきた。有無を言わせない、自分の意見が通ればいいっていうモードに変わってきてる。もうこれだけでこいつの目的はわかった。特殊演技をする人たちへの探りと、会社潰すための材料探しってところか。雇われているだけの利用されている奴か、それとも同業者でそれなりのポジションのやつか。

 時間がなくて慌てていたなら金で雇われただけの使い捨て、ってわけじゃなさそうかな。駆け出しの同業者か。そりゃウチは普通に会社として存在するんだからいくらでも調べようがある。ウェブ上とかゴーストじゃないもんな。


「俺はやったことないので解りません」


 半井宗はやってない。やってるのは「俺」だからだ。


「ちょっと会社のほうに確認とかできない? さりげなく」

「さりげなく確認する必要ないんじゃないですか、普通に聞けばわかることでしょ。業務なんですから」


 しゃべればしゃべるほど墓穴掘るタイプだなこの人。


「いや、あんまり表立って聞くのもアレかなって」


 何も知らない立場の人間からしたら、優秀な人は特別な仕事をしてもらえるっていう良い話なはずなのに。この言い方だとそれは表沙汰にできない仕事なんだけどって言ってるようなものだ。その辺の事情を知らない半井宗からしたら、なんでそんなにコソコソやりたがるのか不思議でしょうがないんだけどな。そんなこともわからないのか。


「はあ……とりあえずその確認すればもう関わるの終わりでいいですか」


 面倒な事はやりたがらない、さっさと終わらせる。根が暗い半井宗なら、こう言う。少し困ったことに、あくまで「俺」の考えはここで引き受けるのはNGなんだ。つつくべきじゃないことなんだけど、この場合はもう仕方ない。それで実際に探りを入れられているのだから本社の指示を仰ぐ必要はある。


「本当?」

「あと三日でどこまでできるか分かりませんけど」

「いや、この会社辞めた後でもいいんだけど」

「安易に他人と連絡先交換しないことにしてるんです、俺。後三日です、これ以上は譲りません。納得できないなら自分でやってください」


 大崎は不満そうな顔だけど、わかった、と妥協した。俺が優位に立ってる時点で立場が逆だ、交渉失敗してるって気づいてもいないのか。不満というか不愉快そうな顔、だな。格下だと思ってる奴に良いように丸め込まれては面白くない決まってる。それでも時間がないと言っているのには自分の中でノルマがあるか、危ない橋を渡ってでもそれを達成しなきゃいけないわけだ。

 プライドが高いけど実力が伴ってない、冷静な分析もできてない。自分の意思がそこまで強くない、って事は金に困ってそうだ。目先のメリットばかり追いかけて適正なリスクが取れていない。一発逆転のギャンブルとか好きそうだな。最近成績が悪くて、ここで何か強烈な手柄を上げることでそれをひっくり返そうとしているとか。

 それじゃ、と帰ろうとしたけど。ふいに気配を感じて振り返った。


 そこにいたのは。


「こんばんは」


 ……才華。予想外すぎる。そして非常にまずい、頭の中で瞬時に答えが出た、そういうことか。大崎の正体、目的、もっと早く気づくべきだった。ウチに妨害してる連中の一人か。いや、もしかしたら……。大崎が声を上げる。


「あ!? おまえ」

「ちょっと静かにしてください。僕が話をしたいのはあなたじゃなくて半井さんです」


 知り合い、違うな二人は同僚だ。まずい、さすがに二対一では対応が難しい。仲が悪そうなのが唯一の救いだ。


「本社に連絡して作戦練られると、さすがに僕もどうしようもなくなるので。ここで声をかけさせて貰いました」


 ばれてるし。そうか、って事はロッカーの盗聴器も。


「後で見つかると騒ぎになりそうなので回収しておきましたよ。まあ僕も音声を拾わせてもらいましたけど」


 ポイっと投げてよこしたのは俺がロッカーに置いておいた盗聴器だ。やっぱりな、周波数合わせて使われたか。清掃業者とか外部から来る人間を装ってあの会社に侵入してたんだ。才華はやれやれ、といった様子で大崎を見る。

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