第十話 『森林からの脱出』(前) 追手
少し暗くなります。お気をつけを。
とても長く、そして懐かしい夢から僕は目を覚ました。
周囲の様子を伺ってみると既に嵐は過ぎ去り、空は晴れているらしく日が差していた。
(取り敢えず森から出よう。)そう思いながら立ち上がり・・・
「一先ず【方位探知】っと」
方角を探知する魔法を使い深い森の中、出口を目指し歩き始める。
水滴の付いた植物が差し込んでくる光を反射し、キラキラと美しい中を歩いている最中、真っ先に浮かんできたのは大事な仲間たちのことだった。
あの時、戦士のノーガスは兵士の剣に貫かれ、魔法使いのアメアは魔法で焼かれ、治療士のラクは矢で胸を刺され、婚約の成立報告の為に故郷に帰っていたシェイドとエル、そして皆に逃がしてもらった僕を除きパーティはあの時壊滅した。
思い出すにつれて涙が流れてくる。
このような気持ちを持ってはならないとわかっているに関わらず。
(皆、素晴しい人だったのにどうして)というこの理不尽に対する怒りが止まらなくなってくる。皆を殺した彼らにも同じ目に会って欲しいという想いが・・・
「駄目だ駄目だ」
頭を振って湧いてきた狂気を拒絶し、考え方を変えてみる。
(確かにパーティは壊滅した。しかし、家族であるエルとシェイドは生き残っている、それで十分じゃないか。)
そう考えなければ気がおかしくなりそうだった。
しばらく歩いていると自分のものではない足音が聞こえ始めた。
追手の可能性が頭を過ぎったが、魔物の足音の可能性もあるので無視して進み続けた。
時間が経つにつれてその足音はどんどん大きくなってゆく。そして・・・
「見つけたぞ!エリミオレ・エイナード!邪教崇拝の罪によりその命貰い受ける!」
大声が森林に響く。驚きながら振り返ると国の兵士が数人こちらを睨みつけ、剣と敵意を向けていた。
これからはこのように1話を複数に分けて投稿していきます。