第零話 プロローグ
OVL大賞の為に書き下ろした作品です。
幻想世界を舞台に、過去のトラウマから引き篭もる主人公ディアスの活躍を始め、さまざまな人々が大陸全土を覆う脅威に立ち向かってくるファンタジーです。
興味がありましたらぜひ読んでみてください!
まずはこの地図を作るにあたって謝意を。
私を育て、本の虫(今もだけど)に呆れる事なく、シャルクとしては珍しいであろう大陸の外に出たいといった時、心良く送り出してくれた両親。
路銀を忘れた私の壮大な目標に関心を示し、惜しみない支援までしてくれたメナキス・フォレチア王。
路銀を失い、右も左も分からない小枝のような私を助けてくれた名も知らないリボータル、アトラード達。
この地図を作ったのは、この世界に生きる全ての人に生まれ故郷がどういう形をしているのか知ってもらいたかったからだ。
確かに一生を村で過ごすだけなら必要はない。
けれども、働いて眠るだけの人生は何か足りない。
そう娯楽が必要だ。談笑し、駆け回り、酒を飲み(この旅で娼館というものを知った)、そして寝る前に本を読む。
私の作った地図もそんな娯楽のひとつに組み込んでくれたら、法外の喜びである。
前置きが長くなってしまった。本の内容を少し紹介しておこう。
不老不死弓の種族の住まう弓の大陸。私のように好奇心旺盛な剣の種族が住む剣の大陸、そして喧嘩っ早い斧の種族達の斧の大陸。
三柱の守護神が自らの命と引き換えに生み出されたという大陸を私は隅から隅まで歩いて詳細に描き記した。
しかし、地図は完璧ではない。何故なら時が進めば必ず何か変化が起きる。昨日あった村がなくなっているかもしれないし、大陸の形が変わっているかもしれない。
それはないと断言できる証拠はないのである。
だからもし、この地図を読んだ誰かが、成長した世界を描き記してくれると嬉しい。
私も近々、まだ行けていない渦潮の島へ赴くつもりだ。
気づいたらもう六百文字を超えている。読者の皆さんも早く本編に進みたいだろうからこの辺にしておくとしよう。
私も急ぎの用があるのだ。この地図を一番楽しみにしている少女の為に、サインを書くという名誉ある仕事が。
〈メアカッパー・ティサオン著 世界地図序文より 抜粋〉