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第66話 ギルド報告書

「最近嫌なニュースが増えましたね。沼地の魔物の縄張り争いに首狩りの悪魔。そしてフィンゼル様たちが遭遇したという可笑しなピエロ……」


 俺、エマ。カトレアは屋敷の談話室でお茶の真最中。そこでカトレアが最近会ったことを並べていく。


「本当にな。ピエロと沼地の件はともかく、あの首狩り事件の犯人はまだ捕まっていないんだろ?何をやっているんだ憲兵は」


 首狩り事件。俺たちを襲った隻眼の狼たちが首を刎ねられ殺された事件だ。

 隻眼の狼は腐ってもBランクの冒険者達。それを5人全員の首を一撃で落としたことが調査で分かっている。それもほとんど抵抗を許さずしてだ。そのことからこの犯人を首狩りの悪魔と呼ばれ恐れられている。


 こんな芸当をできるのはこの町ではギュンターを初めごく一部の騎士のみ。しかし、その手練れの連中は皆アリバイがあり、現在捜査が難航しているとのことだ。


 マリアも憲兵と一緒になって捜査に協力している。こんな凶悪犯をフィンゼル様がいるこの街に野放しにさせるわけにはいかないと息巻いていた。本当にご主人様思いのいいメイドだ。俺にはもったいない。


 ちなみにグルだった御者は俺たちを連れてきたら金をやると言われて連れてきただけの様で、首狩りの悪魔とは関係がなさそうだ。


「そっちはともかく、沼地の縄張り争いには決着がついたみたいよ。どうやらスケルトンの軍勢が沼地を掌握したみたい。目撃者によると、スケルトンの親玉の片腕には赤い布が巻かれていたらしいわ。

そのことからこのスケルトン達は人間と何かしらの関りがあるとされていて、死霊術に長けた人間の仕業と……どうしたの? 顔が真青よ?」


 エマがギルドからとって来た報告書に目を落としながら話していたが、俺を気にかけ話を途中で止める。


 赤い布を腕に巻いているスケルトンだと……?

 心あたりしかないんだが……。


「エマ。そのスケルトンで人の被害は出ているか?」

「いえ。それが全くといっていいほど出ていないわね。スケルトン達は人間に興味がないみたい。人を見つけると、逃げ出すみたいね。まぁ、自然発生したスケルトンではそんな事あり得ない訳だから、人間が関わっていると判断されている訳だけど」


 そうか……それならまだ良かった……のか?


「でもそれだと辻褄があいませんね。今現在Cランク以上の魔物を召喚できる魔法は見つかっておりません。その報告書だと沼地を掌握したスケルトンのリーダは少なくともスケルトン・ジェネラル以上。スケルトン・ジェネラルはBランクの魔物なので、人の手では召喚できないということになります」

「そう、そうなのよね。そこが問題点。たまたま派生した特殊なスケルトンなのか、それともBランク以上の魔物を召喚する魔法を見つけた誰かの仕業なのか……」


 スケルトン・ジェネラル? 俺が召喚したのはウォーリア、ウィザード、ガーディアン。あとは普通のスケルトンとアーチャーだ。ジェネラルは召喚していない、というかできなかった。バンダナを巻いたのもウォーリアだ。一体どうなっている?


 だがそれよりも確認しなければならない事は……


「なぁ、これは例えば……そう、例えばなんだが、召喚した魔物が暴走して人に被害が出たりしたら……罪に問われたりする?」

「あなた……もしかして何か関わっているの?」

「いやいやいや! 例えばだよ! 例えば! 俺が召喚魔法なんて高度な魔法使えるわけないだろ?」

「まぁ、それはそうだけど……」


 エマはそれでも俺を疑っているようで、ジト目で俺を見てくる。そのせいで俺は冷や汗だらだらだ。


「そういえば、昔ドラゴンを飼いならそうとした人物がいましたが、結局失敗した挙句町に甚大な被害を与えた人がいましたね……。その方は死刑になってしまいましたけど」

「……ああ、そう」


 カトレアと決して目を合わせないように俺は話を聞いた。チラッとカトレアの様子を窺うと、優しい笑顔がそこにあった。それはまるで『全部分かっていますので安心して下さい』と言われているようで、逆に怖い。


 うん。これは黙っていた方がよさそうだ。

ともかく早急に確認する必要がある。思えば、まだベナコ村のダンジョンの報酬をアイザックに貰っていないな。マリアの新しい剣も買わなきゃいけないし、金銭と俺以外の沼地の立ち入り禁止をお願いするか。



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