第27話 ギルド事情
カウンターには綺麗なお姉さんが受付をしていて、深々とお辞儀をしてくる。
「先ほどはうちの冒険者が申し訳ございませんでした」
「ここの冒険者たちはあまり質が良くないようですね。ちゃんと教育はしているんですか? 私だけならいざ知らず、坊ちゃまやマリアに手を出そうなどと、到底許されるものではありませんね 」
いつになく厳しい口調のギュンター。 ギュンターのお説教は止まらず、お姉さんはどんどん縮こまっている。
「ギュンターその辺で許してやりなよ。 幸い俺たちに損害はないわけだしさ」
「坊ちゃま……。なんとお優しいのでしょうか……分かりました。次回までにあの愚か者どもを教育しといて下さい」
溜飲を下げるギュンター。これで一件落着だろう。
「わ、分かりました……。しかし……。」
どこか歯切れが悪いお姉さん。綺麗な人が困っているとついつい助けてしまいたくなるんだよなぁ。
「どうしたんですか?なにか事情でもあるんですか?」
俺が問いかけるとお姉さんは話し出す。
「はい。あの隻眼の狼は冒険者ランクBで、このギルドで一番腕が良いのです。下手に注意して、この町から出ていかれると……」
なるほど、それで言い淀んでいたのか。
ギュンターは、あの程度でBランク……と呟いて絶句している。
「あの、この町は冒険者の町なんですよね?他の腕のいい冒険者はどうしたんですか?」
確かにマリアの言う通りだ。他の冒険者はどうしたんだ?
「はい、ベルフィア軍の撤退戦はご存じだと思いますが、ベルフィア辺境伯様が、アバディンに籠った際、戦争に巻き込まれるのが嫌で、軒並み他の町に……」
ああ、それは災難だ。というか、ほぼベルフィアのせいだな。そういうことなら……。
「なら、俺たちが、その隻眼の狼以上の働きをすればいいことじゃないか?」
「しかし、いくら強かろうと、なんの実績もない方たちは、Gランクからのスタートとなりますので、ギルドの戦力になるには時間が……」
俺はちっちっち、と人差し指を立てながら左右に振るジェスチャーをする。
「何を隠そう!ここにいるギュンターはエル・ティソーナ流とデストレーザ流でS級のライセンスを持ち、元王国騎士長でもあるギュンター・ペドロヴィアだぞ?なんの実績もないってことはないだろ?」
「え!? S級のライセンス持ちで、元王国騎士長!?いやでも私の一存では……」
「ん? 坊ちゃまに私が元王国騎士長と言ったことありましたか?」
「え?ああ、うん」
適当にでたらめ言ったらまさかのビンゴか……。
まぁ、結果オーライだろ。
「お姉さんで判断が付かないなら、上の人と相談してきなよ。待ってるからさ」
「あ、では、支部長を呼んで……」
「その必要はないよ」
お姉さんの言葉を遮り、受付の右側にある階段から人が下りてくる。
その人物は、金髪を短く切りそろえており、眼鏡をかけている、ザ・エリートサラリーマンって感じだ。
「僕は、アイザック・モレアス。この冒険者ギルドアバディン支部で支部長を務めている。 あなたの噂は聞き及んでますよ、ペドロヴィア上級騎士さん。元王国騎士長で、平民…それも元帝国の軍人だったのにも関わらず、王の守護者候補だった猛者だとね。それと同時に王の守護者への昇格の話を断って、ヘストロアの騎士に仕官した変わり者とも聞いていますが」
「パラディン!? お義父様が!?」
俺が反応する前にマリアが驚いている。
王の守護者……確か国王直下の独立部隊とかなんとか。アイザックが昇格と言っているから、騎士長より位が高いんだろうな。それを蹴ってまでヘストロアに仕官したんだ。ギュンターの忠義は本物だ。
ギュンターの様子をも見てみたが、特に反応はなかった。
「よかろう。 君たちを特例として、B級の冒険者として認めようじゃないか」
「支部長、よろしいのでしょうか?」
「かまわないさ。今は少しでも戦力が欲しい。本部には私から連絡しよう」
おお!ギュンター様々だ。 G級の依頼など退屈なものばかりに決まっているからな。魔物討伐はちょっと不安だが、ギュンターがいれば何とかなりそうだから不思議だ。
「冒険者の登録はこちらでやっておこう。明日には冒険者証ができるから取りにくるといい」
「ギュンターはともかく、俺たちの名前も知っているのか?」
俺は長い間、ベルフィア城に閉じ込められていた。俺の情報は少ないはずだが。
「もちろんさ。ベルフィア辺境伯のご子息、フィンゼル・ライ・ベルフィア様とマリア・ペドロヴィア嬢だろう」
マリアの名前まで……。この男は中々の情報通らしい。
「ともかく、今日はもう夕方だ。僕たちもこれから君たちの冒険者証を作って、本部に連絡しなければならない。今日はもう帰りたまえ」
そう言われ、俺たちは、冒険者ギルドを後にした。
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