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異世界最強はヤミ金  作者: 掘削名人
盗賊一味ラドロー
6/16

襲撃にあうイットさん

「おう、帰ったか。あん?他の三人はどうした?それに、その格好はどうした?血まれじゃないか?」


「ら、ラドローさん。聞いてくださいよ。大変なことがあったんです。」


 何とか、アジトへと帰ってきた男が帰るなり、ラドローという男に、先程の経緯を説明した。それを聞いたラドローは激怒していた。


「なんだと?三人は、粉々になって消えただと?」


「はい。俺、もう、何がなんだか分からなくて。帰ってくるだけで精一杯でした。すいません。」


「それで、そのイットという男は、10000ゴールドを用意しろって言ってきたのか?」


「はい。慰謝料とか言っていました。」


「ふざけやがって。俺達をラドロー一味と知っていての行動なのか?どうも、その男、恐怖心というものが無い、馬鹿のようだな。俺達に手を出したこと、思い知らせてやる。」


 ラドローは、奥にいる部下達に武器を取らせ、イット金融を襲撃するように命令した。ラドローの部下数十人が、大量の武器を手に取り、足早にイット金融へと向かっていった。


「くくくっ。あれだけの人数での襲撃だ。きっと奴は、腰を抜かして、俺のところへ謝りに来ようとするはずだ。だが、俺達をコケにしたことは許すことはできん。だから、生かしておくはずがない。馬鹿な野郎だ。ハハハハハハッ。」


 ラドローは、ソファーに座り、高笑いをしていた。だが、ラドローはこの時、気付いていなかったのだ。安易に、自分の部下数十人を、怒り任せに襲撃させたことが、大きな失敗であることに。自分の部下が、いきなり三人消滅させられてしまったという、意味不明な報告が、あまりにも現実味がないために、危機感を持っていなかったからだ。

 



------------



「どうやら、あれが、イット金融という建物らしいな。」


「ああ、結構でかいな。なかなか目立ちやがる。」


「それにしても、結構人の出入りが多いな。これじゃ、襲撃した途端に、誰かに通報されてしまう。」


「確かに。なら、暫く様子を見て、出入りがおさまったタイミングで襲撃するか?」


「ああ、そうだな。」


 イット金融へ到着したラドローの部下達は、イット金融の中からは見えない位置にて、作戦会議をしていた。ラドローの部下達は馬鹿ではない。いきなりの襲撃を、第三者に見られるというリスクは追わないように行動している。全員が、その考え方を持っている。この、統一した考え方の徹底による連携により、ラドロー一味は、過去、大きな成果、収穫を得て、大きな一味となったのである。一人一人単位でも、かなりの戦闘能力を保持している。これは、日頃からの厳しい訓練によるものだ。その、あまりにも統率された軍隊のような組織的な行動力は、周りにも大きな影響を与えている。多少の犯罪を犯したところで、王国の正規軍も、なかなか手出しが出来ないほどなのだ。むしろ、王国内の貴族や王族は、その戦闘能力を高く評価しており、他国への侵略や暗殺等と依頼をたびたび行っているのだ。その事もあってか、ますます、王国の正規軍も手が出せなくなっている。そうして、ラドロー一味は、どんどんと大きくなっていったのだ。


「おい、だんだん、人の流れが減ってきたぞ。」


「確かにそうだな。」


「じゃあ、そろそろ行くか?」


「ああ、そうだな。」


「じゃあ、いつも通り、まずは、建物の周りを確認し、逃げ道を塞ぐ配置をするぞ。」


「おう。」


 ラドローの部下達は、素早い動きで展開し、物音を立てずに、イット金融の周りを取り囲んだ。そして、ハンドサインにて、ラドローの部下達全員が、配置が完了したことを確認する。こうして、あっという間に、ラドロー一味は、イット金融を襲撃する準備が完了したのであった。


「よし、いくぞ。」


「おう。」


 建物の正面に配置していた十人程が、イット金融の正面玄関へと進んでいった。だが、正面玄関の扉を見て、勢いが一旦途絶えてしまった。


「な、なんだ、この扉?」


「俺達が近付いたら、勝手に横に開いたぞ?」


 そう、このイット金融の正面玄関の扉は、自動ドアのように、人が近付くと開き、一定期間で、自動で閉まる機能が付いていたのだ。


「勝手に動く、ということは、まさか、この扉、魔道具なのか?そんな馬鹿な。」


「あの男、魔道具は巻物だけではなく、こんなものまで。一体、何者なんだ?」


 ラドローの部下達がうろたえているなか、カウンターにいる受付の女性が声をかけた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」


 受付に声をかけられたことで、ラドローの部下達は我に返り、当初の予定である襲撃の行動を開始した。


「よう、姉ちゃん、俺達は、客じゃあねえんだよ。」


「そうだよ姉ちゃん。なめるんじゃねえよ。」


「そうだそうだ。イット、って奴を呼んでくれないか?」


「すぐに呼ばないと、痛い目にあるぞ!」


 ラドローの部下達は、行動を受付の女性に絡む者、フロアで暴れる者と二手に別れ行動を開始した。フロアで暴れる者は、フロアにあるテーブルや椅子を、持っている武器にて破壊し始めた。それだけでなく、壁も破壊し始めた。


「な、何をしているんですか?止めてください。」


 ラドローの部下達の様子に、相当驚いたのか、受付の女性は、声を荒げ、何とか、ラドローの部下達を制止しようとした。


「止めませーん。」


「そうだ。これも、イットって奴が悪いんだ!」


「ヒャッハー、壊せ壊せ!」


 ラドローの部下達は、受付の女性の制止を無視し暴れ続けた。


「止めてください!」


 何度、受付の女性が訴えても、ラドローの部下達は、一切手を止めようとしない。すると、受付の女性の表情が一変した。


「や、め、ろ、と、言っているんです!」


 受付の女性は、さっきまでとは、表情も、声色も全く違っている。ラドローの部下達に対して敵対心をむき出しにしていた。当然、ラドローの部下達は、受付の女性の態度が豹変したことを面白く思うはずがない。当然、ラドローの部下達は激昂した。


「なんだよ、姉ちゃん。文句あんのか?」


「そうだ。俺達に逆らっても、いいこと無いぞ!」


「俺達に逆らって、無事でいられると思うな!姉ちゃん、拐うぞ!」


 ラドローの部下達が、受付の女性に詰め寄るも、何故か受付の女性は冷静だった。恐怖を全く感じていないようである。それどころか、ただただ、ラドローの部下達を汚物でも見るような目で、完全に見下していた。


「ああん?なんだあ?その目は!」


「私は、止めてください、と言ってるんです!どうしても、言うことを聞いてくれないんですね!」


「ギャハハッ。言うことを聞いてくれないんですねって、聞く分けねーだろーが!」


「そうですか。残念です。」


 受付の女性がそう言った直後、ラドローの部下達は、急に体に強烈な違和感を感じた。それは、まるで、自分の身にとてつもなく重い物がのしかかってきているような感覚だった。それも、だんだんと、重さを増していくように、ラドローの部下達は感じていた。


「な、なんだあ?」


「か、体が、お、重い?」


 どんどんと重さを増していき、ラドローの部下達は、その場から、一歩も動けないどころか、立っていることさえ出来ない程になってしまった。


「こ、この、くそアマ、なな、何を、しやがった。」


「別に、私は、何もしていません。あなた達に、止めてください、と、お願いしただけです。」


「ふざ、ふざけるな。それなら、俺達のこの状態を、どうやって説明する!」


 ラドローの部下達は、自分達に起こった意味不明な状況に、ただ、受付の女性に、文句を言うことしか出来なかった。大人数の盗賊達が、一人の受付の女性に膝ま付いている、周りには、そうとしか見えない状況。この事は、ラドローの部下達にとって、この上ない屈辱でしかなかった。


 ラドローの部下達が完全に動けなくなって、暫くすると、受付の女性の表情から緊張感が消え、優しい口調でラドローの部下達に話しかけた。


「乱暴な行為を止めていただき、ありがとうございます。私の要望に答えていただき、とても嬉しいです。それでは、改めてお伺いします。今日は、どのようなご用件ですか?」


「ふ、ふ、ざけるな。」


 受付の女性の、あまりにも、事務的かつ、血のかよっていないような、感情無しの笑顔による営業トークに、ラドローの部下達は、動けない体で、ただただ、罵倒することしか出来なかった。


「うーん。ご用件を言っていただけないとは、困りましたね。私では、手に追えないですね。それなら、社長をお呼びします。少々お待ちください。」


 受付の女性は、そう言って、カウンター席を離れ、建物の奥へと消えていった。受付の女性の姿が見えなくなっても、ラドローの部下達は、全く動けないでいた。



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