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異世界最強はヤミ金  作者: 掘削名人
盗賊一味ラドロー
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報復計画されるイットさん

 ここは、ウエスト国の首都エステ。世界最大の都市である。あまりにも巨大な都市であるため、物流の量が他の都市とは桁違いの規模になる。その為、毎日のように、一攫千金を夢見た者達が、この都市へと足を運んでくる。だが、夢を追う者が多いということは、夢破れる者も多いということ。だから、この都市の貧富の差は激しく、犯罪率も多い。裏通りに入りってしまうと、とても王国の首都とは思えないほど治安が悪い状況なのだ。だが、治安が悪いとは言っても、ある程度の秩序は保たれている。その理由は、いくつかある巨大組織が牽制しあって均衡状態になっているからである。ギリギリの緊張感を保ちながらも、何とか組織通しの全面戦争は避けてきたからこそ、最悪の状況にはならないで入られるのだ。

 その巨大組織の一つが、プジョー一味である。この都市の盗賊は、だいたいここに所属しているのだ。プジョー一味が大きくなった大きな要因は、この組織が所持している魔道具「ダウジングマップ」が大きい。欲しい物の場所が明確に分かるため、自分達にとって都合が良い物を、確実に近い確率で手に入れることができるのだ。ダウジングマップを所持していることは公表していないが、一部の貴族には、その情報が渡っている。だから、その貴族達も、プジョー一味に多額の報酬を与え、物探しの依頼を頼んでいるのだ。



----------



 ウエスト国の首都エステにある、とある酒場にて、この場に似つかわしくない、大きなローブを羽織っている男がいた。酒場で酒を飲む、もしくは食事をする際、上着などは脱ぐのが普通だ。だが、この男は、大きなローブを、決して脱ぐことはなかった。ローブについている、これまた大きなフードは、顔の大半を隠し、男の素顔は、パッと見では、全く分からないほどだった。そんな男は、カウンターの端の席に座り、ゆっくりとしたペースで、酒を飲んでいた。まるで、周りの会話を盗み聞きするために、聞き耳を立てているかのようであった。


「なんだい、兄ちゃん。そんな格好で、そんなにゆっくりと酒を飲んで。ここの酒場は、皆でワイワイと騒ぎながら飲む場所なんだ。そんな飲み方するなら、よそへ行ったほうが良いんじゃないか?」


 男に、店主がそう声をかけた。だが、男は、首を横に振り、店主の言うことを聞くことはなかった。


「まあ、金さえ払ってくれるんなら、俺は文句は言わねえけどさ。変な奴に絡まれても、俺は知らねえぞ。」


 店主は、そう言って、他の客の相手をするために、この場から離れた。男は、やっと、うるさい奴がいなくなった、と言わんばかりのため息を吐き、再び、周りの会話を盗み聞きするために聞き耳を立てていた。


「おいおい、兄ちゃん、辛気臭えぇな。酒って言うのは、もっと、楽しく呑むもんだ。兄ちゃんを見てると、酒がまずくならあ。」


 そう言って、男に絡んできた、大柄な男が現れた。男の上には、なにやら刺青が掘られている。酒を飲んでいた男は、その刺青に大きく反応し、始めて言葉を口にした。


「ああ、すまない。俺は、昔ながら静かに飲むのが好きなんだ。ところで、その刺青は?」


「ああ、知らねえのか?これはな。なんと、プジョー一味の証である刺青なんだ。プジョー一味に入ると、身体の一部にこの刺青を彫ってもらえるんだ。つまり俺は、プジョー一味ってことだ。どうだ、すげえだろ!」


「そうか、お前は、あの有名なプジョー一味なのか。」


「ああ、そうだ。なんだ?お前も、プジョー一味に入りたいのか?」


「ああ、そうしてもらえるなら。」


「そうかそうか。だが、気を付けるんだな。プジョー一味は、裏切りはご法度。まあ、それさえ気を付ければ、街でもデカイ顔ができる。メリットのほうが、はるかに大きいからな。」


「どうすれば、プジョー一味に入ることができるんだ?」


「まあ、入るためには、俺のような隊員の推薦が絶対に必要になる。その上で、幹部との面接に、俺と同席し、認めてもらえたら、無事にプジョー一味に入れるってことだ。入ることができたら、プジョー一味の証である刺青を彫って、晴れて、プジョー一味となるって、そういう流れだ。」


「なるほど。それで、俺は、プジョー一味になれるのか?」


「どうだろうな。それは、俺次第かな。」


「俺次第、か。なら、どうすれば?」


「何か、アピールできることはあるか?お前が、プジョー一味に入ることで、プジョー一味にメリットがあるようなことが。」


「ああ、それならある。」


「ほう。どんな?」


「これだ。」


 ローブを羽織っている男はそういうと、大柄な男の目の前から、一瞬にして姿を消した。大柄な男は、ギョッとした。直後、ローブを羽織っている男は、大柄な男の真後ろに立っていた。そして、ローブを羽織っている男は、大柄な男の背中に、剣の鞘を突き立てていた。


「まあ、こういうことができる。」


 ローブを羽織っている男は、そう言いながら、剣の鞘を大柄な男から離し片付けた。そして、何事もなかったかのように、元の席へ座った。


「お、おうおう、すげえじゃねえか。今、完全に、俺の前から姿を消したじゃんか。どうやったんだ?」


「まあ、俺のスキルだ、とだけ言っておこうか。」


「ほう、すげえな。これなら、戦闘員として、プジョー一味に入ることが出来そうだ。まあ、俺が推薦してやるよ。で、どうする?今から面接に行くか?」


「ああ、そうしてくれ。」


「分かった。案内してやるよ。俺は、セシル。お前の名は?」


「俺は、ラバーだ。」


 二人は、お互いを称える意味を込めて、握手をした。そして、プジョー一味のアジトへ向かうために酒場を出た。セシルを先頭に、ラバーが付いていく、という形だ。歩いている途中、ラバーは、ニヤリと、君の悪い表情になっていた。

 ラバーは、本当は、ラドロー一味の幹部である。ラドローの命令を受け、プジョー一味に潜入し、ダウジングマップを手に入れるために、エステまで来てきたのだ。来て早々、セシルの目にとまり、プジョー一味へ近付くことが出来たのである。本来なら、ラドロー一味も、プジョー一味と同じく、体のどこかにラドロー一味の証である刺青を彫っているのだが、今のラバーには、刺青が見当たらない。これは、ラバーが持つスキルのお陰だ。

 ラバーは、「隠蔽」というスキルを持っている。このスキルのレベルを上げることで、様々な物を隠蔽、隠すことかを出来るのだ。それこそ、自分自身の気配であったり、体の傷であったり、嘘であったり、ありとあらゆる物を隠すことが出来るのだ。まさに、潜入、暗殺に適した、盗賊にとっては、かなり優秀なスキルだ。だからこそ、ラバーは、ラドロー一味の幹部になれたのである。

 ラバーは、セシルに対して、完全に嘘を付いているのだが、嘘の気配も隠蔽のスキルで完全に隠しているから、バレるはずがないのだ。

 これも全ては、ラドローがイットに報復を与えるためであるのだ。

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