プロローグ
暗闇を全て凝縮させたかのような部屋。
怪しげに光る水晶玉を、1人の女性が見つめていた。
歳は10代後半ぐらいだろうか。
ぺろりぺろりと舌なめずりをするその姿は、何かを待っているかのように見える。
「あら、来たわ」
と、少女が嬉しそうな声を上げた。
どこからともなく、光の粒子が現れた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。次々と水晶玉に吸い込まれていく。
その度に、女性の顔はますます嬉しそうになっていくのだった。
しばらくすると、水晶球が紫色に輝き、不思議なオーラを纏い始めた。
「また、この程度なのね。近頃の若者は、ホントに欲がなくて、キレイな心で羨ましいわ。あ、そうでもないか。恵まれた時代に生まれたから、叶えられないことというのがないんでしょう」
次の瞬間、水晶玉が粉々に砕け散った。
そして、ガラスの粒が空中に浮き、一文字の漢字がつくられる。
「夜光ノ時・・・夜光の時!?それって、列車を運光してもいいってこと!?」
驚愕する女性の目の前で、ガラスの粒が机に落ちていく。
まるで、「その通りだ」と言うかのように、パラパラと音を立てて。
意を決した女性は、やる気に満ちた眼差しを、『連絡用』という貼紙が貼られた水晶玉に向けた。
「さてと、リウェダに連絡しないと。久しぶりに夜光列車を運光できるってね。ああ、フィリグとルーシュ、
それにルファードとエレガへのれんらくも忘れちゃダメね」
世の中の人々は皆、心の奥底に一番強い望みを持っている。
だが、現実がその望みの実現を許してくれないだけだ。
夜光列車は、そんな人々を招集し、ゲームに勝利した者だけが、一番強い望みを叶えられる。
これは、人間の欲望を描く、幸せを望む人々の物語である。
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この女性の名はルシアンです(ボソッ)