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知らないフリをしよう2



煽ってるのあなたでしょ!と言いたい所だけどそんな雰囲気では無いのでこらえる。

怖い目してるの?樒兄さんの機嫌悪くなるとこっちが被害被るんだからやめてよね。

今日は刀を持ち歩いてはいないみたい。昨日以外持ってるところ見た事ないけどさ。昨日の今日だしね、ちょっと刃物は怖いよね。


「暁月あとで俺の部屋においで?お話しよう」

「行かない、僕とお話するんだから」

「へぇーじゃあ君が代わりに話してくれるの?」

「なんのことを言ってるんだい」

「なにって」



───鬼について



ガシャン!!


さっきの音とは比べ物にならないほど大きな音。

自分の体が大きくはねた。


音に驚いたんじゃないよ?



樒兄さんが、突然目の前の桔梗の首を絞め上げたから。

その反動で私が樒兄さんの膝から放り出されたってわけ。


て、ちょっと!


「し、樒兄さん…?なにしてるんですか!?離してください!」


桔梗の首にかかった手を何とか解こうと四苦八苦するも、全く解けない。なんて握力なの!?てか修羅場!?桔梗のリボンがぐしゃりと潰れる。


首を絞められている本人はいつもより顔をひきつってはいるが、どこか余裕そうだ。樒兄さんの手を剥がそうとする素振りもなければ、暴れる素振りもない。まるでそれさえ一興だというように、睨みつけてくる樒兄さんを見つめ返していた。


「樒兄さん!!」


怒りで私の声が聞こえてないのか。なんの怒りかは分からないけど、これ以上は桔梗が窒息しちゃう!!ほんとに死んじゃうって!!樒兄さんの目を見て話しかけてるのに、全然届かない。


「樒兄さん離して!死んじゃう!桔梗が死んじゃうから!!」


必死で叫ぶ。

私の叫び声に遊男たちがわらわらと駆け寄ってくる足音が聞こえてくる。よし、人が来れば。幼い子どもの力じゃ解けないけど誰か来てくれれば!止めてくれるはず!


「だれか!だれか!」

「シーっ、静かに暁月」


廊下に向かって声をはりあげたら、口を桔梗に手で塞がれた。もがもがしてたらさらに桔梗に囁かれる。こいつなんなの!?余裕にも程があるでしょ!?首締められてるんだよ!?


バタバタと足音が近くなる。

流し目で私をみやり、桔梗はゆっくり樒兄さんの手に自身の手を添えて、



「どうした!何があった!?」

「暁月!大丈夫!?……って…」

「……なんだ?2人仲良く腕相撲?」

「暁月、ごはん避けないとこぼすよ」


薔薇兄さんと、今日彼付きなのだろう白蘭が慌てて飛び込んできた。

縋るように彼らに顔を向けたら、なんのこと?な会話が広げられて、


「あ…………うん、ハハハ」


その後桔梗と樒兄さんのほうを振り返れば、確かに腕相撲のように肘を机につけ腕を組んでいる2人がいた。

えええ!?ついさっきまで殺伐としてたのに!?

この人なんか首絞めてたんですよ!?想像出来ます!?こんな涼やかな顔した王子様は人を窒息死させようとしてたんですよ!?



それが今の一瞬でこれですよ!!

お互いニコニコと腕相撲してらっしゃるんですよ!すっごいギチギチいってるんですけど2人とも怪力ですか?腕に力入ってるのに膠着状態なんですけど!こわっ!切り替え早!誤魔化し方ずる!


「おまえら、そんなに仲良かったか?」

「薔薇、今いいとこだから話しかけないで欲しいんだけど」


怖い怖い。樒兄さんバチバチやん。薔薇兄さん呆気に取られちゃってるよ。桔梗なんか「心配かけてごめんね〜」なんてもう片方の手をヒラヒラしてる。待って、まじの怪力は桔梗なんじゃないの!?あんな細腕のどこに力が!?細く見えて実は筋肉質っていうあれか!?明らかに遊男内で虚弱な見た目の2人なのに実は怪力ゴリラなの!?これに薔薇兄さん混じったら誰が勝つの!?


今度生け華屋総出の腕相撲大会とか開けないかな。そんな暇ないことは分かってはいるんだけどなぜか1番が気になる。そういや昨日の睡蓮もなかなか力強かったから、大人に混ざってもくい込んだ順位取れるのでは!?


「ねえ白蘭。今日寝る前に4人で腕相撲大会しようよ」

「は?何、ハマってるの?」


冷たい目をするのぅ小僧。せめて笑っておくれよ。なぜ今は笑わないのよ。ごめんて心配して駆けつけてくれたんでしょ?私もまさか腕相撲になったとは思わなかったのよ。



見世物じゃないよ、と樒兄さんと桔梗兄さんに追い払われた2人。不服そうな顔してた。すまん、せっかく来てくれたのに。


2人がいなくなった途端、樒兄さんはパッと桔梗の手を離して「おいで」と優しく私に手招いた。う、これは行かなきゃならん気配だ。よしよしと頭を撫でられる。


「俺はそろそろ部屋に戻ろうかな」

「あ、桔梗!勝手にご飯食べちゃってごめんね。私が作ったので良ければあとで持っていくから!」

「言ったでしょ、朝はお腹空かない。でも、暁月が作ったものなら食べたいな。待ってるよ」


ニコリ。お得意の妖艶な笑みを私に向け、桔梗は席を立つ。


「お話、俺の代わりにしてくれるんでしょ?樒」


含みのある言い方だなぁ。そんな言い方したら…ほーら言わんこっちゃない。樒兄さんの負のオーラが滲み出てるよ。もう!尻拭いも大変なんだけど!!


「樒兄さん」


桔梗が出ていったあとも、その先をずっと見つめてた樒兄さん。


「訳あって知りたいことがあるんです」


樒兄さんが桔梗にここまで牙を剥く態度をとる理由もここに繋がってるのかもしれない。


「それを樒兄さんが知っているなら教えて頂けませんか」


樒兄さんに必死で声をかけ続けていたあのとき。


深海の色、澄み切った青色の彼の目は、

目を疑うほど真紅に染まってた。


心の中の私が囁いた



ああこの人も、もしかすると


【鬼】、なのかもしれない



「この世界にいる、鬼について」


ゆっくり。樒兄さんと目が合う。

そらすつもりは無い。


私は正面からその視線を受け止めた。



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