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始まった乙ゲー生活3



夜の帳がおりきって


月が闇を明るく照らしている。


そんな景色を眺めながら──



《「あっ…ああっ…」》

《「もっ…と………もっと、…んっ」》



聞こえてくる情事の音。

え、こんな聞こえるもん?てくらい聞こえる。

そうか、さすがに現代と比べて壁も薄々よね。


今何時なんだろう。

ふぁあ〜と欠伸を噛み殺しながらぼーっと窓から顔を覗かせる。

どの店も夜がお盛んなようで、仄かに赤い光がちらほら見える。


これを子供に聞かせるって、性的虐待じゃんか。

この時代にセクハラなんて概念は無いだろうけど。


後ろを振り返ってみるも、他の3人は布団にくるまってスヤスヤ寝息を立てている。

初日、男子3人と同室!?と困惑したけど、布団を4つ頭合わせでくっ付けて、まるで修学旅行のようだ。心配してたほどではないし、相手は言ってもまだ現代でいう小学生だし。身構えることもなかった。


お風呂は風呂掃除を兼ねて1番最後に入ってるから、姉御以外に裸を見られたことないし、生理もまだまだ来ないだろうからひと安心。


「ふぁあ〜」


鳴り止まない声を意識の片隅に追いやり、今度はじっくりと月を観察してみる。

電気もガスもない時代だからだろう、現代より星も月もはっきり輝いて見える。


今は7月だと姉御は言っていたけど、こんなに涼しいものなのか…。あっちでは30℃なんてこの時期普通に超えてるとこあるし、温暖化進んでるんだなぁ。


あ、あれ、夏の大三角だ。

あれが…デネブ、アルタイル、ベガ!

どれがどれだかさっぱりだけど。


「んー…あか…つき…?」


声がした方を振り向けば、眠たいのかごしごし目を擦りながら雛菊が起き上がっていた。


「眠れない…の…?」


ぺたぺたと隣に歩み寄ってくる。見れば見るほど美男子さんだねえ雛菊。こぼれ落ちそうなくらい大きな目でふわふわの髪は思わず撫でたくなる。あなたの方が女子なのではと疑いたくなるよ。


「そういうわけじゃないんだけど……空が…よく見えるなって」


そうなんですよ、この情事音で寝れないんですよ!なんて言える訳もなく。

どこのロマンチストだよと突っ込みたくなる返しをすると、雛菊は私の隣にならんで空を見上げる。



この窓若干位置が高く、子どもには少しつま先立ちしいと外が見えない。

2人並んで子どもがつま先出してる姿なんて想像するだけでも可愛くないか?


「ねえ暁月、ここにはもう慣れた?」

「うん、みんなが良くしてくれるから」


初めはなかなか会話が続かなくて、結果睡蓮と白蘭ばかり話をすることが多かったけど、私に慣れてきたのか今では普通に話しかけてくれるようになった。


「何かあったらなんでも教えてね。…ぼく、…暁月のお兄ちゃん…、だから」


お兄ちゃん。こんな可愛い子が私(25歳)のお兄ちゃんポジションとか、悶え死ぬ。

自分で言って恥ずかしかったのか、耳まで赤くなった雛菊に笑みを返す。


いつの間にか耳障りな音が聞こえなくなって、


「なんで白蘭ってあんなに性格悪いんだろう」

「う、うーん…。睡蓮も睡蓮で…めげないから…」

「余計からかわれてるもんね」

「あはは…」


初めてかも知れない。

ふたりきりで、遅くまで語り明かした。



和歌がなかなか覚えられないだとか、兄さん達みたいに筋肉をつけたいだとか、姉御の前だと未だに緊張してしまうだとか、


隣で夢中に話す横顔はとても輝いていて─



話疲れて、隣で体育座りで寝てしまった雛菊の頭を優しく撫でながら、私もそっと目を閉じた。



……眠れない夜もなかなか悪くないなぁ…なーんて。





『……』

『……』

『…こいつら寝相悪すぎだろ』

『ケツ痛そう』


はい、起きたらしっかり痛かったです。

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