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見逃すのも隠れて震えているのもアレなので、魔法を使ってみた

 爆音と火柱。

 俺がこっそり入り込んでいた馬車が今あの辺にある。

 まだほぼ戦闘はしていないが多少は経験はあるし魔法の使い方についても【知っている】。


 逃げるための【準備】として幾つか用意はしてあるがそれは使えるだろうか?

 こういった危険な事に関わりあうと、目立ってしまうので連れ戻される可能性もある。

 だが、別に俺はヒーローとか正義の味方に憧れ……ているのは、中学生くらいまでであって今は違うとは言っても、もしも、自分の手助けできる範囲であるなら……と考えてしまった。

 

 それに俺を運んでもらった馬車の人もまきこまれている。

 無断で入り込んだとはいえここまで送ってもらった事もあるし、


「様子見、様子見だけして、後は……援護できそうなら隠れた所でというのもありか」


 と呟きながらとりあえず歩いていく。

 歩いてある程度近づいてから双眼鏡で状況を確認すると、馬車のおじさんたちと一緒に二人の俺と同じくらいの女性が二人ほど【怪物】に囲まれている。

 顔は魚のように目がぎょろりとしていていて、手足は細く緑色で、所々に赤い斑点がある。

 

 それが数十体いて、口を開けて耳障りなぎゃあぎゃあといった鳴き声を出している。

 その口も大きな牙がいっぱい生えていて、相手を食い殺すことを目的としている化け物のように見えた。

 以前この世界のモンスター図鑑、フルカラー版を読むことがあったが、それに関して【俺の記憶】の中にはこの怪物の姿は無い。

 

 そういったか物は得てして、この世界では【魔王】と呼ばれるものによって作られた世界の敵と言える存在である。

 だがこの辺りは女神さまがいることもあって、なかなか手出しできないはずだった。

 それでも街道沿いであるから、女神の庇護下から外れるこの場所で仕留めなければいけない何かがあるのだろうか?


 脳内で瞬時にそれらが頭に浮かぶが、それどころではない。

 彼女たちや馬車の人の実力がどの程度か分からない。

 敵の数は大まかにみて50以下。


 怪物の能力解析の過程を踏んでいる時間は無い。

 だが先ほども言ったように、魔王の配下であるならば、


「となると、確かこの聖属性、範囲攻撃……ターゲットは複数単体を目指して…・・・相手はゴブリン程度か? それで倒せなくても目くらまし程度にはなるだろう。そうしたらもっと強力な魔法に変更でいいな」


 逃げる時に持ってきたホルダー式のスケッチブック。

 だが中に書かれているのは絵とはいっても、魔法陣と呼ばれるもの。

 それこそこのスケッチブック自体が、この世界で言う【魔導書】に他ならない。


 幾つもに分けてつけられた付箋の一つをめくり目的に応じた絵、つまり魔法陣の書かれた紙を取り出す。

 魔法のコントロールはある程度その魔法を使う人物の【意思】によって作用される。

 異世界人の場合、【魔法により近い】ために魔法のコントロールが簡単にできるらしく、後はこの事前に作っておいた紙を取り出し、スケッチブック丸ごとに魔法が流れないようにして、その紙に魔法を流して、


「【聖槍の雨】」


 魔法の名前を口にする。

 ここにある物には基本的には発動条件を、【魔法の名前】にしている関係で呟かないといけない。

 他にも別の発動条件にしたものもあるが、基本はこれ。

 

 何故こうしているかというと、どの真帆ぷが自分にとってわかりやすいのか、という事と、間違って魔力(魔法を使うためのこの世界での力)を流してしまった場合の【暴発】を防ぐためだ。

 そして持っていた魔法陣が淡く金色に光り、崩れ、一つの球のような形をして先ほどの怪物たちの上空に飛んでいく。

 目的の場所に到達して破裂して、次々と光の槍のようなものが降り注ぎ、怪物たちに突き刺さって霧散する。


 一斉に降り注いだそれで充分数が足りたらしく、周りに隠れていたらしき怪物も数体倒されたようだった。

 少し待ってみたが、他に別の怪物が襲ってくるはずはない。

 大丈夫そうか、どうしよう、彼女たちに声をかけるべきか?


 いや、かけないで何食わぬ顔で余計な事を言わず通り過ぎれば、これからの生活に都合がいいのではないか?

 一応助けるだけ助けたし、これでいいな。

 そう俺は一人納得して歩いてき、何事もなかったかのように彼女たちの方を通り過ぎようとした。


 すでに馬車はその場を離れていたらしい。

 そう思いながら歩いて俺は彼女たちの方に軽く会釈をして、美人だ、といった感想を持ちながら通り過ぎようとした。

 が。


「待ちなさい」

「ひぃ!」


 そこで、強い力で俺は襟首をつかまれたのだった。

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小説表紙風イメージイラスト
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