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~対決編~

無事、FINALライブ公演を終え、楽屋に戻るメンバーたち。凄い疲れていてみんな汗が凄いほど出ていた。自分もそうだった。

すると楽屋には何故だか、舞台監督や事務所の年配男性責任者の是永などがいた。他のメンバーは一体何事かと不安げな表情を浮かべた。しかし、自分には多分理由は分かっていた。恐らくと思いながら


「是永さん。どうかされたんですか?こんなにお偉いさんがいて」


すると是永がやっとの思いで立ち上がり


「武田秀秋って覚えてるか?」


するとドラム担当の永山が少し不機嫌な顔をして、ソファに座り


「あいつがまた何かしたんですか?もうこれ以上巻き込まれるのはごめんですよ」


「いや違う。亡くなったんだよ」


すると自分以外の他のメンバーらが驚きの顔をした。ソファに座っている永山でさえも、少し震えていた。だって急だからだ、驚くのも無理はない。でも自分はあいつを殺した張本人のため、少し冷静になりながら是永に


「何があったんですか?」


「実はな。このドームのボイラー室の近くと言ってもいいのか。とりあえず人目もつかない場所で、死体で発見された。誰かに殴られた跡があったそうだ。今、警察が捜査している」


何も他のメンバーらは言葉が出なかった。それはそうだ、自分たちが一生懸命ライブをしている最中、裏では元メンバーの武田が死に、それが殺人事件として捜査しているからだ。明日には恐らくマスコミが騒ぐ。すると野口が


「めんどくさい死に方してくれたな」


すると是永が少し怒り口調になり


「そういうことを言うもんじゃない」


しばらくして、様子が気になり捜査中の現場に訪れることにした。まぁこの行動がこの先を左右するのであったが、まだ自分は気づいていなかった。

沢山の警察官が規制線を貼りながら、そこから出入りしていた。やはり中には入れないかと思いながら、帰ろうとしたとき


「あの。すいません」


声がする方向に振り向くと、そこにはとても綺麗で小柄でスーツを着た女性が立っていた。とっさのことに少し驚きながら


「はい。なんでしょうか」


「もしかして。「YOU king」の北川雄太さんですか?」


物凄い笑顔で言う彼女に、最初は間違って入ってきたファンかと思い込み


「あの。ここ関係者以外立ち入り禁止でして」


たく、スタッフは何をしているんだ。いつもは間違ってファンが入らないように、厳重にしろときつく注意しているのにと少し怒りながら、女性を見ていると。彼女は胸裏ポケットから警察手帳を取り出して


「私、警視庁捜査一課の岡部と申します。私、この北川さんのバンドのファンでして。サインください」


警察手帳とマジックを渡された自分は少し戸惑いながらサインをした。まさか警察手帳にサインを書くのは初めてだったため、少し動揺していたがなんとか書けて、岡部に渡した。

すると岡部は笑顔で


「家宝にします」


「ありがとうございます。あっそれより、大変ですね」


岡部はさっきのテンションから、少し刑事らしい緊張感を出し


「あっ。それよりこの度はご愁傷さまでした。まさか元メンバーの武田さんが突然亡くなるなんて」


少し自分は笑顔になり


「あぁその言い方辞めてください。あいつはもう関係ない人ですから」


「やはり、仲が悪かったんですか?」


聞かれると思った。あいつが脱退する当時はどれだけ週刊誌で仲が悪いと叩かれたか。まぁそれを信じる人が多いのは無理もないと思った。しかし、今さら反論する余裕もなく


「ここだけの話ですよ」


「なるほど。やっぱり本当だったんだ」


「それより、あいつはどうして亡くなったんですか。後頭部を殴られたって聞きましたけど」


すると岡部が手帳を数枚開き始めて、目当てのページを見つけたのか。


「あった。やはり殺害された可能性が高いですね」


「そうですか。誰が見つけたんですか?」


何故こういう質問をしたのか。実は後者の質問がお目当てで、前者は疑われないための軽いストレッチのようなものだった。すると岡部が手帳をめくり始めて


「えぇ、ここのボイラー室を管理されている人です。たまたまここを入ったら発見したそうです」


相当運が悪い。本来はライブが終わり、自分が帰ってからゆっくりと刑事と対決するための準備をしようと考えていたのに、こんな早くにまさか管理者に見つかるなんて。管理者は驚いただろうが、俺にとっては最悪のことだった。そう思いながら、納得した表情をすると、岡部が


「あっそうだ。ちょっとこれを見て貰っても良いですか?」


「なんですか?」


こんな時になんだよ。そろそろ帰りたいと思ってた矢先だったのにと思っていると、岡部が持ってきた鞄から、透明な袋に入った何かのタグを見せてきた。


「これなんだと思いますか?」


そう岡部から言われて、仕方なくそのタグを見ると、驚きの顔をした。それは寝袋のタグだった。まさかと思い、よく見るが、明らかに自分があいつを運ぶときに使った寝袋のタグだった。それを見て、動揺しながら


「こ、これがどうかしたんですか?」


「実は、これが遺体の近くに落ちていました。おかしいと思いませんか?」


「え?」


「だって、あんな人目の付かない場所にこれが落ちていた。管理者に見せても見覚えがないと言っていました。他にここを使う人間はいないと言ってましたし」


「では答えは一つ。武田が持っていた。それだけじゃないですか」


「でもそれだとしても問題が」


何だこの刑事。さっきから何が言いたいのだ。自分はただでさえ忙しいというのにこんなに待たせたり、話しかけたりして。少し怒りがこみあげてきていた。

でもこれももしかしたら、曲の参考になるかもしれないと思い、少し堪えていた。


「問題って。何ですか?」


「もし武田さんが持っていたとしたら、なぜこれを持っていたのか。それにここに少し糸が付いています。そうなりますと、恐らく何かのせいで引きちぎったか、もしくは引きちぎれたか」


確かにこの女刑事の推理もよく出来てる。この刑事は凄腕だなと一瞬で分かった。良い対決者になりそうだ。そう思っていながら


「凄いですね。そこまで分かるものなんですね」


そう言われて嬉しかったのか、岡部は少し笑顔になり


「いえ、普通のことです」


「ではそろそろ失礼します。忙しいので」


「あともう一つだけ」


自分は少しイライラしながら


「なんですか」


岡部は冷静に


「武田さんとは最後にいつ会いましたか?」


突然そう聞かれたため、少し戸惑いながらも考えてから


「えっと。確かあいつが脱退してから一回も会ってませんけど」


「分かりました。ありがとうございました」


岡部から笑顔で言われて、少し気持ちい気分になりながらもそこから離れることに成功した。早くこれから始まる新曲に向けてのレコーディングや創作作業もあるためだ。

本当はレコーディング中止も有り得たが、みんなが嫌っていた武田が死んだこともあり、皆はすぐに吹っ切れることが出来た。自分にとってもそれは少し安心したことだった。


翌日朝。レコーディングスタジオではいつもの通りメンバーが揃っていた。今日から新しいシングルに向けての新曲作りからレコーディングの作業まで、丸1週間泊りがけで、それまで時間を空けて行うことにした。

自分は少し緊張気味だった。何故かというと次のシングルは記念すべてバンド10周年と100枚目の記念イヤーなため、みんなも少し気合が入っており、それ相応の曲も作らなきゃいけないとのプレッシャーもあるためだ。

先に自分がレコーディングスタジオに入った。やはり誰もいないが、少し落ち着くために仮眠室で横になっていた。実は、昨日から寝ていない。やはり人を殺したのもそうなのか、中々眠れる気分ではなかったからだ。

すると誰かが仮眠室のドアを叩く音がした。自分はメンバーが来たと思って


「空いてるぞ」


と横になりながら少し声をかすれた感じで言った。するとドアが開き、何故か岡部が入ってきた。


「お休み中、申し訳ありません」


その声に驚いて飛び起きてしまった。少し部屋を暗くしていたためすぐにリモコンで明るくした。自分の前には確かに岡部が立っていた。


「あぁ、岡部さん。今度はなんですか?」


岡部は至って冷静に


「えぇ、実は少し気になった事があったので。聞いてもらいたいなと思いまして」


「僕じゃないとだめなんですか?」


「えぇ。北川さんに聞いてほしい話なので」


聞いてほしい話と言うことは、もしかしたら自分に関係ある話というのは確実だ。少し恐怖と緊張なのか、脇から汗がたれ始めるのが分かった。でもこれは冷静を貫かなきゃと思い


「そうですか。でもこれからレコーディングとかあるので、手短に」


「分かりました」


少し笑顔で言う岡部に。少し自分は不気味さを覚えたがこれは冷静にと思っていると、岡部が冷静に


「あの、一つお聞きしたことがあるんですけど。亡くなった武田さん、闇金を運営していたのはご存知ですか?」


これはなんて答えればいいのか。でも社長も自分も知っているということで、あえてあいつの反社会的行為も容認してきた。そのため


「えぇ知ってますよ」


「どうして警察に言ってくれなかったのですか。あの会社は殺人もしてたほどだったんです」


それは初耳だ。彼は一切暴力行為をしていないと社長から聞いていた。だからそれをただ信じるしかなかった。これもバンドを守るため、リーダーとしての役目だと思い、あえて見過ごしていたのに。でもこの刑事の目を見れば、本当のことだとすぐに理解が出来た。少し自分は動揺しながら


「それは知らなかったです。本当です。まさかあいつが」


「その前に、闇金は存在自体違法なんです。それを逃していたあなた達も罪になりますよ」


「すいません」


少し怒られたため、何故か落ち込んでしまった。でもこれで罪に問われて逮捕となれば、全てある意味水の泡になる。それだけは避けたいと思っていた。すると岡部が少し微笑みながら


「まぁ今回は私からの厳重注意だけで済ませときます」


「ありがとうございます」


別に殺人事件が発覚したわけでもないのに、少し笑顔になりながら礼を言った。

すると岡部が手帳を取り出して


「あともう一つだけ。これを聞いたら帰ります」


「分かりました」


本当かよと半信半疑でただ返事だけをした。でも本音は早く帰ってほしいという願いだけで、岡部の言葉を信じるしかなかった。

すると岡部が手帳をめくりはじめて


「あっあった。えっと、実は武田さんが昨日のドームにどうやって入ったかご存知ですか?」


「い、いや。分かりませんね」


これは罠だと一瞬で分かったため、すぐに違うと言い返すことが出来た。こんなんで捕まってたまるかと、強気でいたからだ。

すると岡部が


「えっと。スタッフの木戸さんという方ご存知ですか?」


「えぇ。結構若い子ですけどね」


「その人が武田さんを通したみたいなんです」


「え?あいつが?」


本当はあいつに説教をしたかったが、余計な行動をしたくない。本当のことを話すと実は計画だとライブが始まる前に、彼を呼び止め外で車を使いひき殺す予定だったのだ。そのまま車に死体を寝袋で隠し、山奥に捨てる予定だったのだ。そのため、実は計画は少し狂っていた。

だからあいつを簡単に通した木戸には許せない思いでいっぱいだった。しかしあえて今は知らないふりをしていた。

すると岡部が


「はい。実は木戸さんは武田さんが経営している闇金から多額の借金をしているんです。それはご存知でしたか?」


「いえ」


本当は知っている。金額は知らないがとりえず金を借りてることは先日、武田から知った情報だ。しかしあえてまた知らないと答える。

すると岡部が


「実は木戸さんが武田さんから脅されている所を、他のスタッフの方が目撃してます。恐らくそれが原因でしょ。まぁ後でお話は聞きますけど、気になるのがこの後です。武田さんが向かった先は一つ、あなた方の楽屋だと他のスタッフの方が目撃してます」


「えぇ」


「でもその時間は、ベース担当の野口さんなどはリハーサルをステージで行っていた。しかし、あの当時部屋にいたのは、確か北川さんだけと伺っています」


「えぇ。確かに他のメンバーがリハーサルをしてましたけど」


何が言いたいのか分からなかった。でも岡部が悩み始める。自分は作曲のこと以外は頭が固いため、少し考えられなかった。すると岡部が


「おかしいですね。そうなるとあなたと武田さんは会っていたことになる。しかし確か北川さんは武田さんとバンドを脱退した後、一度も会っていないと仰っていた」


まずい。確かにそれを言った記憶がある。完全犯罪を遂行した身としてこれはマズいと思った。少し戸惑いながらも


「会ってませんよ。だってほとんど自分、休憩室でコーヒー飲んでましたよ。その時は他のスタッフとは会ってませんから」


もう絶体絶命だ。なんとか出た言い訳だったため、もういつ逮捕されてもおかしくないものだった。でも岡部は笑顔で


「わかりました。ありがとうございます」


そのまま岡部が笑顔で出ていく。でもその笑顔は少し何かを掴んだ感じの嫌な雰囲気の笑顔だった。するとすれ違いで優美が仮眠室に入ってきた。

すると「もうすぐ作曲活動始めるよ」と紙を少し不安げそうに渡してきた。


「大丈夫だよ。心配しなくて」


そう優しく声をかけた。すると優美が笑顔になり、そのまま二人でスタジオに行った。

その日の夜。まさかあんな忘れられない出来事が起こるなんて、まだ自分は知らなかった。






~第2話終わり~


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