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~事件編~

とある日の事だった。人気バンド「YOU king」のリーダーであり、ボーカル兼ギターやバンドの作曲を担当している北川雄太 29歳は楽屋にいた。


このバンドは、通常では珍しく「お前らの負けだ」というオリジナルアルバムでデビュー。以降数々のヒット作を連発するなどの、お化けグループだ。最近では10枚目のオリジナルアルバムである「刺激」を中心とした全国ツアーライブの最中で、今はFINALライブである東京のとあるドームでライブを控えていた。

メンバーはベース担当の男性・野口とドラム担当の男性・永山とキーボード担当の北川優美の計4人。

優美は北川の3歳下の実の妹であり、このバンドの作詞を担当している。しかし、彼女は物心がついたときから失語症で、今まで一言も喋ったこともない。いつもは紙でやりとりしており、笑顔が絶やさず、記憶力がいいため、それも一つ幸いなことだった。北川はそんな優美がとても大切で、喋れないことに気がかりだった。バンドに誘ったのも、優美の傍に少しでも居たいためだった。


現在は楽屋で一人北川はのんびりしていた。他のメンバーは念のためのリハーサルと言うことでステージにいる。自分はマイペースな性格のため、最初のリハーサルが終わると安心したのか、本を読んでたりしている。それは今に始まったことじゃないため、他のメンバーも了承している。

すると、ドアをノックする音が聞こえ


「はい。どうぞ」


最初はマネージャーかスタッフかなと思い、すぐに返事をした。しかし入ってきたのは違う人物だった。


「よう。久しぶり」


「秀秋」


自分はトーンを少し落としていった。

彼の名前は武田秀秋。このバンドの元ギター担当メンバーで今は裏社会の構成員をしている。

実はこの男は元々性格が悪く、何度も問題を起こしては記者と殴り合いの喧嘩をしたり、覚せい剤の密売人と仲良くなって、それがバレて事務所を解雇されたりとお騒がせな奴だった。こいつがメンバーを脱退したのは今から丁度2年前だ。あの時はアルバムのレコーディングで大変な時期に、勝手に辞めていったのだ。

自分はこの男を一番嫌っていた一人だった。こいつに何度金を貸し、裏切られてきたか。この男こそ、死んでほしい人間恐らく一位だろ。でも運よくこいつが裏社会の人間だとは誰も知らない。いやずっと隠していた。俺と所属事務所の社長は。

すると武田は少し笑顔になり


「なぁな。金貸してくれよ。今さ、ちょっと金が無くてね」


声のトーンをまだ低くしながら


「そんなことより、どうやって入った」


ここのスタッフは古参の方々ばかりだ。当然こいつの事も知っている。簡単に通せるはずがない。すぐに警備員を呼ばれておしまいな話だ。しかし、目の前にこいつがいるということは誰かが通したに違いない。

すると武田は笑顔で


「実はね。メンバー時代から仲良くしているスタッフがいてね。木戸ちゃん」


「木戸が?」


木戸は3年前にステージ男性スタッフとしてこのバンドに関わっている若い人物だ。そのため一年間は確かにこいつと関りがあったかもしれない。しかし、木戸の口からは一切こいつの話は出ないし、まさか仲良くしているなんて思いもしなかった。

すると武田が少しカッコつけの笑顔になり


「実はさ。木戸ちゃんね。俺の経営している闇金から結構な額借りてるんだよね。だから通さないわけにはいかないでしょ」


あいつ、まさかこいつから金を借りていたなんて。てかどこで知ったんだ、こいつが闇金を経営していることを。でもそんなことはどうでもいい。さっさとあの計画を実行に移さなければ。

そう思いながら


「まぁ。それはいい。来てくれて逆に良かったよ」


自分は立ち上がり、武田に近づく。


「お前。あの件は諦めてくれたか?」


すると急に近づかれたため、武田は少し動揺しながらも


「あ、あぁ。あの件なら、お前の圧力には屈しないぞ」


「どういうことだ?」


声のトーンを自分でも聞いたこともない最大の低さで言った。

次第に自分の目が殺気で溢れていることに気付いたのか、少し武田は怯えながら


「何があっても。あの件は諦めないからな。よし俺は他のメンバーさんに挨拶でも行きますか」


そう言い、出ていこうとする武田。その隙に自分は近くにあった灰皿で、思い切り武田目掛けて殴りつけた。そのまま武田は倒れこみ死亡した。

基本自分はタバコを吸わないが、ベース担当の野口がかなりのヘビースモーカーなため、ここにいつも常備している。いつもはタバコばかり吸っている野口に嫌気がさしていたが、今この瞬間は良い凶器を置いといてくれたため、感謝しかなかった。

そのまま予め用意していたキャンプなどで使う寝袋に、武田の死体を入れて、そのまま全体重を使い、近くの誰も来なさそうなドームの裏に運び出した。ここだったら当分は見つからないだろう。そう思いつき運び出した場所だ。

そして楽屋に戻り、何事もなかったようにいる。少し時間が空いてから、リハーサルを終えたメンバーらが楽屋に戻ってきた。

そして自分は、優美に近づき


「今日もよく出来そうか?」


すると優美が頷いた。自分はほっとして笑顔になり


「そうか。良かった」


そして全員に


「よしみんな行こうぜー」


これで北川雄太の完全犯罪は完璧だった…




~第1話終わり~

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