水玉・風
『水玉』
私の上で世界は歪み
ゆるりとめぐって滑り落ちた
夜に震え 風に散り
しずかに尽きてゆく時の
それでも
腕があれば伸ばすのに
瞳があればまもるのに
声を持つならその限り
呼んだだろう
君の名前
『風』
実らない草の
先割れの葉に
風が吹いている
あれは
はるかな白い峰を越え
月影の湖を渡り
砂の丘を瞬かせた風
渾身の花片を散らし
ガラスの林を置き去りに
墨色の海を泡立たせた風
そして いま
変わらぬ横顔で
そこいらの
汚れた川端の一叢を
撫でていくのだった